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#ネタバレ 映画「大鹿村騒動記」

「大鹿村騒動記」
2011年作品
舞台は黒衣が回している
2011/8/6 10:44 by さくらんぼ

( 引用している他の作品も含め、私のレビューはすべて「ネタバレ」のつもりでお読みください。 )

「俺がいたんじゃ お嫁にゃ行けぬ わかっちゃいるんだ 妹よ・・・」、ご存知、寅さんの主題歌ですが、世の中とは本当にそんなものです。映画とは別に勝手にストーリーを作ってみると、その昔、一流会社OL時代の、才色兼備の妹、さくらには、きっと社内悲恋の経験があるはずです。

でも相手の母親(黒衣)が興信所に調査依頼し、別離命令を息子に突きつけたことは容易に想像できます。不甲斐ない相手の男は、ある日突然、無言で去っていった。本当の理由など言えるはずもありません。

残された、まだ世間知らずだったさくらは、いったい何が起きたのか理解できず、茫然自失の中で、やがて会社も辞めることになります。この歌は、そんな悲しい妹を知り、胸をかきむしられた寅の心境を吐露したものなのでしょう。舞台は黒衣が回しているのです。

さて、映画「大鹿村騒動記」ですが、台風がやってきます。台風はなぜ動くのか、専門家ではない私には詳細は分かりませんが、気流とか気圧配置など、他力(黒衣)の力も働いていることは確かなようです。

また、中性的な雰囲気を持つアルバイトの雷音は、回り舞台の下で、舞台を回す黒衣の青年と恋に落ちます。雷音は自分の人生を、男として生きていくのか、女として生きていくのか、悩んでいましたが、男に恋したことで、女として生きていく決心をしたことでしょう。雷音の人生も黒衣が回しました。

そして総務課の美江の恋路を遮ったのはバスの運転手(黒衣)でした。

昔、貴子を善の元から連れ去ったのも、思いもよらなかった治(黒衣)でした。

もちろん何もない?大鹿村がプライドを保っていたのは歌舞伎(黒衣)があったからです。

リニアの会議も、村長さんを操っていたのは村民(黒衣)でした。

静かな山村を舞台にした映画は、あのトリックがいっぱい出てくるコメディーぐらいしか知りませんが、「大鹿村騒動記」もとても面白い作品でした。一流俳優人が沢山出てきて大満足ですが、原田芳雄さんの魅力が素晴らしかったのは言うまでもありません。

★★★★

追記 ( 映画という答辞 ) 
2011/8/8 8:35 by さくらんぼ

>・・・一流俳優人が沢山出てきて大満足ですが、原田芳雄さんの魅力が素晴らしかったのは言うまでもありません。

この映画は、自分の死期を悟った原田芳雄さんが、自らの役者人生を振り返り、役者仲間、スタッフ、観客など、すべての黒衣に、感謝の気持ちを表した作品だったのかも知れません。

そして、それは、彼のお葬式での、弔辞に対する答辞にもなったのです。

この映画は、主役がグイグイ脇役をひっぱって行くという、能動的な通常パターンではなく、逆に受動的に、脇役に振り回される作品でした。そこだけ観ると違和感のある作品だったのかもしれませんが、あえてそのような構成にしなければならない理由が、そこにあったのでしょう。

この様な作品を遺作にできた彼は、ある意味幸せ者だったのですね。

追記Ⅱ 2023.10.28 ( 今思えば、エッセンシャルワーカーへの賛歌を先取りしいていたのですね )

>この映画は、自分の死期を悟った原田芳雄さんが、自らの役者人生を振り返り、役者仲間、スタッフ、観客など、すべての黒衣に、感謝の気持ちを表した作品だったのかも知れません。


(  最後までお読みいただき、ありがとうございました。

更新されたときは「今週までのパレット」でお知らせします。)


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