見出し画像

#ネタバレ 映画 「7番房の奇跡」

「7番房の奇跡」
邪心があると聖人が見えない
2014-03-02 14:49byさくらんぼ

( 引用している他の作品も含め、私のレビューはすべて「ネタバレ」のつもりでお読みください。 )

こんな話を聞きました。彼は公園で、偶然、遠くに若い女性らしきものが倒れているのを、発見したのです。

あれはなんだ?と思ってフリーズしていると、中年女性が彼女の側を通りがかり、先に声をかけたのだそうです。

それで、すぐに彼も駆けつけて、二人で苦しむ女性を介抱し、最後には事なきを得たのでした。

聞けば、彼女は何らかの発作で呼吸困難になり、倒れていたのでした。

でも、問題はその後です。家に帰ってから急に怖くなったのだそうです。

最初に駆けつけたのが中年女性だったから良いけれど、もし時間差で、男の自分が一番だったら、後から駆けつけた中年女性から、なんだあれはと、婦女暴行犯かしらと、それこそ誤解されて、警察に通報される可能性もあったからです。

もちろん、倒れていた女性が最後には状況説明してくれて誤解は解けるでしょうが、もしも、彼女が呼吸困難から心臓発作でも起こして死亡したら最悪の事態になりかねません。誰が無実を証明てくれるのでしょう。

さらに、彼は救急訓練を受け、心臓マッサージやマウスtoマウスでの呼吸法を学んでいるので、非常時には彼女に対して、それを行なう可能性もあります。学んだのに、それを行なわず、もし彼女が死んでしまったら、それこそ、一生悔恨を残しますからね。

こんな場合、正しく救命行為を行なって、相手が不幸にも死亡した場合には、救命者には責任は問われないので、安心してチャレンジして欲しい旨の話は聞いたことがあります。

しかし、今回、暴行行為と誤解されて、殺人罪を問われる危険性があるという盲点を、映画「7番房の奇跡」が新しく教えてくれました。

まとめると、彼は、もし運が悪いと、模範的な善行をしたのに、映画と同様、逆に変態あつかいされ、世論から袋叩きにあって、家族や親戚縁者・友人知人にも迷惑がかかり、世の中から抹殺されかねなかったのでした。

かつて映画「それでもボクはやってない」も怖かったですが、この映画「7番房の奇跡」も怖い。アリアリと怖すぎます。

映画「7番房の奇跡」の主人公は知恵遅れの中年男です。6歳の娘と同じぐらいしかありません。しかし、彼の心はとても純粋です。

つまり6歳の少年です。そんなわけで、この映画の主人公は善人どころか聖人に設定されています。しかし、周りの健常者が邪心を持っているので、それが見えないのです。そのため主人公は殺人犯の汚名を着せられ追い詰められていくのです。

最近、聴覚障害者を装った騒動があり、障害者=善人だという単純な思い込みはやめてほしい旨の声が、ネットにあがりました。確かにその通りでしょう。健常者に悪人がいるように、障害者にも悪人がいて当然なのです。紳士然とした車椅子の人が、盲人が、すべて善人であるとは限りません。また、ともすれば健常者が困惑するような言動をする知的障害者が当然に悪人であるはずもありません。

映画の主人公は善悪を理解していましたが、裁判で語られる死刑といういものを、どこまで理解していたのかは不明です。もし死刑を承知で娘の身代わりになったのなら、映画「タイタニック」で冷たい海の底へ沈んで行ったレオ様を思い出します。ああ、韓国も特攻精神を描いていたのかと、一瞬、そんな感慨にもふけったのでした。

充分怖くて、充分笑えて、しかし、なぜか泣けない映画でした。

★★★★☆


(  最後までお読みいただき、ありがとうございました。

更新されたときは「今週までのパレット」でお知らせします。)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?