#ネタバレ 映画 「沈まぬ太陽」
「沈まぬ太陽」
ハンターが獲物を決定する
2009-10-27 12:56byさくらんぼ
( 引用している他の作品も含め、私のレビューはすべて「ネタバレ」のつもりでお読みください。 )
スポーツ教室で洋弓の講座を受講しました。あのロビンフッドの弓ですね。人には皆、原始時代の狩猟本能が眠っているらしく、やってみると意外にハマル人が多いらしいのです。
ところで映画「沈まぬ太陽」の冒頭にも、主人公・恩地のハンティング・シーンが出てきます。ジャンボなゾウをライフルで撃つのです。それがジャンボ機の墜落事故と重ねて描かれます。
中盤には、獲物を狙うように接近した女性が、恩地と動物園で会うシーンが出てきます。そこには、この世でいちばん恐ろしい動物として人間が鏡に映る、あの有名な「人間の鏡」のシーンがありました。
そして映画のラストには、妻がパッキングした一眼レフカメラと共に、又、恩地がアフリカへ行き、安らぎを感じている姿が描かれます。たしか「矢のような夕陽が・・・」というセリフまでありました。
マサイ族の矢にしろ、ロビンフッドの矢にしろ、ライフルにしろ、カメラにしろ、獲物を決めるのはハンターなのです。獲物側に選択権はありません。
ひるがえって、文明社会でも権力はハンターの手中にあります。それは時に上司であり、役人であり、世論です。また、組合闘争も有利な条件を勝ち取るためのハンティングです。労組委員長の恩地は才能あるハンターでした。
さらに、それが神か悪魔かはともかく、運命を握るものがジャンボ機をハンティングしました。被害者は恩地など会社側に非難の矢を放ちました。
恩地にとって自分が優位なハンターでいられるアフリカが心休まる場所だったのでしょう。なにしろ「人間は、いちばん恐ろしい動物」なのですから。四国お遍路の終着駅にアフリカを推薦する手紙を書いた気持ちは分かるような気がしました。
どんな冷や飯を食わされようとも、決して自分の生き方の原理原則(獲物)を曲げなかった恩地(ハンター)。結果的にそれがアフリカという新天地を見つけることになりました。ここらあたりは人生の真実を描いていたと思います。「人生いたるところに青山あり」とかも、申しますから。
3時間半の大作ですが、退屈することなく観ることができました。途中に休憩があるのは、ありがたいことです。その時の中断映像もティー・ブレイクのシーンであり、中断字幕もセンスが良く満足でした。渡辺謙さんのオーラもすばらしく、観応えのある佳作でした。中途半端に2時間にまとめるより、これくらいの大作を今後も期待します。
★★★★★
( 最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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