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#ネタバレ 映画「SOMEWHERE」

「SOMEWHERE」
2010年作品
城には姫が必要である
2011/4/25 18:20 by さくらんぼ

( 引用している他の作品も含め、私のレビューはすべて「ネタバレ」のつもりでお読みください。 )

レア・メタルだとか触媒だとか、何かをフルに動かすためには、一つまみの別の要素も必要なようです。

ボクシングに「左を制する者は、世界を制する」という格言があるそうです。的確な左腕のジャブがあってこそ、右腕のパンチが威力倍増になるのです。

ジョニーが右腕(利き腕)で順調に稼ぐためには、左腕でボランティア(精神の触媒)にも似たことをしてバランスを保つ必要がありました。ジョニーの怪我をした左腕のギブスに愛娘のクレオが書き込みをしたのは、ジョニーの触媒はクレオだったという意味かもしれません。

Chateauと冠するホテルに泊まる王様待遇の大スターは、文字通り王様の暗喩でしょう。以前、邦画にも、ホテルのサービスを「妻の内助の功」に見立てた喜劇がありましたが、姫でなければならないのは、妻は尽くしてもくれる存在だからでしょうか。

王様は尽くしてくれる愛妻や家臣を持つだけでは幸せにはなれない。自身が本気で尽くす、そして、その事に無上の喜びを感じる存在も必要なのです。それが姫なのでしょう。

NHKでも『「江」ごう 姫たちの戦国』を放映中です。あちらの主題は知りませんが。ときどき「SOMEWHERE」にも似た、姫たちに癒やされる殿が出てくるので面白く観ています。

★★★★

追記 ( 最終兵器 姫 ) 
2011/4/27 21:13 by さくらんぼ

>王様は尽くしてくれる愛妻や家臣を持つだけでは幸せにはなれない。自身が本気で尽くす、そして、その事に無上の喜びを感じる存在も必要なのです。それが姫なのでしょう。

ご承知のとおりジョニーは11年ほど前までは結婚していました。それが、なぜ離婚したのかは知りませんが、ちょっと想像してみました。

もしかしたら、当時デビュー直前のジョニーが、出世の足手まといになるとして契約離婚をしたのかもしれません。前妻を「今後も生活の面倒は見る。そして出世したら迎えに来る」とか、上手く言いくるめて。

前妻もジョニーの出世を願ってましたから、しかたなくOKしました。しかし、それはジョニーの「妻を取るか、仕事を取るか」の究極の選択宣言でもあるので前妻としては面白くありません。一時的にしろ捨てられたことには違いありませんから。

前妻は産まれたばかりの娘を立派な姫に育てることで女の意地を見せます。

やがて月日は流れ、仕事も順調になり、同じ道を堂々巡りする様な退屈な気分になってきたジョニーから再婚への打診が届くようになりました。女には不自由していなくても、愛娘は他に変えがたい存在で、素直に同居したいと思いました。

しかし前妻にも意地があります。待ってましたとばかりジョニーに飛びつくことなど出来ません。なんだ、かんだと、気が変わった様な、まだ有る様な、ジョニーを翻ろうする態度を見せ続けていたのです。戻るなら自分を出来るだけ高く売らなければなりません。

そんな最中にジョニーが左腕を怪我する事故がありました。ちょっと凹むジョニー。前妻はこの時とばかりに最終兵器である姫を送り込んだのでした。

完全にやられてしまうジョニー。

帰りには、さらに「お母さんはいつも出かけて帰ってこない」などと哀しげに心をくすぐるセリフを吐いてくることも忘れませんでした。これも前妻と打合せどおりの演技でした。本当は前妻はどこにも行ってはいません。両親に育児放棄された痕跡を娘は背負っていません。姫は共犯です。

「SOMEWHERE」という意味深な映画のタイトルも本当はこの意味だったのかもしれません。

たまらなくなり前妻にTELで泣きを入れるジョニー。クールに「ボランティアでもしたら。あなたなら大丈夫よ」などと突っぱねる前妻。勝負はありました。

「SOMEWHERE」、ジョニーは前妻の元へ走っていくのでしょう。やはりTELではいけません。日本同様、かの国でも、こんな風に、姫は政略に使われるのでしょうか。

追記Ⅱ ( 007 姫 ) 
2011/4/28 15:24 by さくらんぼ

>たまらなくなり前妻にTELで泣きを入れるジョニー。クールに「ボランティアでもしたら。あなたなら大丈夫よ」などと突っぱねる前妻。勝負はありました。

それにしても、そろそろジョニーを許してあげたら、と思うのは男性目線だからでしょう。姫への特命はジョニーをメロメロにすることでしたが、姫に前妻は、さり気なくジョニーの身辺調査質問もしたことでしょう。「パパの家で、何か変わったこと、なかった? 知らない女の人とか…いなかった?」などと。

姫は前妻に言うでしょう。「パパはシャワーが壊れて、隣の家に借りに行ってた。それから、朝起きたら知らない女の人がいて、3人で一緒に朝食を食べたわ」。

これだけ聞けば前妻にはジョニーの女癖の悪さがすぐに分かると言うもの。前述のTELでのクールな態度がうなずけます。

監督はこの映画を男性目線で描いたと言っているようです。だからでしょう、前妻の心理描写はほとんど無く謎に包まれていますが、そうとうに微妙な段階に入っているような気がしてなりません。ジョニーの幸運を祈ります。


(  最後までお読みいただき、ありがとうございました。

更新されたときは「今週までのパレット」でお知らせします。)


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