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#ネタバレ 映画「猿の惑星/創世記〈ジェネシス〉」

「猿の惑星/創世記〈ジェネシス〉」
2011年作品
子もいつか独立する
2014/10/1 6:32 by さくらんぼ

( 引用している他の作品も含め、私のレビューはすべて「ネタバレ」のつもりでお読みください。 )

大人になったら、ちょっと無理をしても独立した方が良いのです。

たとえば大学へ進学した機会に、20歳になった、就職した機会などに…。

なぜなら、ひとつ屋根の下に、主(あるじ)は一人だけでよいからです。

成長した子供には、あんなに怖かった雷オヤジも、いつのまにか年老いて、頼りなく見えてきます。いつのまにか子と親が逆転して、子が親に小言を言うようにもなるのです。

でも親には親のプライドがあるからトラブルになる。そうすると旬を過ぎた家庭が腐っていく。そうなる前に独立するのです。美しい思い出だけを残して巣立ちするのです。これも家族円満の知恵のひとつ。

今は載っていませんが、昔の戸籍には、誰それ(子)が家督相続をし、誰それ(父)が隠居をしたと、届け出により書いてありました。戸籍に刻印することで、結婚式を挙げるがごとく、スムースに相続が進行できたのかもしれません。

そんな「老いては子に従え」の為のレールが在ったのです。

だから親は、そのレールに乗って退いた。

でも今、レールはありません。

うっかり者の親がいつまでも主のつもりでいると(子に首輪を着けようとすると)、いつの間にか成長した子供と摩擦を生みます。

住み分けた方が良いのです。

この映画「映画「猿の惑星/創世記〈ジェネシス〉」では、人間が越えてはならない一線を越え、人間並みの頭脳のあるシーザー(チンパンジー)という子を作ってしまった悲劇が描かれています。

シーザーはだんだんと成長します。

成長するにつれて、人間界では独り立ちできない苛立ちを感じるようになるのです。そんなデリケートな反抗期に、首輪なんてとんでもありません。

映画のラスト。

人間は都会に、チンパンジーは森に、そう住み分けることになりました。

その森は、さながら国のようです。

国が出来れば、国境ができ、国境を侵せば、戦争になります。

今や、クマだって、里山でバトルをするのですから。

そうやって、やがて、あの有名な、自由の女神のシーンへと続くのでしょう。

この映画は、家族の問題、種による差別の問題(人種差別も含む)、を描いていましたが、それは、心を持つロボット問題へも繋がっていくはずです。

ある種の薬を投与して、チンパンジーを賢くすることよりも、コンピューターの発達で、人間を超える賢いロボットが出来る可能性の方が、たぶん現実味があります。

映画「ブレードランナー」シリーズのレプリカントたちも、あのチンパンジーと同じ屈辱感を味わっていたことでしょう。

映画「映画「猿の惑星/創世記〈ジェネシス〉」は、CGをフル活用したチンパンジーたちの生き生きとした動きが素晴らしい映画でした。そして、主役のシーザーの威厳に満ちた表情と姿勢が、彼の魂の気高さを物語っていました。着ぐるみでは表現困難な演技でした。

彼はシーザーと言う名前が表現するとおり、チンパンジー帝国のリーダーとして、頑として人間と戦う男だったのです。

人間たちの中には、一流大学卒だとか、地位や名声が高いとか、たんに金持ちだとか、そんなことを無意識に鼻にかけ、部下でもない他人にまで首輪を着けようとする人がいます。

猿にも劣る…いや、チンパンジーは猿ではないそうですね。知りませんでした。

★★★★★

追記 ( 12月のマグリッド ) 
2015/12/7 11:22 by さくらんぼ

チェーン店のコーヒーショップの店員さんの中には、何年通っても一見さん(いちげんさん)を見るような目をして接客する人がいます。最近はお役所でも、もう少し気が利いているのに。そんなとき常連さんは心に少しだけかすり傷を負って帰宅するのです。

先日、コーヒーショップからの帰り道のこと、私はたそがれ時の大通りを南へ歩いていました。

通りのすぐ脇(西側)には大きなビルがあり、沈みかけた西日をさえぎっていて、そこだけ日陰になっています。

その冷ややかな空間には、大きな街路樹がアーモンドの様な形をして一本そびえていました。

道行くクルマもライトを点灯し始めました。道路工事の点滅ライトや、遠くにお店の窓から漏れてくる明りも見えます。

そんな時、なにげなく空を見上げると、黒々とした樹木の向こうに、まだ青い空と白い雲が目に入ったのです。

空はまだ昼間の余韻を残していました。

でも地上は夜の気配をまとい始めています。

「あっ、これは…マグリッド…」。

いつのまにかベルギー出身、シュールレアリスムの巨匠、ルネ・マグリッド描いた名画「光の帝国」の中に迷い込んでいたのです。

ベルギーは白夜のある国なのですね。「光の帝国」は、そんな淡い光の中でインスピレーションを育んで描いた絵なのでしょう。

今、12月の日本は一年で最も日の短い季節です。



( 最後までお読みいただき、ありがとうございました。

更新されたときは「今週までのパレット」でお知らせします。)


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