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#ネタバレ 映画 「サイドウェイズ」

「サイドウェイズ」
過去は捨てるものではない
2009-11-14 22:01byさくらんぼ

( 引用している他の作品も含め、私のレビューはすべて「ネタバレ」のつもりでお読みください。 )

20年来の旧友の再会に恋路がからむ。とくれば、映画とは思えないのです。なぜなら、私も旧友との再会に恋路がからんだ、経験があるからです。もちろん詳細は別物語ですよ。でも、その経験との比較が映画を鑑賞する手助けになりました。

大介はミナと出会い、奥ゆかしい日本人女性の魅力を再発見したようでした。大介はもう、もとの大介ではないのです。恋多い彼でしたが、ミナとは本気のようでした。決まっていた婚約を破棄し、ミナとの結婚を考え始めているようでした。でも、そんな現在進行形の微妙な心の機微は、親友といえども説明せねば理解不能なのです。

大介は外国人の婚約者とは無理して波長を合わせている様なところも有り、愛ではなく、オーナーの娘という、逆玉の輿を受け入れた、といった感じもしなくはない、のでした。

それなのに親友たちの幼稚な正義感により、プライバシー侵害をされ、密告でミナとの恋路を破壊され、婚約者と結婚することになりましたが、結婚は婚約したという義務でするものではないので、あの結婚の行く末には離婚の文字がチラツク様な気がします。

道雄はどうでしょう。片思いの彼女である麻有子に、日本へ帰ろうと、喧嘩になるほど真剣にさそったのに、断られます。でも、麻有子は会社の上司から日本支店の責任者になることを勧められ、受けてしまうのでした。そして道雄に、自分が日本に帰ることになった顛末を、説明して、理解を求めることもせず、帰国するのです。

そうとは知らぬ道雄は、もう一度口説こうと、すでに空き家になった麻有子の家に向かうのです。道雄は麻有子が無断で帰国した顛末を知ったらどう思うのでしょうか。

「俺が、あれほど真剣に誘っても、頑として拒否したのに、会社の命令か、なんだか知らないが、俺に、ひとことの挨拶も無しに帰国したのか!おれは、まるでピエロだな」ぐらいに思うでしょう。この恋の行く末も暗雲がたれこめているのです。

この寒い映画はいったいなんなんだ、と思い、少しひいて観てみると。

映画の初め、わが国を代表する一台である高級車レクサスに乗って登場した彼らは、途中で知人の納屋にある古いアメ車?に乗り換えます。その車はもう使っておらず、知人には粗大ゴミ同様だったのです。でも、真っ赤で綺麗なオープンカーで、けっして錆だらけ、埃だらけの自動車ではありません。

でも大介は、旅の終りに、愛があるかどうかも疑問な結婚のため、嘘をつこうと、赤い車をワザと事故で壊し、さらに男二人で、もう潰れているバンパーに、これでもかと、大きな石を打ち付けるのです。「おれには、もう、これしかないんだ!」との大介のセリフには、残ったワインはこれ一本、的な、打算的な感じがしました。

今、日米の自動車産業の有様はご承知の通りです。米国人がこのシーンを見て何を思うかは、相手の身になって想像すれば容易に分かります。

そうすると、この日本人たちのグループが破滅に向かっているかもしれないシナリオが納得できるのでした。主題は「過去は捨てるものではない」といったところでしょうか。だから、大介も新しい恋は認められないのです。その主題そのものは傾聴に値するものでしょう。でも、裏側から眺めると、映画「スペル」ではないですが、呪いが・・・いや、そこまではやめておきます。


(  最後までお読みいただき、ありがとうございました。

更新されたときは「今週までのパレット」でお知らせします。)



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