【コラム】ユーザー目線から見たアルゴランドの価格
多くの方がアルゴランド(ALGO)という仮想通貨を初めて耳にされたのはエルサドバドルがBTCを法定通貨にする際の基盤にアルゴランドチェーンを採用した、というお話しではないでしょうか。私もその一人です。
なるほど、アメリカ発で小さいなりにも1つの国家が認めるブロックチェーンらしい。そして、今では複数の南米、アフリカ、アジアなどの国家や中央銀行で開発があるというお話もあります。(先進国が取り組むのはこれらの国々で実証されてから逆輸入する形になるかと。)
これはチェーンが枝分かれするハードフォークの可能性がほぼ100%ない設計と、専用のプライベートチェーンの作りやすさ、各国の法令順守の姿勢、カーボンニュートラルを越えるカーボンネガティブという環境への配慮、対量子耐性などの面が評価されてのことです。
まぁ共同研究の段階での話なのでプレスリリースされるのはもっと先だと思いますが。(23年頃か?)
よくあるレイヤー1チェーンのガス代が安いよ!というだけではない他のチェーンにはないはっきりとした独自の強みがあり、実際に活用に向けても開発が進んでいる。これはさぞかし価格も上がるぞと思われるかもしれないですが、チャートを見ると全然そんなことないんですよね。
不思議な部分でもありますが、日々チェーンに触れていて情報集めているユーザー視点から考えてみると結構納得的な部分がありますので、これまでの価格動向とこれからのことをちょっと考察してみましょう。
①流通枚数の戦略
アルゴランドはブロックチェーンのトリレンマと呼ばれる「分散性」「スケーラビリティ」「セキュリティ」の3つともを満たす珍しいチェーンです。
例えばイーサリアムでは「分散性」と「セキュリティ」を取る代わりに「スケーラビリティ」を犠牲にしており、ガス代の問題が発生しています。(これを解決するためにレイヤー2チェーンである「MATIC」という別のチェーンを用意して解決を図ろうとしているが、チェーンをまたぐことに一定のリスクが存在する。)
一方ソラナでは「スケーラビリティ」に特化する代わりに、リップルほどではないですが「分散性」が置き去りにされていたりします。(一部のノードのパワーが強くなる瞬間が存在する。)
アルゴランドでは特定のノードが存在する必要がなく、ALGOを持っている全てのユーザーがノードになります。(なので分散化された状態では51%攻撃は実質不可である。)その為、多くの人に行き渡らせるために初期に流通枚数を増やす必要がありました。
実際(段階的に減少していきましたが)2022年2月まで、ALGOの所持者(ウォレットに入れてる人)はALGOを持ってるだけで報酬がもらえるという状態になっていました。
これは既存のアルゴランドユーザーがALGOの枚数を増やそうと思った時に、新規で購入する必要がなく、またアルゴランド自体がユースケースのない段階で誇大広告を打たない方針だったため新規のユーザーが入る余地が少なく、配布されたALGOが売りに回る状態にもなりました。
このnoteを書いてる22年4月時点ではこの流通枚数増加による価格の圧力はだいぶ解消されたように見えます。
②ALGOのユースケースの問題
先ほどちらっとユースケースがない段階でという話がありましたが、そちらはチェーンのユースケースの話であって、こちらはALGOの仮想通貨そのもののユースケースの問題です。
国家や金融インフラに採用されたからといって、それが直接ALGOのユースケースになるわけではない、というのがあります。これがGAS代の高いチェーンであれば、GAS代によるユースケース需要が増えますが、アルゴランドはGAS代の安い、ほとんど無料に近いチェーンです。
じゃあ他のチェーンのユースケースはと言うと同じようなものです。ただ、レイヤー1の通貨のユースケースは単純にその仮想通貨を支払って何かをするというだけでなく、チェーン上に他の資産(仮想通貨)が作られて分散型取引所で扱われることで増えたり、レンディングプラットフォームで貸し借りしたりというのも含まれます。
そして、このユースケースの度合をTVLという指標で見積もることができます。(Total Value Lokedといってどれだけの資産がロックされているかというもの。なんでこれで図れるかは難しい話に入ってくるので割愛。)
エルサドバドルで盛り上がっていた時期のピークですら当時は5000万ALGO分で当時のトータル流通枚数が60億ALGOほどあったことを考えると1%にも満たない数値でした。これは当時、分散型取引所の1つ目がようやく動き出したところであり、レンディングプラットフォームもなく、ステーキングでロックする必要もないという状況からこんな感じになっていました。
このTVLはそのチェーンが今過大評価されているのか過少評価されているのかを見る指標にもなっているのですが、ALGOのロックを必要としないアルゴランドにとって不利な指標です。他のレイヤー1チェーンであれば数10%はノードにステーキングする形でロックされています。アルゴランドもこのロックの性質に近い(ノードに預ける形でロックは行わないけどウォレット内に自主ロックする必要がある)ガバナンス投票への参加は約40億ALGOとTVLのデータの集め方が少し違えば一気に過小評価になる数値です。まぁ残念ながらTVLには反映されないのですが。
加えて、当時はアルゴランドチェーンで一番有名な通貨は何?と聞かれるとYieldlyという他のチェーンと比べるとあんまり大きくないプロジェクト(しかもチームに若干問題あり)しか答えようになかったのですが、2022年以降はVC(ベンチャーキャピタル)も力を入れている大型のプロジェクトも次々とローンチされてきたため、それとともにTVLは高くなり続けています。
これらのユースケース問題はだいぶ改善していきているなと感じます。
③開発者が少ない問題
アルゴランドは優秀な技術者が外部から入ってくるより、人を育てることに重点を置いたチェーンでもあります。
技術者が他チェーンから流入してくると価格に対して非常に大きな動きをするのですが、あんまりこれがありません。
これはアルゴランドが引き抜きやこの手のプロモーションにお金をかけてないというところです。
それよりも、大学や学生団体などの若い世代へのアプローチや、まだブロックチェーンには触っていないけど関連する分野(ドローンレーシングなど)に対してアプローチを行い、次世代開発者の育成に取り組んでいます。
BtoB戦略でいくのであればチェーンの開発者が突出した少数いるよりも、多くの開発者がいる方が好ましいですからオープンソースでのアプローチとしては間違ってはいません。
こちらに関しては現在進行中ではありますが、徐々にアルゴランド上で開発を行うプロジェクトが増えており、現在実稼働しているのは200程度しかありませんが、まだ表に出ていないプロジェクトは2000を越えるようです。
特に本来仮想通貨がやろうとしてた、銀行が持てない人でも金融アクセスすることができる、という考えの対象者層である南米やアフリカに強く、そちらで若い技術者が育ってきているので、環境が整いつつあります。
また、技術者と同じくインフルエンサーもかなり不足しています。(こういうnote、実はそういう方が情報を集めやすいように書いてる部分もあります。)色々な通貨の情報集めてる人にとっては分かりやすさがない分確かに難しいだろうなと思います。
こちらに関しては2022年の動きを見ていると実ユースケースが出てきたのもあり、だいぶプロモーション面に寛容になってきてる印象を受けますのでこれからどんどん露出が増えてくるのではないでしょうか。
④BtoCにあまり力をいれていない
アルゴランド(本体)は皆さんがよく関わるDefiとかNFTとかにそこまで積極的ではなく、国家インフラなど一般人があまり直接関わることがないようなところに力を入れています。
株なんかもそうなんですが、あんまり消費者と直接関わりがないところって一般投資家は買いづらいんですよね。株に関しては長い歴史があるので一般投資家でも目利きできる人がたくさんいますが、仮想通貨に関しては…。特にATH(最高値の更新)をするような状況においてはそんな一般投資家の存在が大事になってきます。だから、良くわからないから盛り上がりづらい。
実際情報1つとっても日頃から触ってないユーザーだとやってることの情報を、時価総額に対してアルゴランドの情報はめちゃくちゃ集めづらいです。(多分触ってるユーザーでも集めづらい。)
しかもBtoBと言っても仕事やってる相手は国家なり中央銀行なりの規制機関ですから機密情報もたくさんあるわけで、ものができるまであんまり情報があがってこなく、インフルエンサーも情報を集めづらいでしょう。
これ自体は悪いことではなく、ウォルマートやAmazonとかのBtoC企業ではなくSales forceのようなBtoB企業になろうというものですから、この地位が確立できたら他が入る余地がなくなるためとても安定したものになります。
特に様々な国の規制当局と一緒にコミュニケーション取りながら開発を進めてるのはアルゴランドくらいではないでしょうか。この辺規制当局の総本山であるアメリカで作られたチェーンなだけはありますね。
ただ、時間がかかるんだな、これが。
⑤アルゴランドを一番魅力的に思う層を取り込めていない
皆さんアルゴランドがエルサドバドルのニュース以外でなんとなく聞いたことがあるのは環境に優しいグリーンチェーンだ、というところではないでしょうか。
実際ブロックのコンセンサス(承認)時に電力を使用しないため、またアルゴランド本体だけでなくオンチェーンしている様々なプロジェクトが積極的に植林へのアプローチなどを行っているのもあり、超グリーンチェーンであるのは間違いのないことです。
であるならば、環境団体であったり、環境を気にする必要のある規模の企業であったりから受け入れられるものでありますが、オンチェーンしてるプロジェクト開発者の話とか聞いていても結構この辺の組織がまだブロックチェーン=BTC=環境に悪いというネガティブイメージを持っている人が多く、ブロックチェーンを使っていないというのがあります。
環境団体に関しては繋がりが出来つつありますが、その繋がりも環境団体がブロックチェーンを使って何かするというわけではなく環境団体に寄付したりパートナー組んで支援したりというアルゴランドが与える側であるため、これが現在直接ユースケースにつながってるわけではないというところがあります。(ただ、イメージ戦略であったりプロモーションの一環でもあるのでそこに使うことが悪いと言ってるわけではないです。実際グリーンチェーンの地位が強固なものになっており、その方面からアルゴランドの使用を決めてる団体もある。)
今EUが電力消費の大きなPoWタイプの規制を入れようと躍起になっていますが、これはアルゴランドにとっては追い風です。
ブロックチェーン全体としてではなく、チェーンごとの良し悪しで判断されるようになってくると、こういう地道な活動の種が芽吹いてくるのではないかと思います。(後、非営利的である活動が多い分、国内外問わずユーザーの性格が良いのも魅力の一つですよ。)
⑥オンチェーンしているプロジェクト関連で色々あった
こちらは最近の、2022年の第一四半期(1~3月)に立て続けにあったものですが、当時唯一の分散型取引所であったtinymanがハッキングされてアルゴランド上で起きてたバブルに半月ほど取引ができなくなるという冷や水をかぶせたり、Yieldlyと呼ばれるアルゴランド上の有名プロジェクトがステーキングプールで流出をやらかしたり、検証済み認定を貰っていたプロジェクト2つほどが詐欺行為を働いて高跳びしたり、検証は貰っていなかったもののアルゴランド内で一瞬時価総額1位までいったプロジェクトが詐欺行為を働いたりと魔界の名に恥じない攻防が行われていました。
仮想通貨全体の状況より年始からのパフォーマンスが悪かったのはこの辺りが原因です。(魔界投資家の心理の悪化はもちろん、流出したALGOは売りに回るため。)
また、アルゴランドチェーン上の資産はまだ一般の取引所ではサポートされておらず、上場できないのがネックになっています。アルゴランドチェーン上で発行された仮想通貨を入手するためには必ずALGOを所持する必要があり、それはつまりアルゴランドユーザーしか参加できない場でもあります。
外部からお金が入ってこないと内需だけになりますから限界がありますよね。
外部取引所に上場するような大型のプロジェクトの動きを考えると、この辺りの対応は23年頃になるのではないかと思います。そんなにすぐというわけではなさそう。
総論
価格に関してはおおよそこの辺りで説明できたのではないかと思います。特に初期の下落や21年秋頃の価格を維持できなかったのはなんとなく納得いったのではないでしょうか。
価格の上昇要因としては
・各国が実証研究している分の内容が表に出てくる
・TVLが改善される
・一般の取引所でアルゴランドチェーン上の資産がやり取り可能になる
・大型プロジェクトの数が増える
・育てた開発者が世に出てくるようになる
・今までブロックチェーンを使っていなかった団体が各チェーン個別の情報を集め始める
・情報を発信するインフルエンサーが増える
・仮想通貨のトレンドとしてDAOに注目が集まる(アルゴランドはDAOを代表するチェーンの1つ)
・ブロックチェーンの生き残りの選別が始まる
この辺りに注目しておくと良いのではないかと思います。
独自の路線で確固たる地位を築いているのでチェーンとして下火になることはなくむしろ盛り上がってくるけど、水面下で動きすぎてるのですぐに上がるというものでもないというのが現状の見方です。ただ、それが表に出てきた時はすごいぞ、と。
私は22年の上半期で盛り上がることはあんまりないかなと思います。(アルゴランド自体の状況もそうですが、仮想通貨市場全体として上半期はちょっと…。)22年の下半期頃から23年にかけて盛り上がりを見せてくるのではないかと。
こういうどこかのタイミングで堅実に跳ねていきそうなものは、積立していくのが一番ですね。(残念ながら日本円からの積立は難しいですが…。)
もし、最新の情報を仕入れるのであればアルゴランドジャパンのDiscordにアクセス頂くと、私もおりますので色々お話できると思いますからそちらもご活用ください。