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アッシジの聖フランチェスコ

一人の托鉢者が街道を歩いて来る 後ろには従者が一人、少年だった
日も暮れようとしていた
まさに太陽が沈もうとしていた夕暮れに、托鉢者は町のはずれの噴水に近づいた
托鉢者の名前は、聖フランチェスコ アッシジの聖人と慕われたその人である
粗ら布の粗末な衣服、腰には縄を巻いて、足元は裸足に近かった 目の荒いサンダルを履いていた
聖フランチェスコは何も持たなかった 托鉢によってのみ食事を摂った 今、聖人は喉の渇きを泉で満たそうとしていた
泉を利用して噴水が造られている場所、若い婦人と幼い乳飲み子、幼児が、聖フランチェスコを眩しく見ていた
彼女は、何故か、この旅人を有り得ないものを見るように驚いていた
麻縄のベルト、粗末な衣服ではあったが、その人の顔は輝いていた 瞳も輝いていた
聖フランチェスコが泉の水を飲もうとした時、思わず、若い母親は、手助けしようとした
聖フランチェスコは、微かに微笑んでこれを押しとどめた  
フランチェスコが水を飲んでいる間、その稀有な出来事に若い婦人は驚いていた
フランチェスコは、従者にも泉の水を飲ませて、その場を静かに立ち去った 乳飲み子は笑い声を立てた 幼児は小躍りした 婦人は、貴い人に出逢ったことを喜んで、涙を流した 
イタリアのアッシジに伝わる奇跡、泉の水を飲むだけで、人々を感動させる聖フランチェスコ、托鉢者は当て所なく、宣教のために荒ら野を進んでいく


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