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はじめに 思いつきで「あ、アンソロ本作ろ」と思い始めたのが2023年5月のこと。 いつの間にやら夏は過ぎ蔓手毬、誰の作品で始める……と準備をすすめている今日この頃、皆さまにおかれましてはいかがお過ごしでしょうか。 アンソロ本を作る作る作ってる……とTwitter上で匂わせつづけておりましたが、結局のところ皆さまにとっては「誰が書いてんだよ」「名義借りておまえ一人で全部書いてんじゃねえだろうな」「エッチなのは駄目!!!死刑!!!」など色々と気になることが多いでしょうから
朝の参道に、なにか白い欠片が落ちていた。 かき氷の容器だろうか。 それとも誰かが落とした綿飴か。 昨晩はこの夏最後の縁日だった。 澄んだ秋風がすり抜けた。 それがふわりと舞い上がる。 目で追えば、天蓋を覆う鱗雲。 端に小さな穴―― 鱗が1枚欠けている。 そこに白い欠片はぴたりと嵌まり、鱗雲は高い空をゆったり泳ぎはじめた。 季節のなかでは初秋が一番好きです。一年中、秋の国に住みたい。 もう人生で何十回も秋を経験しているはずなのに、毎年この時期になると「嘘っ
夏の自由研究で博物館に来てみると、クラスのテルとララもいた。 「君たちも夏の自由研究?」 「いや」テルは首を振った。 「春の自由研究だよ」 「私は秋と冬で悩み中」と、ララ。 「良かった、みんな被ってなくて」 ここには大昔に絶滅した〈四季〉が展示されている。 目玉は完全復元された〈猛暑〉だが、なぜか僕以外には人気がない。 Web Novel Labo 様のトップページに掲載して頂きました。 (2022年8月末)
愛とはこういうものなんだ、と思った。 いま、この瞬間こそが世界の真理の只中であって、世の中にはこの歓びを感じることが一度もないまま骨になる人間も多い中、あたしは二十代で感じることができている。 愛とはすなわち幸せのかたちなのだろう、とも思った。抱きかかえるようにしても腕の隙間からぼたぼたと落ちてゆくその欠片を拾うことができないほどに、今のあたしは身体いっぱいに、愛、つまり幸せを感じている。 重ね合わせた肌から伝わる、自分ではない他人の体温。掌にのせた雪の結晶がじんわ
十二月を彩る赤や緑に混じって、カラフルな光が乾いた空気に溶け込んでいく。 地下街の広場に飾られたツリーは、毎年のようにデザインが変わる。ホワイトベースで統一した年もあれば、カラフルさを演出する年もある。今年は、様々な形を施したオーナメントが緑色のツリーに点在していて、懐かしさが喉元に込み上がる。子供の頃にはあんなにもクリスマスツリーにときめいたのはなぜだったのだろう。 クリスマスまであと十日。仕事の疲れを引きずったまま呆然とツリーを見上げる私の傍を、手を繋いだカップルが
こんばんは、戸画美角です。 #ショートショートnote杯 の『自由お題』をすべて読ませて頂いたので、その中から私がとくに気に入った作品をピックアップしたいと思います。 趣旨については、最初の記事などを読んでいただければと思いますが、一言でいうなら”面白い作品を埋もれさせたくない”という話ですね(そして多くの人に読んで欲しい)。 ◆ 関連リンクピックアップ企画の第1弾: しゃべるピアノ 1億円の低カロリー 株式会社リストラ アナログバイリンガル 違法の冷蔵庫 数学ギョ
こんにちは、戸画美角です。 というわけで第10弾もとい最後の『君に贈る火星の』からピックアップしてみたいと思います。 趣旨については、最初の記事を読んでいただければと思いますが、一言でいうなら”面白い作品を埋もれさせたくない”という話ですね。 これまでの作品は以下より。 まえがきそんなわけで、執筆時点(2021/10/23)での全作品を読ませていただきました。 いやはや、このお題はかなり作品が多かった気がします。 ”君に贈る”は人間ドラマの題材にピッタリですし、”
連日、夕雪のところに届くうれしいお知らせ。 noteさんから届く「うれしいお知らせ」だけじゃなくてね。 うれしい、楽しい、お知らせ。 こんなご時世だし、ニュース番組ではネガティブな話も耳にするけど、そんなの吹っ飛んで私の中に入ってこないほど、うれしいお知らせがいっぱい溢れていることに気づく。 このnoteでお話させていただくれおぽんさんが、この間、小説コンテストで受賞したばかりだ。 私も小説を書いているものとして、こういう話は本当にテンションが上がる。 「私も頑張