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死ぬほど何かに没頭したくなる 【小説】喜嶋先生の静かな世界

これは昨日私が書店で一目惚れした本です。
元々違う本を買いに書店に行ったのですが、本自体が醸し出す雰囲気に惹かれ、気づけばこの本を手に取っていました。

今回は、私が一目惚れしたこの本の魅力をお伝えします。

1.あらすじ

 これは理系の大学生である主人公が、卒業論文のために配属された喜嶋研究室との出会いを通して人生の転換を迎える話です。主に喜嶋先生と出会ってからの主人公の大学・大学院生活が日記のように描かれています。
 主人公が研究に打ち込む姿が主に書かれているのですが、それだけでなく恋愛や主人公の周りの人間模様なども織り込まれており面白いです。また、最後には思いがけない展開もありました。

2.魅力

①登場人物の研究に向き合う姿

 主人公や他の登場人物が自身の使命である研究に向き合うのに、「周りによく思われたい」、「賞賛を得たい」といった欲望はありません。ただ純粋な気持ちで目の前の研究に没頭しています。

 やっている最中には、そんなことはどうでも良くて、ただ目の前にある壁を登りたい、という気持ちしかない。登り切ったところに何があるのか、その壁がどれほど高いのか、などといったことは登っているときには見えにくい。登る行為、登る楽しさとは無関係なのだ。これは明らかに、研究における「陶酔」というものだろう。
pp.110 

 このような研究を行う上で困難に直面しても逃げることなく向き合い続ける主人公たちの姿勢に、私は心を打たれました。なぜかというと、私自身今までの人生を振り返ってここまで物事にまっすぐに向き合った経験がなかったからです。
 しかしこの小説で、主人公が研究と向き合う様子や成長していく様子を見て、私も本気で物事に取り組みたいと考えました。

②登場人物の恋愛に対する姿勢

 この小説に登場する人物は全員、恋愛においても純粋です。彼らは少し変わり者かもしれませんが、恋愛においても真面目でまっすぐに向き合っています。私はそんな彼らそれぞれの恋愛が魅力的に感じました。

「私ね、ずっと貴方のことを見てきたの、ずっと、この四年間だよ」そう言うと、彼女はやっとフォークに巻きつき疲れたパスタを口にした。
pp.140
「何?プロポーズ?ああ、そうだな、まあ、提案したわけだから……。うん、間違いではないか」
 プロポーズという単語は、新しい解析モデルか計算方法を提案するときにしか、先生は使わないのだろう。
pp.336

研究だけでなく、恋愛にも真摯に向き合う姿が魅了的です。

③独特な言葉の使いまわし

 最後3つ目に、この本に登場する印象に残った言葉の使いまわしを紹介します。
 この本を読んでいて気づいたのですが、「プレッシャ」「メンバ」「ジェンダ」、「ラッキィ」「ウイスキィ」というように、一般的に使用されている言葉が独特な使われ方をしていました。
 「プレッシャ」「メンバ」「ジェンダ」のように語尾が母音の「ア」で終わるものは、本来後ろに付けられる伸ばし棒が省略されていました。また、「ラッキィ」「ウイスキィ」のように語尾が「イ」で終わるものは、後ろの伸ばし棒が小文字の「ィ」に置き換えられていました。
 この言葉遣いによって、登場人物の個性がより強調され、奥ゆかしさが生まれていると感じました。


3.最後に 

やりたいことを後回しにしてただ何となく毎日が過ぎていく、
そんな生き方をしていませんか?
私は、今まで何となく日々を過ごしていました。
この本では、自分の使命である研究に真摯に向き合い、没頭する主人公たちの姿が描かれています。私は、彼らを社会全体の上澄み液のような存在だと感じました。恋愛に関しても主人公たちは駆け引きなどせず純粋な気持ちで向き合っています。
そんな彼らの純粋な姿に、きっと良い刺激を受けるはずです。

私も彼らのように純粋な気持ちで物事に向き合いたいです。

最後までお読みいただきありがとうございます。
是非、この本を読んでみてください。

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