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#ネタバレ 映画「イチケイのカラス」

2024.2.27
主人公・入間みちおも公のために沈黙した

( 引用している他の作品も含め、私のレビューはすべて「ネタバレ」のつもりでお読みください。 )

TVの「イチケイのカラス」が好きでしたが、映画版もTV放送されたので観てみました。

気のせいか、茶の間で観るTV版よりもコメディ色が強いようです。私の好みとしては、映画だからこそ、もう少し抑え気味にして、リアル感を出した方が良かったように思いました。特にこの内容では。

ストーリーは貨物船とイージス艦の衝突事件にからむ傷害事件です。

貨物船は沈没して乗組員も全員死亡したのに、イージス艦側の航海日誌は紛失したとして(国家機密で公開されないため)、貨物船の遺族の一人が、「本当はイージス艦側に落ち度があったのに隠ぺいを諮った」として防衛大臣に・・・。

以下、結末にふれます。

①イージス艦側は、秘密裏に新型ミサイルか何かの開発実験をしており、これが公になって開発中止になると、日本の防衛は20年遅れるのです。だから、国益のためには、なんとしても隠さなければならない。一方、事故に関しては落ち度は無かったのです。

②貨物船側には秘密裏に有毒な産業廃棄物が満載されていました。それが漏れ出し、乗組員が中毒を起こして舵を誤り、事故に繋がったのです。過失は貨物船側にありました。

そして、産業廃棄物の発生地、その地元では、町ぐるみで、その工場を守り隠ぺいしていたのです。住民には工場関係者が多く、万一の倒産は町に大打撃を与えますから。

①②ともスケールこそ違え、「公のため」が隠されています。

そこに、事情を知らない坂間千鶴が弁護士として、入間みちおは裁判官として、「一部の依頼人」に関わろうとします。

結果、②の事故につながった町の闇は暴かれますが、①の国の闇は守られます。防衛大臣の辞任も考慮したのでしょうか。たった一人、大臣から防衛の秘密を明かされた入間みちおは、町の闇を暴いても、国の闇には沈黙し、日本の国防は守られました。

イージス艦が隠ぺいを諮ったと誤解して傷害事件を起こした女性は、裁判で国から事実上の返り討ちになり、産業廃棄物と闘った坂間千鶴は、町ぐるみの隠ぺい工作だったことを知り、傷つきながら、また一つ成長するのです。

この物語にも、全体と一部について描かれていたように思います。

追記 2024.2.28 ( なぜ役所の窓口でトラブルが起きるのか )

一般論として、例えば弁護士側と役所側が対立している時、役所が間違っていると思いがちですが、私見を申し上げれば、依頼人の利益のために動くのが弁護士なら(一部の奉仕者)、役所は(全体の奉仕者)なので、正誤というより、視座の違いなのだと思います。

( これは2024.2.27のパレット記事に加筆再掲したものです。 )


(  最後までお読みいただき、ありがとうございました。

更新されたときは「今週までのパレット」でお知らせします。)


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