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山﨑天は平手友梨奈の別の未来~櫻坂46東京ドーム公演

2024年6月15日・16日。東京ドーム。櫻坂46のツアー追加公演は山﨑天のソロパフォーマンスから始まった。「Go on back?」のツアータイトルが示すように、時が戻っていく。山﨑はセンターステージに立ち、右手を高く掲げて斜め上を指差す。近世ヨーロッパ風の衣装も相まって、私は2019年7月の欅共和国のことを思い出した。

その後に行われた2019年9月の欅坂46の東京ドーム公演。チケットの売れ行きも良いわけではないのにテコ入れもせず、『不協和音』を久しぶりに披露したことなど話題になる要素はあったが、平手友梨奈の精神状態が不健全な状態のままであることは疑いようもなく、観客もそれ感じながら、彼女たちを消費していた。結局、平手にとってコンサートの出演はこれが最後となった。

2022年の東京ドーム公演は、菅井友香の卒業セレモニー、そして「欅坂の曲もやります!(意訳)」という告知も図ったが集客に苦戦をした。そこから約2年、数千万回再生されるような楽曲はなくても、”櫻坂にしかできない”ライブパフォーマンスを磨いて、欅坂時代も含めて最大の動員。その中心に立ち、自信に満ちた顔で躍動する山﨑天は、かつて私が平手友梨奈に期待しながら結局見ることができなかった姿を見せていくれた。

欅坂46と櫻坂46のキャリアを議論するうえで、それぞれの時期がいつからいつまでなのかについてはいくつかの考え方がある。
CDリリースを基準にすれば、欅坂46は2016年4月-2020年10月までの4年6ヶ月。櫻坂46は2020年12月-2024年6月時点で3年6ヶ月。テレビゲームで言うと2周目もだいぶ進んだところである。

櫻坂初期の特徴は、「センターを3人同時に育てる」ということであった。森田ひかると藤吉夏鈴は欅坂46の幻の9thシングル『10月のプールに飛び込んだ』で選抜入りしており、振り付けでも2人のペアダンスが印象的につかわれていることから、この2人は次世代のエース格として考えられていたと思う。一方、山﨑はこのときに選抜に選ばれていなかった。それが原因かどうかはわからないが、ファンの目から見て、この当時の彼女はあまり良い精神状態ではなかったように思う。

櫻坂になって、山﨑をセンター格の一人に据えるというのは、彼女のポテンシャルを信じて、ある程度長い目で育成したい、という方針の現れだったはず。それから数年、ファンにとって自慢のアイドルになったな、という実感がある。不敵な笑みを浮かべてのオラついた振る舞いも(『何歳の頃に戻りたいのか』)、キャピキャピした表情も(『真夏に何が起きるのかしら』)、弱冠18歳にして包容力に満ちた言動も(『Buddies』)、彼女の中の充電容量が豊富にあって、高出力を安定して出せている感じがする。

そして思うのは、2016年時点の平手友梨奈にもこういう未来はあり得たのだろうか、ということである。当初は元気な中学生だった彼女も、2017年夏以降、劣化したバッテリーを無理やり電圧を上げて乗り切っているように見えた。本人の特性は多分に影響するにせよ、彼女の周りに必要だったものはなんだろうか。

・・・などと考えてみたところで、時は戻らない。
私ができるのはオタク同士の飲み会で「いやー天ちゃん良い子に育ってほんとよかったね~」とオジサン目線の感想を吐露することだけである。
そして、彼女のこの先の未来を夢見るのである。