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#ネタバレ 映画 「人生の特等席」

「人生の特等席」
コンピューターも変化球が苦手である
2012-12-05 11:23byさくらんぼ

( 引用している他の作品も含め、私のレビューはすべて「ネタバレ」のつもりでお読みください。 )

映画「ダーティーハリーで、キャラハン刑事が、女性を追いかける変質者を撃ったことを所長からとがめられて、こんなセリフで反論しました。「路地で裸の男がナイフを持って、女性を追いかけてたんです。目の色変えてね。赤十字の募金を集めてるとも思えないでしょう」。これには所長もコンピューターも納得ですね。

でも、映画「人生の特等席」では、さらに難易度の高い、こんなエピソードが挿入されていました。主人公のガスと一人娘のミッキーに関するものです。

つぎの①~③の内、どの男が一番悪人でしょうか。

①娘のシャツに触る男。
②娘の腕をつかむ男。
③娘に強引にキスし、そのうえ自分は兄だと嘘もつく男。

映画を観た皆さんなら、前後の状況から、簡単に答えは分かるはずです。正解は①ですね。でも、もしコンピューターに尋ねたとしたら、きっと③だと答えるでしょう。コンピューター君なら③の男をマグナム44で撃ちかねない。コンピューターは変化球が苦手なのです(たぶん)。

誰もがコンピューターを使う時代には常識的なことで、あらためて言うほどの事ではありませんが、コンピューターは使い方を誤ると、とんでもない回答を出してくるのです。ある意味「おバカ」な存在。さらに直感的判断も苦手です。このあいだ映画「ステルス」を観たら、人間とコンピューターの違いについて「人間には直感、感情、倫理的思考がある」というセリフも出てきましたし。

そのあたりをこの作品でも語っていたようです。

映画の後半、ミッキーが部屋で片付けものをしていたとき、キャッチ・ボールの音が外から聞こえてきて、ハッとして表に飛び出すシーンがありました。膨大な彼女のベースボール知識、経験から、音で何かを感じたのですね。

この映画「人生の特等席」は、先に公開された映画「マネーボール」に対抗して作られたのではないかと、勘ぐってしまいますが、私はコンピューターと人間の能力は、どちらかに勝敗をつけるのではなく、長所を生かして棲み分けることが可能なのだと思います。

映画の後半では、コンピューターと人で、それぞれスカウトした両選手対決が良かったですね。あの出会いを見た瞬間、観客の心の中には、いろいろな感情、考えが沸き起こったと思います。それは、コンピューター君よりもはるかに多彩な情報なのだと思いますよ。

そのほかにも、ガスやミッキーが慰留を申しだされて「考えとく・・・」と答えた辺り、ミッキーに至っては、その場でケータイをゴミ箱に捨てました。人間様なら、あのシーンだけで、二人ともが慰留願いを拒否した結末が連想できますが、コンピューター君には難問でしょうし、ラストでガスが一人バスで帰るシーンの意味も理解できないでしょう。

この映画は、そんなフェイントが多数仕掛けられた、コンピューター泣かせのシナリオだったのかもしれません。

よくできた邦画の様な、このラストの清々しさで★★★★☆を入れます。




(  最後までお読みいただき、ありがとうございました。

更新されたときは「今週までのパレット」でお知らせします。)


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