DPP-4阻害薬と心血管系イベント

とある本で糖尿病を勉強していたらDPP-4阻害薬についてのコメントのスタンスが章によって異なっていました。

"DPP-4阻害薬はイベントを減らすかどうかは不透明"というちょっとネガティブなスタンスと"DPP-4阻害薬は心血管系イベントを増やすことはなかった"というちょっとポジティブなスタンス。

自分でも少し調べてみようと思いPubmedにて"Dipeptidyl-Peptidase IV Inhibitors"[Mesh]で検索しMeta-analysisでフィルタをかけてみたら97件。検索1P目をいくつか見てみました。

(1)

Int J Cardiol. 2016 May 15;211:88-95.

Effect of dipeptidyl peptidase-4 inhibitors on heart failure: A meta-analysis of

randomized clinical trials.

PMID: 26991555

※フルアクセスできなかったのでabstractのみ

DPP-4阻害薬とその他で比較して心不全の発生が増えるかどうか。

54の試験、74737人が対象。

RR:1.106(95% CI 0.995-1.228; p=0.062)

で心不全のリスク増加は見られず。

ただしサキサグリプチンは

RR:1.215(95% CI, 1.028-1.437; p=0.022)

で心不全のリスク増加傾向。

65歳以上、罹病機関10年以上、BMI30以上がサキサグリプチンのリスク増加に関連していた。


(2)

Diabetes Res Clin Pract. 2016 Jun;116:171-82.

Meta-analysis of dipeptidyl peptidase-4 inhibitors use and cardiovascular risk in patients with type 2 diabetes mellitus.

PMID: 27321333

※フルアクセスできなかったのでabstractのみ

DPP-4阻害薬はMACE(主要心血管イベント)を減らすか。

69の試験、DPP-4阻害薬群は36488人、対照群は31290人

DPP-4阻害薬 vs SU薬

OR [95% CI]=0.52 [0.36,0.76]

でDPP-4阻害薬はリスク減少傾向。

DPP-4阻害薬 vs SGLT2阻害薬

OR [95% CI]=1.89 [0.60,5.93]

でリスク増加傾向。

DPP-4阻害薬 vs プラセボ

OR [95% CI]=1.04 [0.92,1.18]

でリスク増減なし。

プラセボとはリスクに差がない。SU薬に対してはリスク減少傾向、SGLT2阻害薬に対しいてはリスク増加傾向。


(3)

BMJ. 2016 Feb 17;352:i610.

Dipeptidyl peptidase-4 inhibitors and risk of heart failure in type 2 diabetes:systematic review and meta-analysis of randomised and observational studies.

PMID: 26888822

これは全文アクセス可能

randomised controlled trials, non-randomised controlled trials, cohort studies, and case-control studiesを対象としたmeta-analysis

論文のPICO

P:2型糖尿病患者が

I:DPP-4阻害薬での治療を受けるのと

C:その他の治療(プラセボ、その他の糖尿病薬)を受けるのでは

O:心不全が減るか


結果

RCTを対象とした場合

Peto odds ratio Fixed (95% CI):0.97 (0.61 to 1.56)

で心不全リスクの増減なし。

なお心不全の入院リスクは5試験のRCTより

Peto odds ratio Fixed (95% CI):1.13 (1.00 to 1.26)

で入院リスク増加傾向。

観察研究を対象として心不全の入院リスクをみた場合

DPP-4 inhibitors vs active drugsで

Peto odds ratio Fixed (95% CI):0.85 (0.74 to 0.97)

と入院リスク減少傾向。

Sitagliptin use v no useで

Peto odds ratio Fixed (95% CI):1.41 (0.95 to 2.09)

と入院リスク増加傾向。


補足

独立した2人のreviewerが文献を検索した。議論しても合意が得られない場合は、3人目のreviewerが調整した。

検索DBはMedline, Embase, and the Cochrane Central, CENTRAL。

ClinicalTrials.govも検索。

GRADE evidence profileには

心不全についてはRisk of biasと ImprecisionがSerious limitation、Publication biasはUndetectedとの記載があり、Quality of evidenceはlow。

心不全による入院に関してはImprecisionがSerious limitation、Publication biasはUndetectedとの記載があり、Quality of evidenceはmoderate。


雑感

とりあえず心血管系のアウトカムが良くなるということはなさそうな印象。書籍の言い回しの違いは何とも言えない部分もありますが。

(2)は2014年までの文献をmeta-analysisにしたようですが、その時点でSGLT2阻害薬と比較できる程情報が集まっていたのかはちょっと疑問に思いました。

あとは微小血管系のアウトカムでどうなるかを文献等で調べて知っておく必要がありますかね。

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