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#ネタバレ 映画「ニューヨーク 眺めのいい部屋売ります」

「ニューヨーク 眺めのいい部屋売ります」
2014年作品
アーティストは最強の兵士となった
2016/2/11 10:17 by さくらんぼ

( 引用している他の作品も含め、私のレビューはすべて「ネタバレ」のつもりでお読みください。 )

大晦日は何かと落ち着かぬもの。台風が接近しているときも同じ。私は台風の時に好きな人に電話をしてふられたことがあります。彼女は台風と私を混同したのだと、私は今でも信じています。

人は無意識にも周囲の影響を受けます。人間関係も窓から見える景色も同じ。だから何を見つめるかが大切。

その点アーティストは感性が鋭く、周囲にごまかさずに本物を見つけられる点では優秀だと思います。

この映画「ニューヨーク 眺めのいい部屋売ります」は、元兵士の画家が、ニューヨークで戦った戦争映画なのです。その昔、戦場で人間ドラマを描いた「コンバット」という人気TVドラマがありましたが、この映画は人間ドラマで戦場を描いていました。

その小粋さを高評価します。

★★★★☆

追記 ( 不思議な少女 ) 
2016/2/11 14:43 by さくらんぼ

ある日、主人公・アレックスは妻・ルースから「引っ越しましょう」と強く求められました。

そして二人は自宅を売ることと、新居を買うことを同時進行で始めてしまったのです。にわかに騒々しくなる一家の周辺と、押し寄せる二倍のプレッシャー。

(2023.10.11追記) 今思うと、初めての私の引っ越しも、似たような状況でした。

でも、ルースが引っ越したかったのは、実は夫のためだったのです。本当はルース自身は今の家が好きでした。馬車馬に引っ越しの準備をする姿とは裏腹に、本音は引っ越したくなかったのです。

それにアレックスが気づいたのは、自宅の内覧会の時に来ていた少女と話したからでした。少女はアレックスの家が好きでした。

たぶん、あの少女はルースのインナーチャイルド(あるいは本心)を可視化したものです。

あのときベッドルームでは少女の母が寝心地を確かめていました。応対したのはルースです。あれは“ルースの深層心理へ降りて行く儀式”みたいなシーンでした。そして3人ともがルースなのです。だから、アレックスが少女を気にいってしまい「家が決まったらお茶に来てほしい」と誘ったのは当然なのです。

アーティストでありルースを愛していたアレックスは、若き日に、(失礼ながら)あまり美人では無いルースの中にある“本物”を見つけ、結婚の決心をしたのでした。

同様に、今回も、引っ越したがっている様に見えたルースの中にある“本心”を、アレックス自身も自覚せぬうちに見つけ、まるでアレックス自身のワガママの様な格好になりましたが、急きょ引っ越しを取りやめたのでした。

兵士アレックスが守ったのは、妻・ルースのアレックスに対する愛であり、アレックスが戦ったのは、騒々しい内覧会の客たちや、生き馬の目を抜く不動産エージェントたち、そしてTVのなか(これも窓)で事件を起こし、世の中に不安の空気をまき散らし、家を買おうとしている人たちの心に微妙なバイアスを与えている犯罪者たちでした。

そんな中、アレックスはアーティストの感性で真実を見抜き、一人で妻を守ったのでした。腕力が強いとか、射撃が上手いとかではなく。


(  最後までお読みいただき、ありがとうございました。

更新されたときは「今週までのパレット」でお知らせします。)


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