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少女Y
中森明菜『中森明菜シングルス27 1982-1991 』
ラジオで「80年代のヒットソング特集」という番組を聞いていて中森明菜の「ミ・アモーレ」がかかったのだ。正確にではないが自然と歌えるので驚いてしまった。あの時期は極端に歌もの(流行歌)から離れていた時期だった。
「歌殺し」という中上健次かな、どこかで言っていたような。歌の感傷的なフレーズが人を駄目にするという、だからジャズみたいな。よくわかっていなかったんだと思うが、オヤジたちが歌う懐メロや、国歌とか、例えば軍歌でもそういう合唱する奴が苦手というか、だから歌殺しのジャズなんだと。
で、ある日、カラオケスナックでY(女子)が俺のために中森明菜メドレーをやってくれたのだった。酔っ払っていたからかな。なんで歌を歌わないのにカラオケスナックに入ったのかというと、上がジャズ喫茶でそこは雑談できないから、話したいときには下のカラオケスナックで話すのがなんとなくその頃自分たちの間で出来ていたシステムだったのだ。オーナーが一緒だったし、カラオケスナックでも地下がカラオケで上は純然たるスナック形式だったのだから、話が出来た。それで客がまったくいない。雨が降っていたのかもしれない。地下でのYのワンマン・コンサート。
Yが中森明菜を歌ってくれたので、初めて中森明菜の歌を知って好きになった。今考えるとYの声が好きになってしまったのだろう。今だから言えるのだが、その頃はYの親友の彼女と付き合っていた時だったのか、Yはいいヤツだと思ったけど普通過ぎるというか、普通の少女Aだった。
いや、少女Yだった。
ハン・ガン『そっと 静かに 』を読んでふと思い出した歌声。
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