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5月の読書まとめ

ベスト5

『暗い時代の人々』ハンナ・アレント

『草枕 Kindle版』夏目漱石

『パサージュ論(一)』 ヴァルター・ベンヤミン

『パサージュ論 (五) 』ヴァルター・ベンヤミン

『失われた時を求めて〈7〉第四篇 ソドムとゴモラ〈2〉』マルセル プルースト


特集:沖縄を読む


『鎌倉文学碑めぐり』(鎌倉文学館編)

5月の読書メーター


読んだ本の数:24冊
読んだページ数:5694ページ
ナイス数:786ナイス

https://bookmeter.com/users/56191/summary/monthly/2022/5
■ヤンキーと地元 (単行本)
暴走族のパシリ(使い走り)として社会学の参与観察という手法で書いた論文調ではない社会学の論文なのか?(潜入)ルポルタージュに近い感じがするが。巻末の資料とか見るとやっぱ社会学なのかとも思う(よくは知らないのだけど)。

『裸足で逃げる』の上間陽子の本とはだいぶ趣が違う。彼女はインタビューを中心とした社会調査を元にドキュメンタリー風に書籍化した。その時にも彼女のパシリで名前は出てきたような。いい意味で素人っぽさの体当たり精神。それが暴走族のパシリっぽい。
読了日:05月31日 著者:打越 正行
https://bookmeter.com/books/13577301

■平家物語 犬王の巻 (河出文庫)
映画『犬王』を観るので予習として読んだのだ。映画の方はアニメが犬王の異形を追求するのではなく、ビジュアル的な今風なのか、ちょっとがっかり映画だった。犬王の生まれが、父である「猿楽師」が自分が『平家物語』の演目の一番になるために、『平家物語』を語る琵琶法師たちを次々に殺害する。芸術の魔神との悪魔の契約をするのだった。そして魔神は最後には息子をも差し出せという。しかし息子は死よりも生を望んでその生命力で魔神の呪いを破って出てきた。ただし異形のものとしてである。
読了日:05月30日 著者:古川日出男
https://bookmeter.com/books/19185832

■平家物語 特製試し読み版 日本文学全集第9巻
『平家物語』入門編としては学校で習う有名所は、これで十分ではないかな。後は古川日出男の文体が合えば全集を買ってもいいし、合わなければ他を探せばいい。古川日出男はストレートな感じのラップ調か。あまり物語を改変したり余計なものを付けたりしておらず、リズム的に心地よく(心地よいが上に内容が入ってこなかったり)、琵琶法師のバチ(撥)っていうアクセントが効いている感じ。例えば同じような物語でも『義経記』を元にした町田康『ギケイキ』は余計な話や改変もあるんだろうけど、物語的には面白いと感じる。パンクの刹那感と饒舌感。
読了日:05月30日 著者:
https://bookmeter.com/books/11454605

■暗い時代の人々 (ちくま学芸文庫)
ハンナ・アーレントとの文章はエッセイと言えども難しいのは、逆説的な論理が多いからだろうか?アーレントのユダヤ性とヨーロッパの哲学的伝統は無視できないものである。そこに宿るユダヤ人に対する親和性や敗者となった者の共感性が論理を超えてあるような気がする。しかしアーレントは感情に流されるのは、ファシズムへのポピュリズムにつながることからなるべく理知的であろうとするかのようだ。以下、https://note.com/aoyadokari/n/n33a694acbbcb
読了日:05月29日 著者:ハンナ・アレント
https://bookmeter.com/books/12749

■パサージュ論(一) (岩波文庫, 赤463-3)
極めて実践的な本であると思う。中学生が流行歌をノートに書き留めるように、写経したことはなかっただろうか?尾崎豊、ユーミン、ビートルズ。誰でもいいのだが、ポップ・ミュージックの歌詞がその時代の一過性の流行として過ぎ去ってしまう中で、彼らは何かをつなぎとめようする。それがベンヤミンの『パサージュ論』なのだ。あるいは三蔵法師がインドへ行って多くの仏教経典を写経して持ってくる。宗教的な経典は、キリスト教でも仏教でも、写経を通じて伝えられたのではなかったのか?
読了日:05月25日 著者:ヴァルター・ベンヤミン
https://bookmeter.com/books/17060873

■メノン―徳(アレテー)について (光文社古典新訳文庫)
「100分 de 名著 アリストテレス『ニコマコス倫理学』」で徳(アレテー)がもう一つ理解出来なかったので、その元となるプラトンの著作を読んでみた。100分 de 名著 第4回「友愛」で、日本の社会状況で会社関係の友人は利害関係だけだし、ネットは快楽関係で、徳で結ばれる友人関係なんて出来そうもない。だから一人でも生きていけるという生き方が主流になる。で、プラトン『メノン―徳(アレテー)について 』を読んだわけだが、アリストテレスよりはソクラテス(プラトン)の方が理にかなっているような気がする。
読了日:05月24日 著者:プラトン
https://bookmeter.com/books/4643494

■長屋王残照記(1)あおによし (KCデラックス)
『女帝の手記』は読んだので、何か里中満智子の歴史ものを読みたいと思い手に取った。『天上の虹』を読みたいけど、これは読み放題ではなかった(電子化もしてなかった)。長屋王はほとんどノーマーク人物だった。
読了日:05月21日 著者:里中 満智子
https://bookmeter.com/books/6968203

■失われた時を求めて〈7〉第四篇 ソドムとゴモラ〈2〉 (ちくま文庫)
バルベックのラ・ラスプリエール荘のヴェルデュラン夫人サロン行く語り手。軽便鉄道で途中駅で人が乗ったり降りたり、けっこう錯綜としている。日本の古典文学で「道行」という近松門左衛門の心中もので有名な語りの手法があるのだが、ここでは心中はないので、紀行文的な「道行」だろう。今回はシャルリュス氏の巻と言ってもよく、悪徳(ゲイであること)の限りで奔放していく様子が描かれる。以下、https://note.com/aoyadokari/n/n41ad8675116e
読了日:05月21日 著者:マルセル プルースト
https://bookmeter.com/books/18360

■NHK 100分 de 名著 アリストテレス『ニコマコス倫理学』 2022年 5月 [雑誌] (NHKテキスト)
前回の「100de名著ハイデガー『存在と時間』」で、ハイデガーの「良心」はキリスト教の原罪思想(贖罪思想)から来ているが故に他者(ユダヤ)を排除するナチズムに繋がったという考察から、ハンス・ヨナスは「ハイデガーの「良心の呼び声」を、「人間が他者に対してまもるべき『倫理』」であるとする」としたのだ。その「倫理」と「良心」の違いがよくわからなかったと思ったら、その「倫理学」をやるという。『ニコマコス倫理学』の「ニコマコス」とは、アリストテレスの息子の名前で、アリストテレスのテキストは残っていない。
読了日:05月19日 著者:
https://bookmeter.com/books/19706494

■海をあげる
『裸足で逃げる 沖縄の夜の街の少女たち』とパラレルになっていて、『裸足~』が社会学者の調査記録であり、三人称で描かれているのに対して『海をあげる』は一人称のエッセイ。それは私が「沖縄」を引き受けるという、難しい話でもなくて、生活基盤として子育てをするということで、娘に引き渡す「沖縄」なんだと思いました。その中でオバアの戦時中の話も出てくるのですが、そのすべてを娘に伝えたいという母なる願いが感じられます。海というは、その漢字の中に母がいるということじゃないかな。それを次世代へ伝えていく沖縄の共同体としての。
読了日:05月19日 著者:上間陽子
https://bookmeter.com/books/18919389

■壬申の乱―天皇誕生の神話と史実 (中公新書)
それまでの壬申の乱は、天智天皇の死後、王位継承を巡って天智天皇の後継者大友皇子を叔父である大海人皇子が追い落としたとされ、大海人皇子悪人説が流布されている。しかし、その時期に天皇だったのは倭姫王の女帝とし天皇についていた。仮の女帝の跡目を巡る大海人皇子率いる豪族と大友皇子率いる豪族間の天下分け目の戦いだったのだ。大海人皇子の逃走(闘争)ルートを徳川家康が巡った関ケ原の戦いになぞらえてみることで見えてくる古代王朝の成り立ち。
読了日:05月17日 著者:遠山 美都男
https://bookmeter.com/books/407464

■知っておきたい仏像の見方 (角川ソフィア文庫)
またウルトラマンの話になるがウルトラマンをモデルとしたのは、阿弥陀如来だという(実際は弥勒菩薩だそうです)。ウルトマン世代がウルトラマンに憧れるのはその流線型にもあったのかもしれない。新幹線とかのイメージ。そしてストライプの赤い線。赤というと女の子のイメージを植え付けれられていたけど、何故か赤いストライプの入ったシャツを買ってくれてそれがかっこいいと思えたのもウルトラマンのお陰だった。そのぐらいに我々世代にはウルトラマンの影響力は計り知れないのです。
読了日:05月16日 著者:瓜生 中
https://bookmeter.com/books/365857

■暇と退屈の倫理学 増補新版 (homo Viator)
ハイデガーの「存在と時間」を「暇と退屈」で読み解き、ドゥルーズにつなげていく。具体的な話を折り込みながら優しく書かれてはいるが、読むのには暇が必要かも。映画『ファイト・クラブ』のアメリカの資本主義社会がマーケティングや宣伝によって欲望もまた消費させられているという解説も面白かった。『失われた時を求めて』のパーティのシーンに退屈してしまうのは退屈の第二形態で悪いことではないという。パーティに不法侵入しているのは読者なのだろう。そこで事件(批評)は起きるから考える哲学となるのだった。

読了日:05月13日 著者:國分 功一郎
https://bookmeter.com/books/9498071

■「万葉集」を旅しよう―古典を歩く〈1〉 (講談社文庫)
大庭みな子の「万葉集入門」かと思って読んだら、紀行文的な旅日記の側面が強いのだろうと最初は感じた。それは、大和を旅して天理での宿泊に安い宗教施設に泊まって今では変わり果てた天理王国の街の感想をふと漏らしたり、近江ではローカル線で出会う若いカップルに額田王の歌を重ねる。こうした古典を読む場合、自分の方に近づけて読む人と、自分から近づいて読む人がいると思うが、大庭みな子は明らかに後者なのだ。有名な山部赤人「富士の歌」。以下、https://note.com/aoyadokari/n/n40b248288c92
読了日:05月12日 著者:大庭 みな子
https://bookmeter.com/books/1323085

■鎌倉文学碑めぐり 〈鎌倉文学館資料シリーズ1〉
古本屋で買った百円本。GWにどこも行かないからせめて読書だけでも旅気分をと思って買った何冊かのうちの大庭みな子『「万葉集」を旅しよう』を先に読んでいたのだが、悪い意味ではなく大庭みな子の文章はそこに行きたくなってしまうのだ。それでこっちを先に読んでしまったというわけだった。でもやっぱ実際に行ってみたくなる。明日あたり天気が良かったら行ってみようかとも思う。まず何と言っても漱石碑。「佛性は白き桔梗にこそあらめ」。あやめじゃないのか?この区別が難しい。桔梗は、漢方で整腸薬だったようで。漱石も飲んでいた?
読了日:05月10日 著者:鎌倉文学館(編)
https://bookmeter.com/books/16977342

■草枕
漱石の一番の傑作ではないだろうか?それは、日本文学の。すでに未完の大作『明暗』のテーマは書かれていた。シェイクスピアの『ハムレット』のオフェーリアの絵画表現を墨絵にしたのだ。西欧文学と日本(東洋)文学の対峙。漱石は女が描けないというがそうではない。西洋画のようには描かなかったのだ。それがこの『草枕』で遺憾なく発揮されている。「草枕」は和歌の用語で、旅の野宿の枕ということもあるが、死の世界とも係わる。以下、https://note.com/aoyadokari/n/nf54b9280a545
読了日:05月09日 著者:夏目漱石
https://bookmeter.com/books/8254474

■物語 東ドイツの歴史-分断国家の挑戦と挫折 (中公新書)
『物語ウクライナの歴史』『物語ポーランド歴史』と読んできて『物語東ドイツの歴史』だった。輝かしい女性ドイツ首相のメルケル(父系がポーランドだった)を生んだ国でもあったのだが、彼女はニナ・ハーゲンに憧れる物理学者だった。そのメルケルは「東ドイツ」をナチスと変わらない「不法国家」と呼んでいたそうである。第二次世界大戦でのナチス・ドイツの敗戦後、ドイツは東西に分裂統治される。以下、https://note.com/aoyadokari/n/nef8def9af18b
読了日:05月08日 著者:河合 信晴
https://bookmeter.com/books/16687263

■幸福論 (岩波文庫)
哲学教師が書いた毎日のブログのようです。プロポ(断章)と言われているようですが、今だとブログが相応しい。アランが「幸福論」と総題をつけたわけではなく、ブログの内容からでしょうか?普通に人生を肯定出来る人が読む本です。鬱の人は読んではいけない。向き不向きがあるのです。ボードレールの言葉は染み入るが、アランの言葉はますます憂鬱にさせるだけでした。一時期写経してましたけど、効果ないです。あと、書籍的に言えば目次を最初に付けて欲しかった。そうすれば、読みたいところだけ読める。最後に一覧があるのだと後から気づいた。
読了日:05月06日 著者:アラン
https://bookmeter.com/books/492909

■パサージュ論 ((五)) (岩波文庫 赤 463-7)
ベンヤミンの引用集だからまとめようがないのだが、昨日横浜みなとみらいへ映画を見に行く途中にベンヤミンの『パサージュ論』が具現化しているのを見た。そして一句「たけのこやパサージュのシンウルトラマン」という句を作った(写真はつぶやきで)。「シン・ウルトラマン」が『パサージュ論』に相応しい。かつてのメシア的光の勇者だったものが、破壊と構築の資本主義社会の中の幻想(ファンタスマゴリー)の象徴として、夢から目覚めぬ五月の余韻の中で突然、装い新たに現れた。それはガラスドームに守られた虚像にしか過ぎない。


読了日:05月06日 著者:ヴァルター・ベンヤミン
https://bookmeter.com/books/18355040

■歌枕 (1977年) (平凡社選書)
歌枕は、和歌の世界で実際にそこい行かずして歌を詠むことによって文学的体験をするヴァーチャルな愉しみなのである。黄金週間に観光地に行かないで(人混みで情緒もない)、大人ならこういう無銭旅行を読書で愉しみたい。『源氏物語』が歌物語(和歌的)とされるのは、「歌枕」のある地名の道行を折り込むことで、例えば「若菜下」で「すみよし」「すみのえ」は松を読み込むことで過去の和歌と通じてくるという。地名の和歌が出てきたら「歌枕」を調べると面白い発見がある。ただ専門的すぎて手に負えない場合も。
読了日:05月05日 著者:
https://bookmeter.com/books/297725

■パリの憂鬱
散文詩は、憧れつつあまり読んだことがなかったが、ボードレールはお勧めである。韻文詩よりも、物語性を帯びているからイメージしやすい。詩と小説の中間ぐらいの感じ。ヌーヴォロマンの小説に近い。パリの昼間の喧騒。GWに相応しいような詩。ボードレールの中にいる子供は、見捨てられた子供であるがゆえに自由なんだけど、貧しさがつきまとう。それはパリの路地裏の貧民街の情景だった。そこは色街でもある。色とりどりな衣装と香水とをまとった娼婦たち。そこに近づこうとする分身である犬は、香水よりも糞尿の匂いが恋しい。
読了日:05月04日 著者:ボードレール
https://bookmeter.com/books/9798993

■あたらしい憲法のはなし
憲法記念日というを今まで意識したことがなかった。GWの中の一日にしか過ぎなかったのだが、暇だと改めて見直すことが出来る。今更という気がしないでもないが。憲法は学校で習うことになっているが、全文について見直すことはなかったようだ。憲法については学ぶが、憲法自体そのものを読んだ記憶はない。部分的に9条や11条ぐらいだろうか?そもそも日本国憲法の条文が難しい言葉で書かれているというイメージを植え付けられていた。読んだことないのに、お役所言葉だろうと。そして今回、この中学生用に書かれた解説書を読んで驚いた。
読了日:05月03日 著者:文部省
https://bookmeter.com/books/5596276

■そっと 静かに (新しい韓国の文学)
ハン・ガンのエッセイ。小説の語りと同じ感じ(違ってたら焦るよね)。そっか。ピアノに憧れていたのか?紙の鍵盤を弾いていたという話が泣ける。母親がその姿を見るのが忍びなくて、中学になって、ピアノ教室に行った話も。俺の彼女かもと思うぐらいぐっと胸をつく話だった。ピアノを訥々と弾くような語り。その後、前半「耳をすます」は、ハン・ガンが出会った歌のエッセイ。クラシック「菩提樹」からトレイシー・チャップマンまで、幅広く、かと言って本人も語っているようにコレクター的ではなく、その時々に出会った想い出を素直に語っている。
読了日:05月02日 著者:ハン ガン
https://bookmeter.com/books/12935911

■かすかな声
太平洋戦争前の太宰治のというより日本人の決意表明のような文章。でもスミレは漱石の俳句を想い出す。「菫ほどな小さき人に生まれたし」
読了日:05月02日 著者:太宰 治
https://bookmeter.com/books/6424943


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