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永遠にからっぽのうつわ

『短歌ムック ねむらない樹 vol.10 特集=第5回笹井宏之賞発表/15年目の笹井宏之』

ねむらないただ一本の樹となってあなたのワンピースに実を落とす(笹井宏之)
特集=第5回笹井宏之賞発表/15年目の笹井宏之/2022年の収穫アンケート
【特集1 第5回笹井宏之賞発表】
◎大賞
左沢森「似た気持ち」、瀬口真司「パーチ」
◎個人賞
大森静佳賞
中村育「風は吹く、無数の朝」
染野太朗賞
手取川由紀「羽化のメソッド」
永井祐賞
野川りく「遡上 あるいは三人の女」
野口あや子賞
八重樫拓也「晩年」
Moment Joon賞
橙田千尋「Liminal」
選考座談会
大森静佳×染野太朗×永井祐×野口あや子×Moment Joon
【特集2 15年目の笹井宏之】
笹井宏之年譜、写真アルバム
座談会 穂村弘×東直子×土岐友浩
インタビュー 筒井孝司 筒井和子
未発表の短歌、エッセイ、小説ほか
【特集3 2022年の収穫アンケート】
水原紫苑 枡野浩一 千葉聡 藪内亮輔
石川美南 尾崎まゆみ 松村正直
【作品20首】
toron* 木下侑介 佐々木朔 帷子つらね 田村穂隆
佐藤弓生 魚村晋太郎 奥田亡羊 石井僚一
【巻頭表現】
大白小蟹
【特別掲載】
金子冬実 涌田悠

「眠らない樹」そのものが笹井宏之におんぶにだっこなんで、もうファンクラブみたいなものかと。まあ、夭折の歌人という伝説化で売るみたいな。新人賞とかも新人を発掘するより笹井宏之の知名度を上げるというような。アンチになってしまうのは、家族とか彼の短歌には関係ないだろうと思うから。この雑誌の作り全体が家族的といえばいいのか。そこに疎外感を感じてしまう。

【特集1 第5回笹井宏之賞発表】
最近になって短歌一首で表現するより何首も積み重ねて短歌を私小説的に鑑賞するのだ知った。だから短歌界も文壇のようなシステムが出来上がってくる。左沢森「似た気持ち」はそんなことを思わせる歌だった。それが悪いとも思わないのは彼のコトバが真摯だからか?そこにあるのは彼の孤独のコトバだった。

カーテンを閉めると部屋が暗くなるそれで救われている人もいるはず
気がつくと寝ていたことに気づくまでに水を飲むコーヒーも飲んでいた
午後に起きて閉店前の本屋まで歩いていく電車賃がないから

まあ日記だよな。その積み重ねが愛おしいのか?

【特集2 15年目の笹井宏之】
副題に「笹井宏之という歌人の自由さとは何だったのか」

これは穂村弘のコトバだが、彼には凄い不自由さがあって自由の渇望が自由に感じさせる短歌だった。だから連続したコトバよりもその中から立ち上ってくる自由さみたいなのがあったのだ。でも今の彼の状態は夭折した歌人としての生とそれを取り囲むファンや家族に囲まれてしまっているように感じてしまう。そういうものがあると知るのはこういう雑誌の作り方にあるのだと思う。何よりも15年も過ぎてファン広報誌のような雑誌の作りが気に食わない。

えーえんとくちからえーえんとくちから永遠と解く力を下さい

解けない力。

からっぽのうつわ みちているうつわ それから、その途中のうつわ

最初に「からっぽのうつわ」が来るのだ。「みちているうつわ」は例えばこの本の中の笹井宏之かもしれない。そして、「その途中のうつわ」が読者なのだ。

【特集3 2022年の収穫アンケート】

気になったのは、渡辺松男『牧野植物園』

『らんまん』繋がりか?

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