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「4分33秒」は音楽家が作った「枯山水」か

2024.1.20

@ ジョン・ケージの「4分33秒」は、ある意味、音楽家が作った「枯山水」だと思います。

彼は無音の研究のために、無響室にも入ったと聞きます。しかし、コンサート会場は無響室ではありません。まったく反対に、響きを大切にした有響室なのです。

このことにより、彼が望むと望まざるとに関わらず、「4分33秒」は有響室の音楽となりました。

コンサート会場の無音を聴くには、無響室ではなく、コンサート会場が一番適しています。良いオーディオシステムでも、無音をそこまで再現できるかというと、できないとは言いませんが、大変に困難だと思います。

時間が止まったような静かな池にも、風や魚、虫などによって、ときに波紋が生まれます。

音も同じで、微音による、小さな空気の揺れが、コンサート会場では、三次元の波紋のようになって、長く漂っているのです。

コップに水を入れ、ガムシロップを上から注ぐと、完全に混ざりあうまでの間、透明な濃淡ができるように。

その波紋と、定位置で動かない演奏者、そして観客が一体になって生みだす緊張感。

それが、私には、枯山水の緊張感を連想させます。

@ 実は今日、まるで石造りの教会のような、とっても響きの良いホールで、少しクラシックを聴いてきました。

音楽が始まるまでの15分ぐらい、沢山の観客といっしょに待っていましたが、その環境音は、長く滞空し、まるで万華鏡のように、雄弁でした。

私も未体験ですが、「4分33秒」を語る場合、やはり、実際に「4分33秒」をライブ体験してからでないと、分からないことが多いのではないかと思いました。

「気」のボールに触れずに、その感触を語れないように。

@ 人体を覆う「気」は、皮膚から数十センチの厚さがあります。

ということは、コンサートや映画館などの密集ポイントでは、他人との「気」の一体化が起こっている可能性があります。

集合的無意識のホットスポット状態。

たしかビアスの「悪魔の辞典」では、音楽を「騒音」と読んでいましたが、「騒音」に邪魔されずに、心安らかに、「他人との一体感」を楽しめるのかもしれませんね。

「4分33秒」では。


( これは2018.5.12のパレット記事に加筆再掲したものです。)


(  最後までお読みいただき、ありがとうございました。

更新されたときは「今週までのパレット」でお知らせします。)


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