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【十周年記念】シャドールの歴史 9期編

第9期 シャドールの生誕と隆盛

2014年4月期 「融合のような何か」と呼ばれた革命

DUEA オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンが看板だがPテーマが覇権を握るのはもう少し先の話となる

 2014年も4か月目。制限改訂で最上級征竜が全員制限となり、新アニメに合わせてマスタールール3が施行されたことで新たな時代の到来を予感させるなか、19日に第9期最初となるパック「ザ・デュエリスト・アドベント」(DUEA)が発売された。シャドールが産声を上げた瞬間である。このパックでは超重武者、幻奏、テラナイト、シャドール、竜星が登場し、アーティファクトーロンギヌスや烈風帝ライザーなどの現在も使われる強力なカードや未来で禁止にブチこまれることとなるNo.86 HーC ロンゴミアントが出てきた。超重武者が9年後に環境入りし、テラナイトが世界大会優勝を飾り、竜星が海外で禁止カードを輩出するほど暴れたことを考えればかなりキャラの濃いメンツと言える。出張セットとして大活躍した光天使セプターとスローネもこのパックが出身である。DUEAで出てきたシャドールはメインモンスターがファルコン、ヘッジホッグ、リザード、ドラゴン、ビーストの今も使われる面々で、EXモンスターの方はエルシャドールミドラーシュとネフィリムのみであった。魔法・罠は影依融合と影依の原核、厳密にはシャドールカードではないが影牢の呪縛と堕ち影の蠢きが登場した。

遊戯王初のラグなしデッキ融合。イラストの2体のモンスターに関しては誰やねん感がある。最初はSRでのみの収録だったため高額だった。今ではSEでの収録もあり、筆者は大いに喜んだ。

 シャドールの登場は融合召喚の根底を覆す革命であった(要出典)。そも融合召喚とは融合するための魔法1枚および素材となるモンスターを手札・フィールドに用意してようやく行える召喚方法であり、他の召喚方法に比べアド損しがちな、どちらかといえば不遇な方であった。特に融合召喚する魔法がないといけないのはキツく、レベル合わせるだけのシンクロやエクシーズに後れを取る傾向にあった。事実、シンクロの登場した第6期以降に環境で活躍した融合デッキは剣闘獣と光デュアルくらいのもので、剣闘獣は「融合」を必要としないことが売りであり、光デュアルは融合召喚がメイン戦略というわけでもなかったため、正規融合デッキは長らく環境とは無縁と言わざるを得ない状況が続いた。そんな正規融合の弱点を「素材が墓地に行くことでアドを取ってくる」「融合モンスターもアド稼ぎなり制圧なりができる」「融合モンスターが始末されたとき融合魔法を回収してくるため後続を出しやすい」「条件がそろえば手札フィールドなしで融合召喚が可能である」という鬼の介護で解決し、環境に持って行ったのがシャドールである。
 また、エルシャドール・ミドラーシュの特殊召喚を1回に制限する効果がシンクロおよびエクシーズ召喚に非常に刺さったのもよかった。効果破壊されない2200打点というのが絶妙であり、手札からポンと出てくるカード代表のサイバー・ドラゴンの2100打点ではぎりぎり届かないラインであったため、専用の対策をせねばこれ一枚でデュエルが終わってしまうことすらあった。エルシャドール・ネフィリムの素材として超電磁タートルを使用することでミドラーシュを1回バトルから守れるのもまた強力であり、環境にて大きな存在感を放つデッキとなった。対策カードとしてシャドール魔法・罠の回収を妨害することもできる融合解除がサイドデッキによく採用されることとなった。墓地の利用を阻害するマクロコスモスや闇属性の効果を封じる暗闇を吸い込むマジック・ミラーなど、メタが非常に刺さるデッキであるためそれらの採用もよく見られた。

SRでのみの収録だったため影依融合以上にかなり高額なカードであった。筆者がシャドールに引き込まれた理由のカードだ。

 構築面の話をすると、シャドールモンスターは効果で墓地に行きさえすれば別に素材にならなくとも効果は使用可能なため、当初は足りない光成分を補いつつ墓地肥しができるライトロードとの混成が人気であった。光と闇が主体ということでカオス、特に開闢の使者と相性がいいのも強力だった。また、光と闇を交互に供給できるということで輝白竜ワイバースターと暗黒竜コラプサーペントを採用した、通称【白黒シャドール】も活躍を見せた。ここにエクリプス・ワイバーンを加えることでダーク・アームド・ドラゴンをサーチする動きをしたり、レベル4×2から当時はまだ使えたラヴァルバル・チェインなどの強力なランク4モンスターを出す動きをサブウェポンに据えるなど、様々な構築が見られた。

2014日本代表選考会でトップ4につけたレシピ。6月発売のカードを含めたカードプール準拠であるため、DUEA当時はなかったカードが採用されている点には注意。マスマティシャンを終末の騎士などに変えれば4月準拠のリストになる。


CPL1 制限カードとなる前のマスマティシャンは非常に高価であった。

 5月17日発売の「コレクターズパックー伝説の決闘者編ー」(CPL1)においてクリバンデットとマスマティシャンが登場し、間接的にシャドールの墓地肥し能力が強化されることとなった。特にクリバンデットはシャドール魔法・罠を手に入れられる可能性を秘めていたため、かなり強力だった。タイミングがエンドフェイズと遅いが、それでも5枚の墓地肥しを行いながらも展開に使える札を拾えるという強力な効果を手に入れたのは大きい。マスマティシャンは地属性なためこの時点では融合先が存在せず、真に輝くのはもう少し先のこととなる。とはいえシャドールだけでなくエクリプス・ワイバーンなどをも落とせる柔軟性とオマケにしては強力な1ドロー効果を兼ね備えたシャドールの潤滑油として非常にありがたいカードであった。ライトロード・アーチャーフェリスを落とせばあちらの自己特殊召喚から7シンクロにつなげることができ、ブラック・ローズ・ドラゴンから場を一掃するという芸当も可能だ。
 ただしシャドールの一人勝ちというわけにはいかず、将来禁止カードの指定を受けることとなるソウル・チャージもこのパックで登場し、ライバルのテラナイトが展開力を大きく伸ばしたことで大きな脅威となった。墓地がそれなりに肥えていれば5素材ロンゴミアントが割と簡単に出てくるという恐怖のカードであり、ロンゴミアントまではいかずともNo.16色の支配者ショック・ルーラーが出てくるだけで相当キツいのであった。ソウル・チャージの暴力でこの年の世界大会を【インフェルニティ】が制したのもこのカードの圧倒的なパワーを物語る。また、このパックで収録されたシャドー・インパルスを一瞬シャドールカードと勘違いした人がいたとかいなかったとか。

SD27 漫画版では効果がなかったダーク・ロウが非常に強力な効果を引っ提げてきたことはかなりの衝撃であった。

 6月21日には「ストラクチャーデッキーHERO's STRIKEー」(SD27)が発売され、HEROデッキに大幅な強化が入った。このストラクは主にM・HEROをフィーチャーしたものであるが、特にM・HEROダーク・ロウとマスク・チェンジ・セカンドの登場はシャドールに大きな影響を及ぼした。サーチメタをしつつ相手にのみマクロコスモスを押し付けるダーク・ロウはシャドールにとってかなり恐ろしい相手であり、マスク・チェンジ・セカンドによりHERO以外の闇属性もコイツに化けてくるというのは痛手であった。しかし、逆に言えば闇属性メインのシャドールにも採用が可能ということであり、ミラー対策にシャドールに取り込まれる事態も発生。なんだかシャドールのストーリー通りの展開が見られた。
 とはいえやはりダーク・ロウはHEROデッキでこそ真価を発揮することに変わりはなく、【HERO】(他の型と区別するために【M・HERO】と呼ばれることもある)をそれなりに環境で見かけるようになった。このデッキへの対策として超融合からHERO2体を吸えるV・HEROアドレイションがEXデッキに入る事例も見られた。ちなみにこのストラクはHERO以外のカードとして強欲で謙虚な壺や奈落の落とし穴、おろかな埋葬に強制脱出装置などの豪華な汎用パーツが収録されたことでかなり人気の出た箱となった。当時高騰していたブレイクスルー・スキルの再録がなかったのを残念がる声もそこそこみられた。

2014年7月期 栄光の時代と押し寄せるインフレの波

制限となってから3年もの間解除されなかったカード。当時のシャドールはそこまでこのカードに依存していなかったためかなり冤罪に近い状態での長期間の規制となった。

 そこからすぐに、シャドールが登場して最初の制限改訂となる2014年7月1日のリミットレギュレーションが発表された。この改訂は墓地を肥やすタイプのカードが多く規制されたことで知られており、主に未だなぜか環境で活躍していた【征竜】および環境から落ちつつあった【AF先史遺産】がターゲットとなりつつ、【シャドール】のパワーも少し削られた。征竜は竜の渓谷および竜の霊廟をどちらも制限カードにされ、墓地経由のアクセス手段を断たれることとなった。また、アーティファクトは主要カードのモラルタを制限カードにされ、先史遺産もサーチの要たるネブラ・ディスクを準制限にされたことにより、両テーマを合体させた【AF先史遺産】は環境から追い出されることとなってしまった。シャドールは墓地肥しに利用していた終末の騎士と針虫の巣窟を制限カードにされたことにより若干影響を受けるも、クリバンデッドとマスマティシャンを手に入れたシャドールにはそこまで大きな影響はなかった。そのため、総合的に見れば対抗馬のみが弱体化し、シャドールの環境での位置がより盤石となるような改訂であった。

2014年の日本代表権を勝ち取った光天使シャドール構築。シャドールは薄めでかなり環境を見たメタカードを多く積んでいることがわかる。強力なランク4を立て、ネフィリムの素材にもなる光天使ギミックの相性の良さが目玉の構築だ。
NECH Pテーマがこの弾から徐々に暴れ始めることとなる

 同月15日には第2弾となる「ネクスト・チャレンジャーズ」(NECH)が発売された。この弾で収録されたシャドールはハウンド、エグリスタ、シェキナーガ、そして神の写し身との接触である。神の写し身との接触はその驚きのルビ振りのみならず、シャドールが速攻魔法から融合をしてくるようになったというだけでかなり衝撃の新規であった。これにより対象にとられたミドラーシュをサクリファイス・エスケープさせつつ後続のミドラーシュを立てたり、バトルフェイズに追撃を行ったり、相手ターンにミドラーシュを出す奇襲をかけたりと多岐にわたる使い道があった。ハウンドはそこまで評価されなかったが、戦闘からミドラーシュを守ったり、自分のセットしてあるシャドールをリバースしたりと独特な動きが可能となった。
 エグリスタとシェキナーガの登場により炎と地属性をより自然に採用できるようになった他、ミドラーシュ以外の特殊召喚メタを獲得するに至った。手札にシャドールがないと効果を使えない点は少し残念ながらも、チェーンを組まない特殊召喚を止められるのはモンスター効果では結構珍しく、効果無効をほとんど持たないシャドールにとってシェキナーガの効果はかなり貴重である。先述のマスマティシャンが融合素材にもなるという点でシェキナーガの登場は大きかった。あまり見なかったがエグリスタの方も、サイドなどで採用の多かったファイヤ―・ハンドを素材にできた。ただしファイヤー・ハンドはアイス・ハンドともどもデッキにいてナンボな効果なので積極的に狙いたいコンボではなかったが。12月にはジェット・シンクロンが登場したためシンクロ展開に用いることもできた。

エルシャドール・シェキナーガ。マスマティシャンや相手のナチュル・ビーストの融合先として活躍し、後に列車と化すシャドール唯一の効果無効モンスター。実は筆者はLVP1のレア仕様しか持っていないため、そのうちアップグレードしたいと思っている。

 シャドール以外の話もすると、同期のテラナイトが星輝士トライヴェールを獲得し、かなりの強化を受けることとなった。フィールド全バウンスにハンデスができ、さらに後続の展開まで可能なこのカードの登場により、永続魔法・罠を使いまわしながら途切れない展開を得たテラナイトにリソース勝負をしかけることが難しくなった。
 また、このパックではPテーマの【クリフォート】が登場し、クリフォート・ツールを引っ提げて環境に躍り出てきた。当初のクリフォートはカードプールが狭かったものの、ツールと機殻の生贄による強固なサーチ体制により遊戯王最初の環境Pテーマとしてセンセーショナルな登場を飾ったことにより、シャドールにとって割と大きな脅威が現れ、相性が悪かったテラナイトが環境での立ち位置を脅かされることになった。クリフォートはP召喚を1回行い、そこからアドバンス召喚を狙うデッキなため、特殊召喚が1回で事足りてしまう。このためミドラーシュのロックがまるで意味をなさず、対クリフォートにおいてシャドールは別の策を取らなければならなかった。また、クリフォートと非常に相性のいいスキルドレインや虚無空間などの永続罠はシャドールにとってかなり苦しいものであり、シャドール・ドラゴンなどの対抗手段こそあれど余裕で対処できるカードではなかった。
 しかしながら超融合経由でナチュル・ビーストにすら耐性を得たシャドールのパワーはその相性すら覆せるほどになっていたため、依然として【シャドール】が幅を利かせる状態に変化はなかった。

EP14 タイトルとパッケージイラストは聖騎士をフィーチャーしているが、このパックのメインはノーデンでは?という意見が散見された。

 シャドールとクリフォートが熾烈な争いを繰り広げるなか、海の向こうからとんでもないパワーカードが輸入され、環境を大きく震撼させた。9月13日、旧神ノーデンの襲来である。このカードは融合素材がSモンスターまたはXモンスター+SモンスターまたはXモンスターと非常に重く、正規融合しづらいのだが、レベルがまさかの4であったために簡易融合一発で出てきてしまう問題があった。さらにオマケと言わんばかりに特殊召喚成功時効果として墓地のモンスターを蘇生できるという破格の効果により、簡易融合がランク4に化けるなど信じられないような状態となった。ちなみにこの特殊召喚時効果にはターン1がないため、簡易融合経由なら蘇生制限を満たすのを活かして効果を使いまわすことも可能であった。ノーデンと他のカードを組み合わせた先攻ワンキルルートまで開拓され、【ノーデン1キル】としてそこそこ環境で暴れることとなった。ミドラーシュとも相性のいい簡易融合を使えるシャドールで、ランク4を立てるのに利用できるということで採用できた。しかしながらこの汎用性はシャドールやノーデン1キルのみならず、テラナイトなどのエクシーズデッキにも入るほどであり、一部のプレイヤーに「今の遊戯王はカップ麺早食い大会だ」と言わしめるほどであった。
 ノーデン以外だとアーティファクトーデスサイズの収録も重要だろう。アーティファクトならかなり簡単に出せるEXデッキからの特殊召喚を縛る強力なロックを持つモンスターであり、融合デッキたるシャドールを含む、大部分のデッキにとって脅威となるカードである。2024年現在でも【イビルツインスプライト】や【超重武者】から出てくることがある現役カードであり、TCGリミットレギュレーションでは禁止にされるほどのパワーを持つ。モラルタは制限になっていたものの、アーティファクトの神智を利用すればかなり出張しやすいカードであり、【AFテラナイト】などのデッキが考案されることとなった。シャドールに採用されることもそれなりにあり、警戒すべきカードとして環境に現れたカードとなった。

2014年10月期 凋落と抵抗

光天使のオーパーツカード。許されるまでに2年かかったが、これが2年で許されるところまでいったインフレは恐るべきものがある。

 11月でなく10月に改訂が入るようになって最初のリミットレギュレーションが発表された。この改訂は主に【シャドール】が規制され、順当とはいえシャドール使いは悲しむこととなった。このことは制限カードとなった7枚のカードのうち3枚がシャドール関連カードから明らかであろう。エルシャドール・ネフィリムとミドラーシュ、そして堕ち影の蠢きが規制の対象となり、シャドールの継戦能力と妨害の質が下がることとなった。また、シャドールによく採用されていたパーツも続々と規制を受けた。というか規制されたカードはほぼすべてシャドールに採用されていたものである。代表的なのはまず召喚僧サモンプリーストとダーク・アームド・ドラゴンだろう。前者は魔法カードを多く採用するシャドールを含めた、ランク4を出したいデッキ全般に採用できたためその汎用性を鑑みて規制を受けたのだろう。後者はエクリプス・ワイバーンからサーチが可能で、シャドールにとっては貴重な破壊と打点要員として活躍した。
 だが特筆すべきは光天使スローネの制限だろう。このカードは光天使セプターとの強烈なシナジーによりコンボパーツが揃えばレベル4を3体並べつつドロー、さらにX召喚を行えば1破壊に1ドローまで行えるという9期のインフレを体現したかのような存在であった。スローネは3体以上を要求するX召喚にしか使えないが、この時代は3体で出せる最強カードたるNo.16 色の支配者ショック・ルーラーが禁止になっていなかったため、先攻から出せば相手を大いに縛ることができた。召喚権こそ使うものの、ほかに特に縛りがないため汎用出張パーツとして大活躍し、俗に「セプスロ出張セット」と呼ばれるほどポピュラーなものだった。環境トップデッキにも採用され、【光天使シャドール】や【光天使テラナイト】などとして大活躍した。この制限は上記の4×3を「セプスロ出張セット」のみでは行えなくする非常に重いものであり、環境とは特に関係のなかった純構築の【光天使】までもが大きく影響を受けることとなってしまった。
 また、2014年世界大会優勝デッキにも3枚積まれていたソウル・チャージも登場から半年足らずで制限カードとなったことでテラナイト名称のカードは1枚も規制されていないにも関わらず打撃を受けることとなった。このためノータッチであったクリフォートが環境首位になるかと思われたが、融合魔法に特に規制が入らず、いくらでも他の型を使えたシャドールがまだまだ環境に居座る運びとなった。ちなみに前回の改訂ですこし冤罪気味に制限されていた針虫の巣窟はここで制限解除となった。

SPTR シャドールの天下に引導を渡したパック

 制限改訂からすぐ後の10月11日、今までのインフレを見てきたプレイヤーですら震撼するような脅威のパック、ブースターSP-トライブ・フォース-(SPTR)が発売された。このパックで登場した、通称「儀式のような何か」、影霊衣(ネクロス)の圧倒的なカードパワーの前についに規制を受けたばかりのシャドールが屈し、環境トップから陥落することとなった。というのもネクロスのパワーがイカれていただけでなく、シャドールにとって非常に相性の悪いデッキだったのだ。儀式デッキ故にEXデッキからモンスターを出さないネクロス相手にデッキ融合を決めることもできず、ネクロスの強烈な特殊召喚及びEXデッキメタが完全に刺さるのみならず、シャドールの苦手とするバウンスと除外までキッチリ完備している最強のデッキだったのだ。さらに言えばネクロスはその特徴として手札に来た儀式モンスターがサーチとして使えるため儀式召喚特有のアド損を回避でき、儀式魔法が後続のネクロス魔法をサーチできるため、盤面を処理しても途切れることのないリソースを持つ。ネフィリムとミドラーシュが制限となったシャドールがリソース勝負で勝つことは難しいという状態だった。このためシャドールはネクロス、およびネクロスと多少相性が良くなんとか2番手に食いついたクリフォートに次ぐ3番手くらいの立ち位置まで後退する運びとなった。ここからは長いことネクロス一強と呼ばれるほどの状態となり、シャドールの天下が終わることとなった。

10月制限、ネクロス登場後のサンプルデッキ。ネクロス対策にサーチメタを多く積み、エクシーズギミックを厚くしている。ソウルチャージとの相性は悪いが、7月に無制限となったデビフラからエクストリオを出し、魔法罠を完全に封じることで儀式召喚及びP召喚をメタる戦法も見られた。
SECE シャドールにとってはしょっぱいパックになってしまった

 11月15日にて既に環境トップのネクロスをさらに強化してしまったパック、ザ・シークレット・オブ・エボリューション(SECE)が発売された。シャドール新規としてはエルシャドール・ウェンディゴと魂写しの同化(ネフェシャドール・フュージョン)が収録された。
 ウェンディゴは風属性とシャドールで出せる融合体で、自分モンスターを特殊召喚された相手モンスターとの戦闘から守る効果を持つ。守備力は2800あるのに攻撃力は200しかないという尖ったステータスであり、その低い攻撃力でどうやって神星樹を覆う星守る結界を破壊できたのかが謎だ。効果の性能は高いとは言えないが、レベルが6なことを活かして、2チューナーのシャドール・ファルコンや4チューナーでマスマティシャンなどと相性の良いライトロード・アーチャー‐フェリスと優秀なレベル8や10シンクロを出す運用が主となる。
 魂写しの同化はシャドールの属性変更をする装備魔法で、融合召喚を行う初の装備魔法である。ついに来るところまで来た感じだ。融合召喚ができる装備魔法がこの後TCGで2024年に登場するまで唯一無二だったことを考えればかなり先鋭的なものだったと言える。また、これまでシャドールモンスターのみでミドラーシュ以外の融合体を出す際は罠モンスターの原核に頼らざるを得なかったため、先攻1ターン目からは難しかった。召喚権を使いこそすれシャドールのみでなんでも出せるようになったという点において、環境では見ることのあまりないカードではあったがシャドールの個性を伸ばす良い新規だったと言える。

影牢の呪縛と合わせれば相手のシャドールを奪うこともできる

 しかしながらこの2枚のカードでは影霊衣の反魂術を得た、得てしまったネクロスには対抗できず、シャドールの立ち位置はより厳しいものとなってしまった。墓地に儀式モンスターを送ってサーチするテーマが墓地から儀式召喚できるようになったことで本当にムダのないテーマに仕上がり、さらに環境での位置を盤石なものにしていったのだった。さらに言えば同期のテラナイトが星輝士 セイクリッド・ダイヤを獲得しており、強烈なシャドールメタがテラナイトXモンスターの上にスッと乗ってくるようになった。デッキからの墓地送りと墓地からの回収を封じてくるモンスターであり、シャドールのデッキ融合と魔法回収を邪魔してくるかなり厳しいモンスターである。メインフェイズ2にしかテラナイトからは出ないのが救いか。とはいえ、3番手として依然活躍できるパワーは残っていた。

SD28 筆者にとって思い出深い箱

 12月6日にはストラクチャーデッキ-シンクロン・エクストリーム-が発売され、【シンクロン】に強化が入った。【シンクロン】がこれだけで環境に殴りこんでくるほどのパワーはまだなかったが、ジェット・シンクロンのように今でも使われるカードが入っていた。ジェット・シンクロンはシャドールにとってはエグリスタの素材として優秀なカードが追加されたと少しだけ話題になった。墓地のジェット・シンクロンは自己蘇生が可能なため、エグリスタの素材として墓地に送った後1チューナーとしてエグリスタと8シンクロしつつエグリスタの融合に使った魔法を回収できる。エグリスタの使用用途が増えたということでシャドールとしては割とうれしい新規となった。ちなみに白黒ギミックの再録も地味ではあるがちょっとうれしかった。
 ちなみにこの箱の発売時点で制限カードが5枚も入っており、さらに絶版になる前に禁止カードが1枚出た問題児ストラクだったりもする。レベルスティーラーは強すぎた…

2015年1月期 全属性の網羅と復権

テキストは変わらないのにパワーは年々上がっていく謎のカード。シャドールのストラクに入っていたので公式でシャドールカード(暴論)

 2015年が始まり、さっそく新たなリミットレギュレーションが適用された。この改訂では主に環境トップで大活躍していたネクロスが規制された。ネクロスのEXデッキメタを担っていたユニコールの影霊衣が登場して2ヶ月半しか経っていないのに制限となり、汎用儀式サポートが多数規制されてしまうこととなった。これによりシャドールを苦しめていた要素が少しなくなり、立ち位置が改善した。とはいえシャドールも無傷ではなく、ノーデンを出すための簡易融合と、最強の除去たる超融合の2枚を制限にされてしまった。これにより展開力と除去力が落ちてしまい、地属性が吸いづらくなったことでクリフォートとナチュル・ビーストへの耐性が少し下がることとなった。この改訂で2番手のクリフォートはノータッチであり、全体的なパワーは下がりつつもネクロス、クリフォート、シャドールという順位は変わらなかった。

CROS シャドールが完成したパック(なおこの後すぐ…)

 2月14日には第4弾のクロスオーバー・ソウルズ(CROS)が発売された。このパックでのシャドール新規はイェシャドールーセフィラナーガ、オルシャドールーセフィラルーツ、そしてエルシャドール・アノマリリスの3枚である。前者2枚はシャドール初のPカードではあるが、効果はセフィラをサポートするものであり、あまりシャドールとは関係がない。なんならリバース効果もない。このパックにおけるシャドールの目玉はやはりアノマリリスだろう。このカードはシャドールと水属性で出せる融合体であり、アノマリリスの登場によりついに神以外の全属性のシャドールが揃うこととなった。アノマリリスは永続効果で魔法・罠によるモンスターの手札・墓地からの特殊召喚を封じる。要するに儀式魔法で手札・墓地から儀式召喚を行うネクロスへのピンポイントで強烈なメタであり、超融合が制限となったとはいえ水属性を素材にするためにネクロスモンスターを吸って出すことのできるモンスターである。これによりシャドールは環境トップのネクロスへの待望の対抗手段を手に入れたことになる。水属性でシャドールにとって使いやすいモンスターがあまり存在しないのだけが玉に瑕か。

後に亀との融合で出てくるようになった神

 さらに言えばこのパックで幽鬼うさぎが登場したのも大きい。灰流うららの登場までどのデッキにも入っている汎用手札誘発ともいえる高額カードだった。モンスターのみならず永続魔法・罠への強烈な対抗策として、永続魔法扱いのPスケールに対し非常に強力なメタとして活躍することとなった。シャドールにとって大きかったのはこのカードが光属性であり、ネフィリムの素材になるのと、相性がそこまで良くないクリフォートへの明確な回答を得たところにある。クリフォート・ツールに対して撃てばサーチを止めたうえでP召喚の邪魔ができる。ツールに名称ターン1はないため、貼りなおせばまたサーチはできるものの、マインドクラッシュで複数枚のツールがすっぱ抜かれるリスクがあるために手札になるべくツールを持ちたくないというジレンマがある。マインドクラッシュがネクロス対策にそこそこ流行っていたことを鑑みれば、クリフォートに対してかなりプレッシャーを与えられるようになったと言える。

スプライトなど、刺さる対面が多くなるとまあまあの頻度で環境に舞い戻ってくる

 しかしながらシャドールにとっていいニュースばかりでもなかった。まずネクロスがsophiaの影霊衣というEXメタの手札誘発を手に入れてしまった。これにより先攻でのEXからの特殊召喚を封じられるシチュエーションが発生し、せっかくのアノマリリスが十全に活躍できないこともあった。
 さらに言えばテラナイトが星守の騎士プトレマイオスを獲得し、そのパワーを大きく上げ、シャドールにとって大きな脅威となった。このカードは3素材取り除けばフリーチェーンでNo以外のランク5になれるので、シャドールの苦手なセイクリッドダイヤやセイクリッドプレアデスをシャドールバレしてから出せるため、かなり厄介であった。しかし最も有名な使い道といえば通称「プトレノヴァインフィ」だろう。プトレマイオスからサイバー・ドラゴン・ノヴァを出し、その上にこのパックで同時に登場したサイバー・ドラゴン・インフィニティを重ねるコンボである。レベル4モンスター3体から表側攻撃表示モンスターを吸える万能無効を出せるという、当時としては画期的な妨害であった。さらに言えばプトレマイオスは汎用ランク4で多くのデッキに採用でき、2素材で出してもエンドフェイズにEXのステラナイトを素材にできるため、4×2ができるならEXを圧迫することを除けば採用できるほどの汎用性をほこった。クリフォートしか出せないはずのクリフォートにすらねじ込まれていたことを考えればその強さがわかるだろう。このカードの登場がテラナイトがこの年のWCS優勝を飾った大きな要素になったほか、かなり長い間禁止カードを経験することになるのもこのパワーを如実に表していると言える。

遊戯王ZEXAL8巻。ZEXALでおそらく一番売れた巻

 この時期の環境の話をするならSNo.39希望皇ホープ・ザ・ライトニングを語らずにはいられないだろう。3月4日に発売された漫画遊戯王ZEXAL8巻の付録として登場したこのカードはランク5で、希望皇ホープに重ねて出せるため実質ランク4として扱われてきた歴史を持つ。ダメージステップ中の相手カードの発動を封じ、さらにダメージ計算時に自身の攻撃力を5000にするかなりの脳筋カードである。このカードの登場によりアポクリフォート・キラーなどの対処しづらいモンスターを簡単に戦闘破壊で処理できるようになり、また打点要員として非常に人気が出た。ランク4を出せるならとりあえず入るカードとして9期の間使われ続けた。シャドールへの影響としてはネフィリムで突破できない高打点の登場によりメインアタッカーの信頼度が少し下がったことにあるだろうか。このカードのあるなしがどれほど大きかったかは日本であまり活躍できなかったアポクリフォート・キラー(特化型デッキが「東大クリフォート」と呼ばれるくらいには物珍しかった)が、ライトニングがいなかった海外TCG制限で禁止送りにされたことが如実に表しているだろう。

この時点でのシャドールサンプルデッキ。この頃から段々増殖するGがメイン投入されていくこととなる。入れていないがアーカナイト・マジシャンやネクロス対策のダイアモンド・ダストも投入を検討できる。

2015年4月期 悲劇と意地

ネフィリム返しておじさんはここから始まった。でも禁止になっていたからこそネフィリムのレリーフを手ごろな価格で手に入れられた側面があるため、筆者としては複雑な気持ちである。

 4月の改訂はすさまじいものであった。シャドールにとっては悪魔の改訂、この後3年にわたって「ネフィリム返しておじさん」という亡霊を大量発生させることとなった悪夢だ。この時点で1年も環境で頑張っていたシャドールは大幅な規制の対象となり、ネフィリムを禁止にされた挙句神の写し身との接触も制限カードにされてしまったのだ。これでも足りないと言わんばかりにクリバンデットやマスマティシャンも制限カードとなり、ミドラーシュが制限解除となるも改訂のダメージに比べれば些細なことであった。ネフィリムを失ったことは非常に痛く、メインアタッカー兼アド稼ぎ役を失ったばかりか、デッキとしての光属性モンスターとの相性の良さを消されてしまった形となる。光属性には優秀なカードが多かったばかりにシャドールとしては非常に大きな影響を受けてしまったこととなる。この頃注目されつつあった【AFシャドール】も光属性のアーティファクトとのシナジーが薄れたために廃れることとなった。しかしながらシャドールの代名詞のデッキ融合はまだ生き残っていたため、そこを利用した構築で環境デッキの意地を見せることとなる。
 シャドールにとって悪いニュースばかりでもなく、他の主流デッキも大幅に規制を受けたため弱体化したシャドールにも抵抗の余地が残されることとなった。ネクロスは重要なサーチ役のブリューナクの影霊衣と宇宙最強(当時)の影霊衣の反魂術を制限カードにされ、デッキの安定性と継戦能力、そして爆発力を大いに奪われることとなった。クリフォートもサーチが可能なツールが準制限、機殻の生贄が制限カードとなり、デッキの安定性が大きく損なわれてしまう改訂となった。さらに環境にちょっと返り咲きかけていた征竜がここにきて最上級モンスターを全員禁止されるという憂き目に遭い、根本からデッキを否定されることとなった。さらに虚無空間が制限となったことで展開したいデッキには追い風となった。
 この改訂後環境は【影霊衣】【クリフォート】【ランク4】を筆頭に、【シャドール】の派生形や【海皇】などが活躍する群雄割拠状態に突入する。【ランク4】としているのは、【テラナイト】と【HERO】がそれぞれランク4エクシーズでプトレマイオスを立てるのがメイン戦術という点で共通しはじめてしまっていたからである。群雄割拠とはいえあまりにもどのデッキからもプトレマイオスが飛んでくるため、「プトレ一強環境」と称されることすらあった。

列車ドールサンプルデッキ。超融合先がかなり多く積まれているのと、この頃かなり強力だったHEROを強く対策している。また、通常の【列車】の動きとスキルドレインによるバ火力ビートダウンを両立している。

 この頃のシャドールの派生でよく使用されていたのは【列車ドール】だろう。これは単なるダジャレではなく、SECEで強化を受けていた【列車】にシャドールを混ぜた構築であり、日本選手権優勝まで飾っている。【列車】とは通称であり、実態は【ランク10軸地属性機械族】である。なぜシャドールがここに混ざるかというとシェキナーガの存在があるからである。シェキナーガはレベル10で地属性・機械族であり、影依融合1枚から出てこれる制圧効果もちのカードとして【列車】と非常に好相性であった。デッキ融合で落としたシャドールの効果もアド稼ぎに有用であり、もともと後攻指向のデッキの列車と基本後攻でしか使えないデッキ融合のかみ合いが非常に優れていたといえる。シャドールらしさはそこまでないが、9期最初の環境デッキとしての意地を見せつけるような環境への食い込み方といえる。ここからのシャドールは基本的に他のデッキとの混合構築がメインとなり、純構築は今日まであまり見られないものとなった。ある意味で様々なテーマのモンスターを侵食して影に取り込んでいくシャドールらしい進化といえるだろう。

CORE クリフォート以来そこまで振るわなかったPデッキが段々と頭角を現してくる

 4月25日にはクラッシュ・オブ・リベリオン(CORE)が発売されたが、ついにシャドールの新規カードが途絶えることとなってしまった。ここからは環境に少し触れるのとシャドールに相性のいい新規があったら解説するだけにとどめる。ネフィリムが禁止となったこの頃のシャドールには入らなかったが、Emトリック・クラウンの存在は触れておきたい。墓地に送られた場合に自己蘇生が可能な光属性モンスターであり、どこから送られてもいいためネフィリムの素材及び後の時代においてはリンク素材としても非常に優秀なカードとなった。
 このパックによって環境が大きく変わることはなかったが、Emトリック・クラウンの緩い自己蘇生条件と、クラウンの蘇生で発生するダメージをトリガーに自己蘇生が可能なH・Cサウザンド・ブレードを使用して途切れないランク4エクシーズをするデッキ、通称【クラウンブレード】が誕生した。出てくるエクシーズを除去しようが素材が自分で帰ってくるという恐怖のデッキだ。名前がちょっとかっこいいのが面白い。しかしこのデッキも環境トップに堂々と参戦したというわけでもなく、群雄割拠の【ランク4】のひとつとして見られるにとどまった。

CPD1 クリティウスの牙が面白い効果をしていた

 5月16日にはコレクターズパック-運命の決闘者編-(CPD1)が発売された。直接環境を揺るがすことはなかったが、占術姫の登場によりシャドールの戦術の幅が広がった。占術姫はリバースモンスターをサポートする儀式テーマであり、リバーステーマたるシャドールと相性がいい。基本的にはアド損になる儀式召喚をシャドールの墓地効果で打ち消せるのも強みだろう。聖占術姫タロットレイの効果で自分ターンに能動的にリバース効果を使用できるため、シャドール・ヘッジホッグなどのもつ強力な効果を使えるのが一番の強みといえる。融合デッキとしてではなく、リバースデッキとしてシャドールを運用する可能性を提示してきた面白い新規だった。

2015年7月期 環境からの転落とペンデュラムの猛威

 この年の7月は非常に珍しいことに改訂において変更がなかった。これは環境が群雄割拠であり、特に規制の必要はないという判断なのだろう。しかしこの環境は長くは続かず、すぐに激変することとなる。6月20日に発売されたストラクチャーデッキーマスター・オブ・ペンデュラムーのおかげで魔術師が既に環境に姿を表しており、当時のアニメたるARC-Vの目玉だったP召喚が躍進する気配はあった。しかしこのあとのパックでPデッキがここまで猛威を振るうとは誰が予測できただろうか…

スカーライトは自分のシンクロデッキで一番使った、ほぼエースのようなカードだった。思い出深い。

 7月18日に発売されたディメンション・オブ・カオス(DOCS)でEmヒグルミをはじめとした正気を疑うようなカードが登場した結果、エンタメイトとエンタメイジを合わせた【EMEm】が環境を圧巻することとなった。P召喚特有の、Pスケールに2枚カードを持っていかれるが故の初動のディスアドバンテージをクリフォート以上に克服した上で、クリフォートと違い、特殊召喚できるモンスターに特に制限のかからない次世代のPデッキが他の追随を許すはずもなかったのだ。当然シャドールにこの暴力を捲る性能は残されておらず、ついに環境でシャドールの姿を見ることは叶わなくなってしまった。ネクロスの登場にもなおそれなりに耐えたシャドールであったが、2024年現在でも禁止カードに指定されるほどのパワーを持つデッキの台頭には流石に後塵を拝するを得なかったのだ。
 とはいえガチ環境以外での話をすればシャドールにとって全く旨みのないパックというわけでもなかった。このパックでは強力なリバースモンスターである禁忌の壺が収録されており、占術姫シャドールにとって大きい強化が入ることとなった。禁忌の壺はリバース時に4つの禁止カードの持つ効果のうち一つを選んで使うことができ、タロットレイでの蘇生とリバースに対応する。シャドール要素を使えばデッキ融合で墓地に落とせ、シェキナーガを出すことができるため、強力なシナジーを生んだ。リバースデッキとしてのシャドールの完成形をこことする意見もある。

サンプルの占術姫シャドール。環境で戦うほどのパワーはなかったにせよ、リバースデッキであるという部分に焦点を当てた複合デッキである。EXはあまり使用しないので汎用パーツの塊である。闇の誘惑の枚数やシャドールの濃度、手札誘発の中身などを変えるといいだろう。
SPHR 最近ベイゴマックスがMDで無制限になり、話題になった

 8月22日にはブースターSPーハイスピード・ライダーズーが一般発売された。このパックには出張要員として非常に優秀なSRベイゴマックスおよびタケトンボーグ、そして手札誘発として今でも根強い人気を誇るPSYフレームギアが収録されていた。テーマ単位で環境に躍り出たカードはないまでも、現在でも制限カードに指定されているものが三種も入っていたことを考えるとかなりパワーの高いパックだったと言える。ベイゴマタケトンボーグセットは汎用性が高く、シャドールにランク3目的で一応採用ができたのと、PSYフレームギアγが後にネフィリム禁止解除後のシャドールにおいて貴重な光属性の手札誘発として活躍することとなったことを鑑みれば、シャドールにとってそれなりに嬉しいパックだったと言える。環境としては依然として【EMEm】が猛威を振るう状況に変わりはなかった。

EP15 ダンテが高かったことしか憶えていない

 9月に入り、またしても黒船襲来の季節となった。19日発売のEXTRA PACK 2015(EP15)で海外新規のテーマが輸入され、海の向こう岸から到来した【彼岸】が【EMEm】環境に一石を投じることとなった。その暴力的なアドバンテージ獲得力は【EMEm】の圧倒的なパワーに喘いでいたデッキの立場をさらに危うくし、シャドールもまた一歩環境から遠ざかる結果となってしまった。【彼岸】もまた墓地肥やしを行うデッキではあるが、コストとしてデッキを削る関係上シャドールと相性が悪く、メインデッキの彼岸モンスターが基本的に混ぜ物お断りな性能をしている以上シャドールに取り込むこともできなかった。

SR01 初のストラクリメイク。安くで完成度の高い環境デッキが組めることが衝撃であった

 また、同日にストラクチャーデッキRー真帝王降臨ー(SR01)も発売され、超強化を受けた【帝王】が【次元帝】以来の環境入りを果たすこととなった。【真帝王領域】をはじめとした、自身もEXデッキを使用できない代わりに強烈なEXデッキメタを貼れる性能に対し、ほとんどのデッキがEXデッキを使う以上影響を受けることとなった。シャドールも無論例外ではなく、アドバンス召喚を基調とする帝にはミドラーシュもシェキナーガもほとんど刺さらず、あちらのEXデッキメタは全部ゴリゴリに刺さってしまう。これはシャドールを環境から完全に追い出すに足るものであった。

2015年10月期 シャドールのいない環境

まあいつか死ぬとは思っていた。シャドールを支えてくれた(とともに敵対もした)重要なカードであった。

 7月の改訂では何もなかった反動か、10月のリミットレギュレーションは非常に多くのカードを対象とするものであった。特に大きな影響のあったのは旧神ノーデンと星守の騎士プトレマイオスの禁止だろう。この2枚はデッキタイプの枠組みを超えて多くのデッキに採用されていたカードであり、流石に看過できないとされたのだろう。シャドールにとってノーデンは超融合先として重宝していたカードだったため、かなり手痛いと言える。他にも【HERO】、【魔術師】、【海皇】、【影霊衣】に規制が入っており、4月期の群雄割拠で活躍していたカードが軒並みやられる事態となった。小さい変化ながらも墜ち影の蠢きが制限緩和されたため、シャドールは少しばかり力を取り戻すこととなった。
 この改訂では環境トップの【EMEm】にはなんら規制が入らなかった(強いて言えばプトレマイオスを採用していたためそこは弱体化した)ため、ただでさえ猛威を振るっていた当該デッキにとって大きな追い風となってしまった。これにより環境は単独トップの【EMEm】の後を【彼岸】と【帝王】が追う形となり、それ以外のデッキの立場は非常に苦しいものとなっていった。

BOSH 過ち

 【EMEm】の活躍がこれでは足りなかったのか、10月17日にはブレイカーズ・オブ・シャドウ(BOSH)が発売され、EMモンキーボードが収録されたことによって【EMEm】は全盛期を迎え、環境首位独走状態となった。このパックで登場した、カウンター罠のコストをちょろまかす解放のアリアドネと神の通告を合わせ、竜剣士パーツでサーチを可能とした型まで開発され、歴代最強とも称されるPテーマがここに顕現したのだった。当然シャドールで太刀打ちできるはずもなく、この時期のシャドールは完全に形を顰めることとなってしまった。しかしながらあまりにも活躍していた【EMEm】を嫌い、関連カードを独自規制した大会も開催されていたため、シャドールにもまだ一部大会で活躍するチャンスは残されてはいた。とはいえ【彼岸】と【帝王】の圧力は健在で、やはりシャドールとしては苦しい環境であったと言わざるを得ない。

2016年1月期 続くシャドールの苦境

過去最強格のランク4

 その後のパックで特にシャドールにとって嬉しいカードもなく、年を越し制限改訂の時期がやってきた。2016年1月1日適用のリミットレギュレーションは規制枚数としては3枚だけだったが、非常に大きな改訂だった。Emヒグルミ、Emダメージ・ジャグラー、そしてNo.16 色の支配者ショック・ルーラーが一気に禁止となったのだ。これらは基本的に【EMEm】へのピンポイント規制であったが、汎用的に使われていたショック・ルーラーも規制の対象となった点は興味深い。ランク4で展開のできるデッキはどれもパワーダウンしたと言える。【EMEm】が瓦解したことにより【帝王】と【彼岸】にとっては嬉しい改訂だった。しかしながらEM側には規制が入らなかったため、新たな相棒を獲得し、【EM竜剣士】へと姿を変え、まだまだ暴れることとなった。

SHVI 一時期クリスタルウィングといえばDDみたいな印象があった

 9日にはシャイニング・ビクトリーズ(SHVI)が発売された。環境を大きく変化させるような新規テーマはなかったが、浮幽さくらの追加は書いておくべきだろう。新たな妖怪娘手札誘発で、今度はEXデッキへのメタとしての役割を持つ。EXデッキの特定のカードに強く依存するテーマには刺さる効果をもち、そういったデッキの一強環境になるたびにちょくちょく環境に姿を現す手札誘発として一定の評価を得ることとなった。もはや環境にいなかったシャドールに対しこのカードを使う人間はいなかったが、ミドラーシュを引っこ抜かれたらかなりの痛手だっただろう。
 また、月光黒羊の登場により融合デッキ全体に一定の強化が入ることとなった。手札から捨てるだけで融合がサーチできるといったカードであり、シャドールは専用融合魔法を使用するためあまり関係はなかったが、通常の融合を使用する際にはサーチ役として採用の余地のある新規となった。

2016年4月期 相棒の喪失と激動の環境

おそらくこの記事で出てくるカードで一番高価だった炎属性海竜族

 その後シャドールにとって特に何もない時期が続き、またしても制限改定の時期に差し掛かった。2016年4月1日適用のレギュレーションは壮絶なもので、禁止カードを3枚と制限カード16枚という大規模な規制が行われた。規制の対象はEM、竜剣士、帝王、彼岸が主な対象であった。特にEMと帝王の負ったダメージは凄まじく、EMは主人公デッキでありながら構築がかなり困難なレベルになってしまう異例の事態となった。シャドールに関係のある規制としてはラヴァルバル・チェインの禁止だろう。長らくランク4版のおろかな埋葬として活躍していた同カードであったが、ここでついに消えることとなってしまった。シャドールが環境にいた頃を支えたカードを失ったのは大きかったと言えるだろう。

TDIL キズあり大特価ゴードンを見つけた時の興奮は今でもおぼえている

 9日にはザ・ダーク・イリュージョン(TDIL)が発売され、環境にメタルフォーゼが姿を見せるようになった。シャドールにとって嬉しいカードといえば妖精伝姫ーシラユキだろう。ネフィリムが禁止だったこの頃はまだ相性は良くなかったが、後に融合系GSデッキでシャドールと共に活躍したり普通にシャドールに光属性枠として採用されたりするなど、そのうちシャドールにとってかなり重要なカードとして語られる存在となるのだった。墓地が肥えた時の連続自己蘇生は圧巻の一言であり、海外で禁止となるほどの暴力性を秘めたケモの力をシャドールがとりこむのはもう少し先の話となる。
 汎用カードとして強欲で貪欲な壺が追加されたのも特筆すべきだろう。このカードはデッキトップ10枚を裏側除外する代わりに2枚ドローができる強力なカードであり、1枚のカードに依存しているなど、使えない理由がない限りはとりあえず突っ込んどけとまで言われた強力なドローソースとして環境で活躍した(そして当時の自分には手の届かない値段だった)。重いコストを持ちながらも現在では準制限、マスターデュエルでは制限カードに指定されるほどであることを考えれば相当なものだったと言える。

当時召喚条件二度見した

 23日には映画THE DARK SIDE OF DIMENSIONSが公開され、追加された新規カードとここまでジワジワ強化を受けていた【青眼】がここにきて一気に頭角を表す。これにより環境は【青眼】【DDD】【メタルフォーゼ】【彼岸】などがひしめき合う群雄割拠へと突入した。【青眼】はこの年の世界大会を制することとなる。

SDKS なぜか極端にパワーの差があった原作ライバル同士のストラク

 しばらくシャドールにとって嬉しい変化はなかったが、環境を語る上で6月18日に発売されたストラクチャーデッキー海馬瀬人ー(SDKS)を飛ばすわけにはいかない。このストラク で登場したABCードラゴン・バスターを中心とした【ABC】はその安定性とフリーチェーンの除外という強力な妨害によって環境へと躍り出たのだ。これにより重い規制を受けていた【彼岸】も流石にパワー負けしだし、環境がかなり変化することとなった。シャドールとしてはマトモに除去できないモンスターから飛んでくる除外に対応できず、やはり環境に舞い戻ることはできない状態が続いた。

2016年7月期 ネフィリムのいない融合次元

 7月1日の制限改訂は特に大きな変化がなく、緩和されたカードが数枚あるのみであった。環境に特に影響のあるものではなく、1年前の改訂と同じく、群雄割拠な環境に水を指す必要はないと公式が判断したものと思われる。シャドールにとってもあまり関係のない緩和であり、まだしばらくはネフィリム無き状態に耐えるしかなかった。

INOV 当時ヴァトライムス+超融合でなんでもスタヴェに変えるというテロが大好きで幾度となくやった

 そんな中9日に新パックのインヴェイジョン・オブ・ヴェノム(INOV)が発売された。目玉はやはりパッケージを飾ったスターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴンだろう。場の闇属性2体で出せる上に強力な効果を持つこのカードは超融合先として非常に優秀であり、今日でも闇属性が環境に多い場合は超融合用に入れられることがある。超融合と相性が良く、闇属性が主体のシャドールにとって嬉しいカードであり、捕食植物と合わせた構築も考えられたほどである。
 しかし嬉しいことばかりではなく、同じく追加された次元障壁は融合召喚主体のシャドールにとっては非常に辛いものであった。次元障壁は特定の召喚法を封じるカードであるが、融合魔法にチェーンされた場合の被害がSやX召喚に対する次元障壁のダメージの比ではなく、このカードの存在からEXデッキの融合への依存度を減らさないといけない状況になってしまった。
 また、シャドールと同期のテラナイトやクリフォートに新規カードが来ており、シャドールにも近々強化が来るのではないか、ひょっとしてネフィリムの禁止解除なんかもありうるのではないか、と少し話題となったのだった。

EP16 ガメシエル、使われることは多くないが固有効果が結構えげつない

 9月に入り、毎年恒例の季節がまたやってきた。今度はどんな黒船がくるだろうとワクワクしていたら、期待を裏切らないパワーのものが襲来した。EXTRA PACK 2016(EP16)、Kozmoや壊獣、バージェストマの登場である。Kozmoはそのパワーから瞬く間に環境を支配し、壊獣は今日でもサイドデッキで見かけるほどのものだった。壊獣でシャドールにとって嬉しかったのは海亀壊獣ガメシエルだろう。待望の汎用水属性枠であり、アノマリリスをよし自然に出せるようになったのは大きい。よく見るコンボではなかったにせよ、超融合頼りでの採用にとどまっていたアノマリリスのための、デッキに普通に入れられる水属性というだけで嬉しかった。また、バージェストマ・ディノミスクスの存在も語るべきだろう。このカードは効果で手札を1枚捨て、表側表示のカードを除外できる罠カードである。効果で手札を捨てるためシャドールの効果を起動でき、なおかつシャドールにはない除外効果を持つという非常に優れたカードであった。総じてシャドールにとって嬉しいパックだったと言える。

2016年10月期 「最強」の顕現

 10月の規制はシャドールにとって嬉しいものであった。制限カードに指定されていた神の写し身との接触が緩和され、準制限だった墜ち影の蠢きが制限解除されたのだ。ネフィリムは禁止のままだったが、それでもシャドールの規制緩和の流れは喜ばしいものであった。規制されたものとしては【シンクロダーク】と【DD】があげられる。前者は先攻ハンデスとあまりに長時間の展開が問題視されたものだろう。規制を免れた環境デッキは数多く、そこまで手を加えたくないという意思を感じる改訂であった。

RATE 未だにガッチガチに規制されているあたりお察しである

 8日にはレイジング・テンペスト(RATE)が発売され、これまでの環境デッキが児戯に思えるような爆弾が投下された。十二獣、9期を象徴するデッキだ。十二獣はその安定性、雑な妨害性能、そしてほぼすべてのデッキに出張が可能なレベルの柔軟性を兼ね備えた最凶のテーマであり、登場から間もなく環境を一色に染め上げた。ある大会では出ているデッキのほぼすべてが何らかの形で十二獣が入っている状態となったほど「十二獣の入っていないものはデッキではない」なんて言われようもするくらいの混一色状態となった。シャドールにも十二獣は採用できた。特にシャドールが十二獣にとって強力だったわけでもないが、出張性能の高いデッキと出張受けの非常にいいデッキ同士なのだから当然混ざりえたのだ。シナジーを上げるとするならばシャドール側が召喚権を基本仕様しないので会局が無い場合モルモラットに召喚権を優先的に割くことができ、地属性である十二獣はシェキナーガの融合素材として使うことができた。また、ミドラーシュは十二獣単体で突破することが難しく、ドランシアを横に並べることができれば基本的に突破されることのない強固な布陣を作ることができた。
 十二獣だけではない。このパックにはシャドールに新たなる構築の可能性を示したカード、隣の芝刈りが入っていた。隣の芝刈りは相手より自分のデッキ枚数が多い場合、同じ枚数になるよう自分デッキを上から墓地に送ることのできるカードだ。これにより「基本40枚に収める」という常識が一気に覆り、60枚構築のデッキを使用する大きな理由ができた。これまでテーマカードの枚数を抑えてでも40枚に抑えていたシャドールにとって、シャドールを好きなだけ詰め込んで一気に墓地に叩き落すという戦術は鮮烈で痛快なものであった。芝刈りといえばインフェルノイドのほうが印象の強い人も多いが、シャドールにとっても2024年現在で制限カードになろうとも使用できる強力な相棒となったのだった。
 さらに言えばこのパック、久々のシャドール新規が収録されていた。魂源への影劫回帰は自分の手札のシャドールを墓地に送りつつ、場のシャドールの打点を上げることのできる通常罠である。エンドフェイズに対象のモンスターが裏側表示になるため、リバース効果を使いまわすこともできる設計だ。打点の上昇は攻撃力が決して高くないミドラーシュの保護に有用である。であるのだが、肝心の上昇が割とショボく、手札にシャドールがいないといけない制限が足を引っ張る。どうせならデッキから送らせてほしかったものである。シャドールを環境に戻すパワーは到底なかったと言わざるを得ない。

サンプル十二獣シャドールデッキ。この後さらに十二獣Xモンスターが増えることでさらに十二獣濃度が高まっていくこととなる。
SPFE 融合召喚に大きな強化が入り、シャドールにとっては2024年現在でも強力な相棒として活躍するカードたちが収録された神パックである。

 そんな十二獣環境の中11月12日にブースターSPーフュージョン・エンフォーサーズー(SPFE)が発売され、シャドールにとって大きな変換点が訪れることとなる。召喚獣の登場だ。召喚師アレイスターによる召喚魔術のサーチと召喚魔術によるアレイスターの回収を毎ターン行いつつ融合をしていくこのテーマはアレイスター+O属性モンスターという融合条件のモンスターで構成されており、シャドールと非常に似たものとなっている。特に光属性枠の召喚獣メルカバーは手札コストこそ必要だが万能無効+除外という非常に強力な妨害を置ける召喚獣は次世代のシャドールといってもいい性能をしていた。アレイスターは召喚権を使ってしまうという弱点こそあったが、シャドールは元より召喚権を使わないデッキなのでかみ合いが良く、ネフィリムさえ帰ってくればより強固なシナジーを魅せることが期待された。
 同じく追加された捕食植物もすさまじかった。融合魔法なしで融合か可能になるサンデウ・キンジーと捕食植物+闇属性モンスターで融合できるキメラフレシアはシャドールにとってかなり有用なモンスターたちであった。特にキメラフレシアは除去と打点を兼ねるだけでなく、墓地に送られたときにタイムラグこそあれど「融合」または「フュージョン」魔法をサーチできるため、影依融合と神の写し身との接触にアクセスできた。総じてシャドールにとってはお祭りのようなパックであったと言っていいだろう。

DBLE 走って買いにいったのが懐かしい

 さらに26日にはDIMENTION BOX LIMITED EDITION(DBLE)が発売され、アニメ関連の様々なカードが追加された。シャドールにとって縁があったのは魔玩具補綴だろう。このカードはデッキからエッジインプモンスターと融合をサーチできるカードで、このカードはエッジインプ・チェーンからサーチが可能だ。つまりこのカードとチェーンを入れておくだけで融合へのアクセスが容易になるため、融合GSなどではお世話になるカードとなる。シャドールに直接入ることはそこまで多くないが、60枚構築にした場合融合魔法にアクセスしづらく、このカードの恩恵はかなり大きくなってくる。特に11期の強力な融合関連カードと併用するならばかなり使いやすく、シャドールの入った構築でしばしば見かけることとなるのだった。

2017年1月期 「魔の」9期の終わり

 2017年が始まり、最初の制限改訂が適用された。十二獣の直接的な規制はなく、環境は大きくは変わらない状態が続いた。シャドールにとってうれしかったのはマスマティシャンと神の写し身との接触の制限解除だろう。これによりシャドールは全盛期の力をだいぶ取り戻したこととなり、あとはネフィリムの帰還を待つのみとなった。

 14日には9期最後の通常弾たるマキシマム・クライシス(MACR)が登場し、集大成にふさわしいバケモノどもを産み落とすこととなった。2期以降更新されなかった「収録カードで規制のかかったカードの枚数記録」を破り、2022年までその座を明け渡すことがなかったほどである。
 この弾で収録されたテーマで言えば真竜を語らぬわけにはいかない。永続魔法・罠をリリースしてアドバンス召喚するカードが多く、特に強固な耐性とフリーチェーンの除外を併せ持つ真竜剣皇マスターPの存在は大きかった。真竜は後に5枚を禁止に(といっても1枚は真竜とほぼ関係ない理由であったが)、4枚を制限にされるほどのパワーを持ったデッキであり、特に十二獣との混成デッキとして環境の覇権を握るに至った。これにより環境は「十二獣+何か」の圧巻する混一色から【十二獣真竜】の支配する清一色の一強環境へとグレードアップしたのだった。
 さらにシャドールにとって不都合なことに、新たなる妖怪娘シリーズの灰流うららが追加された。今でも非常に高い採用率を誇る手札誘発の代表格はこの弾出身なのである。デッキに触る効果を大抵無効にできるこのカードはシャドールにとって大の天敵となった。シャドールの核たる影依融合がデッキ融合の条件を満たすかは効果解決時に決まるため、相手フィールドにEXモンスターがいるかどうかにかかわらず灰流うららによって無効化できてしまうのだ。これにより先攻で引いた影依融合は「ただシャドール名称がついているだけの融合」から「なんなら手札誘発に無効化される劣化融合」になってしまい、影依融合への信頼度が下がってしまうこととなってしまった。
 しかし悪いことだけではなかった。このパックにて捕食植物オフリス・スコーピオとダーリング・コブラ、通称「オフリスダーリン出張セット」が登場したのだ。前者は召喚・特殊召喚時にデッキから捕食植物を特殊召喚でき、後者は捕食植物モンスターの効果で特殊召喚されたときに融合・フュージョン魔法をサーチできる。闇属性モンスターが複数体並び、ランク3の準備を整えつつ、影依融合も神の写し身との接触もサーチできるこのコンボはシャドールにとってありがたいものだった。というか強すぎてオフリス・スコーピオが制限になってしまうほどの汎用性を誇ったのでシャドールに入るのも自然な流れであった。全体的にシャドールに直接新規は入らずとも、シャドールのデッキとしての在り方に大きく影響するパックだったと言えるだろう。

 その後もいくつか新カードは出るも、シャドールにとって関わりのあるものはなかった。9期最初の環境デッキであったシャドールは3年間にわたるインフレと主力カードの禁止により環境では見られなくなった。しかし融合召喚というシステムに一石を投じ、9期という時代に鮮烈なデビューを飾ったこのデッキは非常に人気が高く、ネフィリムが禁止になってから「ネフィリム返しておじさん」というミームを誕生させるまでになった。アニメARC‐Vの放送中融合は悪役としてスポットライトが当たり、結果として「融合」という損なシステムに多角的な強化が入った時代となったことは喜ばしく思う。

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