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青柳政治談議④「敵の出方論」の怖さ

日本共産党がよく言われることは、「敵の出方論」を採用しているということだ。たしかに公安調査庁のホームページにも次のようにある。

共産党は,武装闘争を唯一とする戦術を自己批判しましたが,革命の形態が平和的になるか非平和的になるかは敵の出方によるとする「いわゆる敵の出方論」を採用し,暴力革命の可能性を否定することなく,現在に至っています。(公安調査庁HP 「共産党が破防法に基づく調査対象団体であるとする当庁見解」)

日本共産党が「敵の出方論」を採用したのは、いつか。
昭和33年(1958年)、第6回全国協議会(6全協)において、暴力革命を是認した『51年綱領』を「一つの重要な歴史的な役割を果たした」と評価した上で廃止した。以降、日本共産党内では、綱領論争が行われた。
3年間もの綱領論争の末、昭和36年党大会にて、革命が「平和的となるか非平和的となるかは結局敵の出方による」との方針を打ち出したのである。

では、「敵の出方論」とは何か。平成元年に共産党・不破衆議院議員(当時)が予算委員会で質問したとき、当時の公安調査庁長官の答えをまとめると以下の通り。

①共産党が入る民主主義の政権ができる前にこれを抑えようと不穏分子をたたきつける場合。
②共産党が入る民主主義政権は一応確立された後に、その不満分子が反乱を起こす場合。
③共産党が入る民主主義政権が成立しても、共産党が入っているから従わない勢力が出た場合、その勢力が暴挙に出た場合

②・③については、私の見解であるが、②は、共産党に対しての「不満分子」なので、右派団体が、反乱を起こす場合だと考えられる。
③は、不破氏が提示しているが、たとえば「自衛隊が、共産党が入っているから従わない」という場合。
公安調査庁の見解では、「(鎮圧は)当然に行われるべき治安維持活動」と答弁している。
「鎮圧」とは、『暴動を抑え鎮めること』である。治安維持(市民の安全確保)するためには、暴動を鎮圧するのは、それは当然のこと。
そう考えると、「敵の出方論」は問題ないのではという人がいるが、重要なことは共産党の本来の性質である。

日本共産党の主義主張の根本は「マルクス思想」である。マルクスといえば「資本論」で有名だが、マルクス・エンゲルス共著の「共産党宣言」という本がある。

「共産主義者はこれまでの一切の社会秩序の強力的な転覆によってのみその目的が達成されるのだと公然と宣言する。」
(マルクス・エンゲルス著『共産党宣言』)

さらに日本共産党 元議長・宮本顕治氏は、著作である『日本革命の展望』のなかで次のように主張した。

「革命への移行が平和的となるか非平和的となるかは、結局敵の出方によることは、マルクス・レーニン主義の重要な原則である。」
(宮本顕治著『日本革命の展望』)

要するに、暴力革命によってのみ、共産主義者の目的が達成されると説いている。日本共産党は、ことあるごとに不破氏を中心にマルクスを称賛し、この点についても、否定はしていない。むしろ不破氏は、

「マルクスの生きた精神と理論をつかむことが大事」
(民青主催:科学的社会主義セミナー「マルクスと友達になろう―社会を変革する学び」より)

とまで言い切っている。たしかに、最近マルクスの「資本論」で展開している資本主義の分析に注目が集まっているが、思想におけるマルクス主義が正しかったわけではない。

公安調査庁が懸念しているのは、日本共産党が暴力革命を否定しない点にあるのだ。

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