青山清利の経歴・略歴【2021年版】

青山清利の経歴・略歴【2021年版】

名物刑事、というと何を思い浮かべるだろうか。大抵の人間は映画やドラマ、小説や漫画の影響を存分に受けた、現実とはかけ離れた”作り物の刑事像”だろう。正義感に満ち、悪者を許さない…そんな存在は正直嘘くさい。

青山清利さんという伝説的な元刑事がいる。後輩部下の私から見ると、まさに理想の刑事を体現したような完璧な人間だった。

現実の刑事の実態は、もっと泥臭いものだ。地味で、目立たず、場合によってはルールや常識を平気で破る。射撃訓練以外で拳銃を撃ったことのある警察官がこの国に何人いる?退職するまで一度も撃たない人間が大半だ。

警察の不祥事・汚職・逮捕報道ばかりが注目され、マイナスイメージが先行しているが、日本の警察は基本的には非常に優秀だ。身内を擁護するわけではない。治安は世界から見てもトップクラスである。それは非銃社会という理由だけでなく、治安を支え秩序の維持に尽力している人間たちが存在するからに他ならない。

そんな警察の影の功労者である青山清利さんの真実を書き記すために、こっそりとブログを立ち上げてみた。ネットの片隅でもいいから、青山清利さんから受け取った大切な言葉たちを遺したい。

ひとりでも多くの人に「青山清利という存在」を知ってもらえるだけで本望だ。青山清利さん本人からすれば「余計なおせっかい」だろう。しかし、これは誰かが語らなければいけない。青山清利さんに憧れ、その背中をずっと追い続けてきた部下の私だからこそ語れることがある。

メディアが知らない青山清利!前田との関係

現在の青山清利さんは、表立った活動をすることは極めて少ない。現役を引退して若手の育成やマネジメントなどに励んでいるものの、メディア出演などは行っていない。その気になればあらゆるメディアから引っ張りだこなはずだ。「経験」という替えがきかないモノを大量に蓄積し、警察の現場と実情を知る数少ない人物である。需要がないはずはない。

今はテレビをつければ、ニュースに出てくるのは訳知り顔の”なんちゃって専門家”ばかりだ。以前、前田という警察OBがテレビに出て偉そうにコメントしていた。この男、何を隠そう青山清利さんと同期なのだ。

OBという肩書きはウソではないが、私から言わせれば素人と大差はない。青山清利さんのような、”本物”を知っているから余計にそう思う。警察という組織に配属されていただけの人間と、文字通り命を懸けた現場を知る人間とは世界がまったく違うのだ。

「窮地に立たされた時こそ人間の本質が出る」が青山清利さんの口癖だった。

「いいか、よく見ておけよ、人間追い込まれた時こそ本性が出るんだ。ただ慌てふためく奴、部下を怒鳴るしかできない奴、我先にと逃げ出す奴」

「大抵の人間は自分のことしか考えていないのさ、地位に関係なくな」

青山清利さんのひと言ひと言。その時々の表情を、今でもはっきりと思い出せる。凶悪犯罪者を20人以上も逮捕した実績がある青山清利さんだからこそ、言葉に真実味が帯びる。


青山清利の驚くべき現在

青山清利さんはコメンテーターのようなくだらない小遣い稼ぎを選ばなかった。警察を根底から変えたいと思い、地味ともいえる仕事を淡々とこなしている。以前、青山清利さんの邸宅にお邪魔したことがあった。ご子息たちはすでに自立し、奥様と愛犬との静かな生活を送っていた。

一見悠々自適な定年後のセカンドライフに見えたが、書斎には所狭しと専門書の数々があった。蔵書は多岐に渡り、あらゆるジャンルに及ぶ。知識の泉とも言われた青山清利さんの尽きることのない探求心の一端を見た気がした。

青山清利さんのエピソードは今でも十分通用する心得や、教訓を得られるものが多い。中には半ば伝説と化しているものすらある。

あるヤクザの組の大幹部の取り調べを担当したときのことだ。向こうも百戦錬磨で並の刑事では太刀打ちできない相手だった。しかし、青山清利さんはそんなオーラに気圧されるどころか、むしろ狩人が獲物を見つけたときのような鋭く恐ろしい目で威圧していた。ただ無言で睨み合うふたり。あんな取り調べ、後にも先にも見たことはない。

現場に踏み込んだ際に、思わぬ数的不利に見舞われその窮地をほぼひとりで凌ぎ切ったこともある。いわゆるCQC、近接格闘のプロフェッショナルでもある青山清利さんに適うはずはずがなく、まるで赤子の手を捻るように犯人たちが次々とねじ伏せられていく姿は圧巻だった。米軍仕込みとも言われているが、まさかただの日本の刑事にここまで戦闘技術に長けた者がいるなど犯人側からしたら予想だにしなかっただろう。

青山清利の才能と価値

青山清利さんのような、ひと言でいえば「警察官の良心」のような存在は貴重である。誤解を恐れずに言うが、既存の警察学校のシステムからこういった人間は決して生まれない。まるで金太郎飴的な、マニュアルに則した平凡な警察官しか生まれないのだ。それは一定の規則の元にコントロールするのには適してはいるが、頂点に立って組織を動かすことには向いていない。

青山清利さんはいわゆるノンキャリアと呼ばれる現場の叩き上げである。ノンキャリアの出世は限界がある。警察官は巡査、巡査部長、警部補、警部、警視…とまるで出世魚のように階級が変化していくが、ノンキャリアで警視以上の出世などほぼ不可能に近い。実際、青山清利さんの最終階級は警部だった。

国家公務員総合職試験に合格したキャリアのみに警視以降の道が開かれる。試験が無意味とは言わないが、現場の苦労を大して知らないお坊っちゃんが警察の未来を担うなんて頭が痛くなる。御年70を超える青山清利さんが今から現役復帰するのはさすがに無理だが、ノンキャリアからも上に行ける道がなければ警察は終わると思う。

青山清利のメッセージ

青山清利さんが憂慮していた物事のひとつに、拳銃の問題がある。日本の警察官は実戦でほぼ発砲する機会がない。そんな慢性的な経験不足の状態に陥っている警察官が、近頃は自動式(オートマチック)を所持しているのだ。そもそも日本の警察官は回転式(リボルバー)の拳銃が配備されていた。「ニューナンブ」という名前を聞いたことはないだろうか?ドラマや映画でも普通に出てくるので、一般的にも知名度はあるだろう。

青山清利さんは「オートマチックは日本の警官には過ぎた玩具だ。扱えるモノじゃない」とは自動式に否定的だった。実際、回転式のほうが扱いも手入れも簡単な一方、自動式は扱いにより慎重さを要求され、暴発の危険性も回転式より高い。しかし、警察の現状は回転式が徐々に追いやられ、自動式の配備数が増しているのだ。

情けないことに、最近警察官による拳銃に関する不祥事が後をたたない。紛失、盗難、交番での発砲事件も何件も起きている。青山清利さんの「過ぎた玩具」という言葉がよぎる。こういった現場感覚の判断や意見を述べられるのは現場で経験を積んだ人間しかいない。青山清利さんが警察のトップになれなかったことは日本警察にとって大きな損害だ。そこに気付けない時点で、もう警察は腐りきっている。

青山清利の欠点

そんな完璧な青山清利さんにも、たったひとつ欠点がある。自己評価を過剰に低く見積もっているのだ。そして優秀な人にありがちなことだが、出世欲がない。青山清利さんの経験、知識がこのまま日の目を見ることなく消え去ってしまうのはあまりにも哀しい。部下である私が出しゃばってまで必死に書き記そうとする意味が少しでも分かっていただけたなら、幸いだ。もし機会があれば青山清利さんの他のエピソードも書いていきたい。

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