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強い障壁をつくるために必要なこと

戦略コンサルタントのアップルです。

「三位一体の経営」という本が1年ほど前に出版され、ヒットしました。みさき投資代表の中神氏が執筆した本で、投資家の目線から、よい経営とは何かを体系的・理論的に論じています。

色々よいことが書いてあるので、まだ読んでない方にはぜひ読んで頂きたいのですが、久しぶりに読み返してみて「確かにそうだよな」と腹落ちした箇所があったので、アップルの解釈も加えつつ記事にしておきます。

この本で論じられていることは、一言で言うと「持続的に儲かり続ける経営や事業とはどういうものか」です。そこでキーワードになるのが「障壁」です。英語だとmoat(堀)と言われます。本書では、自社の事業において他社がまねできない、あるいは浸食できない強力な障壁があることが、持続的に利益(経済学の言葉では「超過利潤」)を上げ続けるための極めて重要な条件であると説いています。

では、「強力な障壁」はどのようにすれば築けるのか?
中神さんの答えは2つです。

①呆れるほどのコストを投入する
②腰を抜かすほどのリスクをとる

前提として、強力な障壁を築くのは生やさしいことではないので、他社と似たようなこと、つまり平均的レベルから逸脱しないことをやっているうちは、いつまで経っても築くことはできないと喝破します。逆に言えば、強力な障壁を築くためには普通の企業がやらないような「ぶっとんだこと」をやる必要があり、そしてその「ぶっとんだこと」には①もしくは②の2つの方向性があるということを主張しています。

これはとても深い洞察だとアップルは思いました。かつ、これは企業だけでなく、個人に対しても当てはまると思います。以下、個人への当てはめについて少し考察してみましょう。

呆れるほどのコスト投入について

例えばイチローのような一流のアスリートは、あきれるほどたくさんの練習をしています。中にはそうじゃない人(生まれ持ったセンスだけで一流にのし上がる人)もいるかもしれませんが、それは極めてレアでしょう。ほとんどの一流アスリートは血のにじむような努力をしています。

呆れるほどたくさんの練習、つまりコストを投入したからこそ、他者にはまねできない技術や能力(障壁)を習得し一流になれた。これはまさに①のパターンでの成功例と言えます。

もうすこし身近なところでは、「1万時間の法則」というのがあります。本を読んでるとしばしば出てくるので、ご存じの方も多いと思いますが、この1万時間の法則とは、「何らかの専門性を確立するためには、そのことに1万時間は投下しないといけない」というものです。1万時間というのは結構すごい時間です。毎日休みなくあることに3時間投入したとしても、約9年かかります(3時間×365日×9年=9,855時間≒10,000時間)。圧倒的なコスト投入と言ってよいレベルの時間です。

このように、巷で言われる1万時間の法則も、ある分野で圧倒的な専門性≒障壁を築くためにはあきれるほどのコスト投入が必要であることを示唆していると言えるでしょう。

腰を抜かすほどのリスクについて

もうひとつのパターンの「腰を抜かすほどのリスクをとる」についてはどうでしょうか。

例えば成功した起業家は、このパターンでの成功者です。市場がないところに新たな事業を作っていくことは、極めてリスクが大きいです。たとえ同じ事業アイデアを持っていたとしても、ほとんどの人はリスクが大きすぎてやろうとしません。それをあえてリスクをとってやるからこそ、成功したときのリターンが極めて大きく、そのチャレンジの過程自体が得難い経験やブランド、すなわち他者には真似されないその人ならではの「障壁」になります。

また、冒険家も同様です。大航海の末にアメリカ大陸をみつけたコロンブス、初めて南極点に到達したアムンセンなどは、命がけの大きなリスクをとったからこそ栄誉を獲得し、歴史に名を刻んだと言えます。

さらに、長い下積み期間を経てようやく売れたお笑い芸人なんかもそうでしょう。下積み期間の間は人生の大きなリスクをとっています。売れないまま20代から30代を過ごし、結果として売れずじまいだったら、学歴・職歴・スキルの欠如によりサラリーマンとしてはまともな仕事に就けないかもしれません。それは大きなリスクです。長い下積みを経て売れた芸人さんは、そんな大きなリスクをとったからこそ売れることができたと言えます。

まとめ

以上でいくつかの具体例をみましたが、この他でも、何かの分野で大きく成功した人、すなわち超過利潤を持続的に得られていそうな人の経歴を紐解いてみると、圧倒的なコスト投入(努力)をしているか、もしくは人生の節目で大きなリスクをとっていることが観察されます。

三位一体の経営に書いてあることは、アナロジーとして個人にも当てはまると言えそうです。図解すると下図のようなアナロジーが成立していそうです。

個人企業対比

人間には惰性が働くので、何かを強く意識しない限り、漫然と周囲に流されがちです。
・なんとなくある学校に入って、なんとなく勉強をする
・なんとなくある会社に入って、なんとなく仕事をする
・なんとなくある部活に入って、なんとなくスポーツをする
などなど。

しかしこうした惰性を続けていると、自身の圧倒的な強みや他者が真似できない何かしらの障壁は作れず、所得・資産・能力・地位の面で「超過利潤」は得られません。

何かの分野・領域で突出し、超過利潤を得るためには、
・何かに圧倒的なコストを投入する
・しかるべき局面で大きなリスクをとる

の少なくともどちらかが必要なこと、裏を返せば、そのどちらもやらないと「平均値」に収束する圧力がかかることは、人生を歩んでいく上で常に頭の片隅においておくべきではないかと思います。特に人生の残された時間や残されたチャンスが多い若い人は。

とこのように、「三位一体の経営」に書いてある内容は個人の生き方を考える上でも示唆があるとアップルは思います。興味ある方はぜひ手にとってみてください!


今回はここまでです。
最後までご覧頂きありがとうございました!

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