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#ネタバレ 映画「愛の世界 山猫とみの話」

2024.3.25
映画「ゴジラ −1.0」のヒーロー・ヒロインを連想する
1943年作品

( 引用している他の作品も含め、私のレビューはすべて「ネタバレ」のつもりでお読みください。 )

だんだんと古い日本映画が好きになりました。作風も斬新を競う現代作より、古いものの方が落ち着きますし、中年以降の活躍しか知らなかった俳優さんの子役時代や、青年時代を観る事が出来て、その驚きに、自分も若返ったかのような喜びを感じるのです。さらに生活の様子からは(同じでなくとも近い時代を生きて来たという事で)郷愁も感じます。

ところで、この映画「愛の世界 山猫とみの話」は、幼い頃に親を亡くして曲馬団に引き取られ、冷たい扱いを受けて、人間不信になった少女の物語です。どこか映画「DOGMAN ドッグマン」を連想しますね。

ヒロイン・小田切とみ(高峰秀子さん)は少年審判所にいましたが、 更生施設の山田先生(里見藍子さん)が引き取ります。

やがて小田切とみは山田先生を母のように思い始めますが、それは、まだ未婚の山田先生に、先生を超えた、母のような覚悟を強いる事でした。

機会があれば、一度ご覧になるのも良いと思います。

追記 2024.3.25 ( 戦意高揚映画か )

第二次世界大戦は1941年から1945年でした。映画が作られたのは1943年なので戦争の真っただ中です。

映画に出て来る女子の更生施設では、兵隊さんが使う身の回りの道具を作っていました。ある日、女子たちが喧嘩し、その道具を粗末に扱いますが、施設長に叱られます。女子たちには日本が戦争中だという意識が希薄のようでした。内地の女子たちも、戦地にいる兵隊さんと一丸にならなければいけないのです。

この事は、まだ未婚の山田先生が母の自覚を持たなければならないのと相似形なのでしょう。

そして、(もちろんイジメはいけませんが、人間不信の小田切とみは、だれにも挨拶もせず、終始無言で、仲間と労働もしないので、イジメられても仕方ない面もありますが)同級生からのイジメに耐えられず、あるいは山田先生の苦悩を知り、母の重荷を背わせたくなくて逃げ出した小田切とみは、山の中の、見知らぬ家に逃げ込みました。

そこには弟のような二人の男子がいて、母は亡くなっており、猟師の父は獲物を求めて何日も帰らないのです。最初、小田切とみは腹が減って食い物を漁ろうとしましたが、(さすがに、この状況では男子を無視するわけにもいかず)二人の男子の母のような役目をするようになります。比較すれば、施設での小田切とみは甘えていたのが分かります。

でも、何日か後には米もなくなったので、小田切とみは人里へ降りて行き、二人の男子のためにも食いものを盗むのです。それで、手に武器を持った村人や、駐在さんから追いかけられるようになります。

最初は一人で逃げようとしますが、二人の男子は「置いてかないで」とすがります。仕方なく、三人で逃げます。

やがて、二人の男子の父が帰ってきて、誘拐事件と誤解し、村人や駐在さんと一緒に、猟銃を持って追いかけます。

映画「ゴジラ-1.0」にも出てきましたが、山田先生は未婚なのに母の覚悟を強いられましたし、小田切とみは他人である二人の男子を食わせるために母になり、男子には内緒で泥棒に入り、猟銃を持つ者に追いかけられます。

ある意味、縮小された戦争の世界ですね。

国は、国民を食わせるために、時には戦争もしなければならない。周囲と協調しない国民は甘えている。その根性を叩き直してやる。

これは、そんなお話だったのかもしれませんね。

追記Ⅱ 2024.3.26 ( 新人は自分の甘えに気づかぬこともある )

余談ですが、私が就職したての頃は、先輩から厳しく指導され、ときにはイジメられたとさえ思っていました。

あのときは先輩への反発心もありました。しかし、もし新人の私がリーダーになっても、係を回すことは出来なかったでしょう。未熟な私は自分の事を棚に上げ、自分勝手な思いにふけっていただけだったのです。これは甘えだったと思います。私は一日も早くリーダーになれるぐらいの力をつける必要がありました。その為の叱咤激励を先輩はしてくれていたわけです。

TVのお仕事ドラマなどには、先輩上司と対立する部下が出てきます。その部下も、今すぐ係を会社を回せるだけの実力があるならともかく、そうでないのなら、その反発は、甘えである場合もあるように思います。



(  最後までお読みいただき、ありがとうございました。
更新されたときは「今週までのパレット」でお知らせします。)


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