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#ネタバレ 映画 「バンクーバーの朝日」

「バンクーバーの朝日」
異床同夢・人は同じ夢を見ることができる
2015-01-15 18:29byさくらんぼ

( 引用している他の作品も含め、私のレビューはすべて「ネタバレ」のつもりでお読みください。 )

2005年に120を超える国々が参加した愛知万博は、6ヶ月間にわたり盛大に開かれました。

世界中の国々が、国の威信をかけた万物の本物を日本に送り込みました。

わざわざ、その国へ出かけても簡単には見られないもの、味わえないものを、わずかの入場料で、その会場にいるだけで、体験できるのです。まるで奇跡の6ヶ月間。

それに比べて、オリンピック・パラリンピックは、わずか数週間であり、スポーツだけの祭典です。

なのに、開催国の熱気は、真剣度は、オリンピック・パラリンピックの方がずっと上なのでした。開催国は、国の威信をかけて準備を行うのです(少なくとも「愛知万博」で国が大騒ぎしたという雰囲気は感じませんでした)。

私は、この事が理解できませんでした。

しかし、実は両者、価値の質が違ったのですね。

万国博は、おもに見えるものを、

オリンピック・パラリンピックは、実は、見えないものを、味わうものだったのではないでしょうか。こちらは「世界中の人が、国籍、人種、宗教も越えて一体になり、同じ夢を見て、同じ希望を感じる、そんな瞬間を味わうもの」だったのです。

でも、試合形式のスポーツならば、敵味方になるのがあたりまえだ、と思う人もいるでしょう。

ごもっともです。

なかには、アウェーでの嫌がらせ、ドーピング問題や、偏った審判の話も聞きます。

でも、本当に感動的なプレーをする選手には、勝ち負けを越えて、世界中の称賛があつまります。

オリンピック・パラリンピックの真の価値は、その瞬間を、地球市民が、リアルタイムで共有することにあったのではないでしょうか。

それを皆は見たいのです。勝負ではなく、真に美しいものを。

そして真に美しいものを見た記憶は生涯の財産になります。

選手がヒーロー、ヒロインになるのは当然の事、観賞した子供たちにも宝物の体験です。

映画「バンクーバーの朝日 」に描かれているのは、まさに、それでした。

戦争も影を落とし、さらに差別や貧困の中、美しく戦い抜いたバンクーバー朝日軍と、それを応援した日本とカナダの両人たち。

そこには確かに美しいものがあった。

遅まきながら、それにカナダ人もやっと気づいたんですね。

現地の人は、それが宝石だったと気がついたので、掘り出さずにはいられなかった。

そして2003年、必然的にカナダ野球の殿堂入りしたのです。

この映画は、そのバンクーバー朝日軍の戦いの顛末を、淡々と描きます。実話ですから、あまり驕ってもいけないかも。そのせいかドキュメンタリー映画の様な味わい。

ですから、けっして人気のTVドラマ「半沢直樹」の様な濃厚劇画タッチではありませんが、けっして薄味でもありません。

そして嫌われ者だった主人公のオヤジは、野球のグローブを主人公に贈り、去って行きました。

「異床同夢・人は同じ夢を見ることができる」のです。

ラストに出てきた、実在の人物は、主人公でしょうか。ご高齢だとは思いますが、じつに美しい表情をしておられました。

希望に満ちて、朝日、ご来光を仰ぐとき、人は、ああゆうお顔になるのでしょう。

そして、忘れてはいけないのは、おなじく良い表情をしていた主人公の妹です。あの控えめな無言の演技が良かった。

彼女の「差別されても、反抗せず、カナダに溶け込みたい」いう気持ちが映画の核になっています。

彼女の気持ちが、主人公である兄に伝染し、そしてチームに伝染し、やがてカナダ全土に伝染していったのでしょう。。

彼女は、実は、この映画の思想リーダーであり、隠れた美少女戦士でした。この映画は、そんな萌える美少女戦士の映画でもあったのです。日本的な。

★★★★




(  最後までお読みいただき、ありがとうございました。

更新されたときは「今週までのパレット」でお知らせします。)


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