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小学校でアルバイトしていたオタクのひとりごと


私のアルバイトは「介助員」というものです。あまり馴染みのないものだと思いますが、簡単に言うと支援の必要な子どもたちと一緒に学校生活を送る、そんな職業です。

私がこのアルバイトを始めたのは半年ほど前です。教育実習をした学校の校長先生にお誘いいただき、介助員として働き始めました。学校には特別な支援を必要としている子どもたちがたくさんいます。そんな子どもたちと一緒に過ごす学校生活は、大変なこともたくさんあったけれど、学びの多い、とても楽しい時間でした。働いている期間にあった教員採用試験の合格発表。がんばれ、という子どもたちの力強い声援、受かったよ、と伝えた時の子どもたちからの拍手と笑顔。きっと私は一生忘れません。

私が担当?していたのは病弱の一年生です。とても可愛らしい子でした。名目上は私はその子に着いている職員なわけですが、一緒に学校生活を送る上でクラスの子どもたちとの関わりも大きく、私はたくさんの子どもたちと一緒に勉強したり遊んだりすることが出来ました。一年生はすごい。生きているだけでファンサ。しかも、教室にたまにくる大学生のお姉さんの存在は、その要素だけで好きになってもらえます。みんな人懐っこくて、かわいくて、すぐに大好きになりました。

たくさんの思い出がつまった子どもたちとの生活は、4月からどこかで始まる私の新任教師生活をもって終わるはずでした。正確に言えば、三学期の修了式ではありますが。残りの1ヶ月は、私にとっては子どもたちとバイバイするための準備期間でもありました。あと1ヶ月、たくさん遊んで、たくさん笑って。そして最後には手紙なんて渡して、さようならのじゃんけんをする。そんな未来を思い描いていました。

それが、昨日の発表で急に猶予がなくなりました。あれだけ嫌だった子どもたちとのさようならは、1ヶ月後だったはずのバイバイは、数時間後となってしまいました。

呆然としたまま、私はツイッターランドを覗いていました。本当に意味がわからなかった。明日でさよなら?まじ?ほとんど悲鳴でした。急いでクラス全員にメッセージカードを書きました。泣きながら。めちゃめちゃ泣きながら。あんなに可愛い子どもたちとの突然の別れです。涙腺未実装オタクにはかなり応えましたね……

怒涛の一日でした。別れを惜しんでいる暇もないくらい、と言いたいところですが、別れを惜しんでしかいなかった一日でした。私は担任の先生ではないので……先生方は本当に大変そうでしたが、アルバイトの私は後悔ないようにいっぱい遊ぶぞ!と決意して、子どもたちといっぱい遊びました。話しました。でも、でもね、寂しいんですよ。だってあと1ヶ月、一緒にいられると思ってた。この1ヶ月は、私にとっては子どもたちとバイバイするための準備期間でもあったんです。

アルバイトの私ですらそうなのだから、担任の先生方の寂しさややりきれなさは想像を絶するものでしょう。6年生の先生方の憔悴しきった顔、そして卒業までの1ヶ月を突然奪われた6年生の悲しそうな顔、見ていられませんでした。

「休校ラッキー!昼間からゲームできる!」そんな子どもたちばかりだと思いません?正直私は思ってました。手紙を書きながら、「こんなに寂しいのは私だけなんだろうな〜」なんて考えてました。でも、実際は臨時休校を嫌がる声も多かったです。卒業まで、クラス変えまで、進級までの1ヶ月は、先生方にとっても子どもたちにとっても、そして私にとってもすごく大事な期間だったんです。

「今日で先生、ここでのお仕事おしまいだよ」と伝えた時、「だったら学校休みにならなくていい!」と言ってくれたこと。わざわざ私のために折り紙をくれたこと。メダルをくれたこと。私にハイタッチをしにきてくれたこと。描いた絵を持ってきてくれたこと。全部全部嬉しかった。でも、でもね、それが1ヶ月先だったらよかったのに。もっといっぱいみんなと遊んでいたかったよ。勉強していたかったよ。

でも、今日はとっても素敵な日でした。

クラスの子どもたちからお手紙を貰いました。突然の休校だったので、授業時間を削って、あろうことか私の前で書いてくれました。こんなにいたたまれない時間初めてだったよ。そして29人中27人分の手紙が綴じられたファイルをいただきました。ここに手紙のないふたりは、私がこの半年間、一番長い時間一緒にいた子どもたちでした。

ひとりは私が付いていた病弱の子。入院してしまったのです。来月退院して、また一緒に学校生活を送る予定でした。結局会わないまま、学校は休みになってしまいました。

もうひとりは授業中じっとしていられず、度々教室を飛び出しては私に捕獲されている子です。最近は本当にずっと彼と一緒にいました。席につかない、じっとできない、給食は食べない、連絡帳は書かない。確実に「問題児」と呼称されるであろうタイプの子どもでした。でもそんな彼は、みんなから愛されていました。とても優しい子でした。思いやりのある子でした。

クラス全員が私への手紙を書いている時、彼は決して手紙を書こうとはしませんでした。私は彼の性質を知っていたので少し寂しい気持ちもありましたが、特にそれについて言及しませんでした。その代わり、私から手紙を渡しました。いらない、と言ったので押し付けました。「すてきな2年生になってね」と締めくくった手紙を彼は読むのかな、と苦笑しながら。

その後、彼はきちんと席について、きちんと給食を食べて、きちんと連絡帳を書きました。私は驚きました。えらいね、と何度も褒めました。帰り際、見たことも無いくらいの良い姿勢で、彼は小さく言いました。

「だって先生が、すてきな2年生になってねって言ったから」

ああ、この子はなんて、素敵な子だろう、と思いました。本当に、本当に、泣いてしまった。涙で前が見えなくて、急になんだよぉ、と返すので精一杯でした。彼はムスッとしていました。彼なりに、別れを惜しんでいたのだと思います。でも最後に、「いままでありがとね」と言いに来てくれました。

私だけ泣いていて、子どもたちはみんな笑ってる。そんな中で、私は子どもたちとバイバイをしました。

この半年間、本当にたくさんのことを学びました。大学では学べない、現場でしかわからないことがたくさんあります。そしてたくさんの素敵な子どもたちと出会い、素敵な思い出を作ることができました。私はこの思い出と学びを胸に、4月から教員として頑張れると思います。

ただ、やっぱり、あと1ヶ月。一緒にいたかった。そう思わずにはいられません。この施策の善し悪しは、私にはわかりません。子どもたちの体調を第一に考えた結果、というのも理解できます。なってもいない最悪の事態を嘆くことはしません。この臨時休校のメリットデメリットは、やってみなくちゃわからないことがたくさんあると思います。ただ、願わくば、共働きやシングルのご家庭、子どもたち、先生方、全員が救われる選択肢が今後取られて欲しいと思います。

長々と書きましたが、言いたかったことはこれだけです。

先生はこの半年間みんなと過ごせて楽しかったよ。たくさんの思い出をありがとう。でも、もう少し、一緒にいたかったね。


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