石原伸晃氏の正論

(2020年6月12日)

自民党の石原伸晃氏が派閥の会合で,

「社会保障を根幹から支える税制をつくるのに幾たび内閣が倒れ、また選挙で苦しい思いもしながらも、高齢化社会、少子化社会を乗り切るためにはどうしても間接税が必要だと、先人たちが努力をして今日に至っていることも忘れてはならない。」

と発言されたと伝えられた(朝日)。

まさに正論である。

日本には,数十年前,「社会党が日本にかけた呪い」が未だにはびこっている。

リベラル系の皆さんはその呪いが数十年かかったまま、世界がどう移り変わろうがその洗脳が解けていない。社会党が北朝鮮を礼讃していた過去と同じで、間違った主張でも洗脳されていればそこに気づかない。

今,世界的に消費税を賦課することは標準的になってきているが,それは,過去の国家にはなかった政策,社会保障政策が国策のメインとなり,そしてそれに多額の費用がかかるからだ。

たとえば,EU諸国は,平均すると消費税率が20%近い。では,EU諸国は,国民に過酷な税制を強いる金持ち・大企業優先国家なのだろうか?そんなことはさすがに日本の左翼政党も言わない。むしろ,手本とすべきとして挙げられることも多い。
また,各国の事情を調べてみると、EU諸国では,左翼政党も「消費税を下げる」ことを政策として掲げているところは見当たらなかった。
ちなみに所得が多い層は、消費に回す分が多いので、税率ではなく税額ベースで見ると言われているほどの逆進性はない。

EU諸国の主要政党と同じく,日本においても消費税を肯定的に捉える政治家の大多数は、現代国家の最大の課題は,社会保障の維持である,ということを認識している。どこの先進国でも高齢化が進む一方,国民の生活レベルは一昔前にくべて格段に向上している。

その上,日本のFree Access可能で高価な治療薬も使える健康保険医療制度などは,EU諸国に比べるてもかなり優れたもの。公的医療制度の見本と思われているイギリスのNHSなどは,レントゲン1枚取るのに1ヵ月,CT取るには3ヵ月などとも伝えられている。

日本にいると中々他国との比較が見えてこないが,今の日本の優れた社会保障制度を守るためには税収は欠かせない。

そういうと左翼政党はすぐに,法人税がー,というが,これも国際比較が必要で,法人税率の引き下げ競争が続く現在,日本だけ高止まりさせていれば,肝心の優良企業がみんな本社を海外に移転させてしまう。法人税率だけの問題ではないが,GAFAなどの課税逃れが国際的問題となっていて,一昔前のようにはいかないのが現実だ。

消費税の拡大は,社会保障のためであることは紛れもない事実。山本太郎氏などは言葉のマジックで否定されているが,歳入として入ってくるお金に色はついていない。ここ10年~20年の予算の費目ごとの伸び率見れば一目瞭然,赤字の拡大は全て社会保障費と国債関係費の増大によるものだ。リベラルがことある毎にやり玉に挙げる防衛費はほぼ横ばい、公共事業費に至っては減少しているのが事実。したがって,消費増税での歳入増も,そのほとんどは社会保障費の伸びに充てられていたと見るのが正しい。

日本がある意味EUを凌駕する社会保障を実現しながら,消費税はその半分で済んでいるそのマジックは,いうまでもなく赤字国債。

赤字国債で税収がないのにそこをごまかして背伸びの給付を続けているのだ。

消費税を維持しようと、不人気政策に敢えて声を出している野田前総理などの政治家の動機は社会保障を守りたいというところ。話をさせていただくとそこにいかに真剣な思いを込めておられるかが理解できる。

さて,石原伸晃氏がなぜ,冒頭のような発言をされたのか。

それは,今度のコロナパンデミックに対する経済対策として,第1次,第2次と巨額の補正予算が組まれ,それは全部赤字国債で賄われる。それでも,円安その他目立った不利益が起きていないため,政治家にも国民にも,これで大丈夫なら消費税なんかなくして全部赤字国債で賄えば良い,という極めて甘い見通しがはびこりつつあるからだ。現に自民党の政治家60人以上が 消費税ゼロの提言をしたことが伝えられている(毎日)。

しかし,域値を超える事態はいつかは訪れる。

今回は、世界同時に起きたパンデミックであり,欧米も同様の無茶な財政出動をしたので,日本だけが突出することはなかった。

だが,

・アメリカで政権交代が起きて基軸通貨発行国のアメリカがまともな財政に戻ったり,

・日本で首都直下地震や南海トラフでも起きて財政出動せざるを得ない,

などということが起きればどうなるかはわからない。

あるいは,今はまだ,政権与党が財政均衡の旗を掲げていることで保たれている財政への信頼=円への信頼が,政権与党がその旗を降ろしてバラマキ政策に走る,あるいはポピュリスト政党が政権を奪取するなどして,その旗が降ろされるかも知れない。

いずれかの事態をきっかけとして,

              円の暴落➡︎輸入物価の高騰によるインフレ

が起きれば,一気に日本は貧乏国に突き落とされるだろう。

この手の論考を述べたとき,よく受ける中傷は,「財務省の手先」。しかし,財務省からも誰からも,なんの利益も受けていなしいし,そもそも繋がりさえない。

ただ,社会保障が破壊された,そんな未来を私たちの子どもたちに渡したくないので、誤解されようが中傷されようが声を上げている。

私達は,今その時に備えて財政維持への意欲くらいはきちんと見せておかなければならないのだ。冒頭の石原氏の発言も,そんな思いから政権与党の責任感を自覚せよ,との叱責だったのだろう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?