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リー・モーガンについて考える

先週の「ジャズトゥナイト」は、リー・モーガン特集でした。それほど好きでもないのは、ドン・チェリーやレスター・ボウイに比べて革新性がなかったからもしれないです。ただリー・モーガンというと外せない一枚があります。『リー・モーガンvol.3』。あまりに有名なクリフォード・ブラウンに捧げた「アイ・リメンバー・クリフォード」が彼の名声を確立した。

クリフォード・ブラウンの優等生キャラに対して不良っぽさが人気なのかなとも思います。それが一番発揮されるのは、ライブ盤での暴れっぷり、メッセンジャーズでの若頭的なポジションで参謀ゴルソンを敬遠するという感じでしょうか?彼がゴルソンが抜けた後にウェイン・ショーターを招いたというのも、メッセンジャーズに新しさを吹き込みたかった。そんな折に日本に来日して、出前持が「モーニン」を口笛吹きながら蕎麦を配達(デリバリー)していたのです。

出前持ちのジャズは、どことなく不良ぽさを語り、例えば永山則夫の危うさを醸し出している。世間は日米安保がどうのこうのよりも俺は俺の道をゆく。田原総一朗が東京12チャンネルで「永山則夫と三上寛」というドキュメンタリー番組(「田原総一朗の遺言」というDVDが出ました)での出前持ちだったような青年の言葉が言い表してように思えました。今のネトウヨ的な発言。

ブルーノートというジャズでは盤石のレーベルがあります。その中でもリー・モーガンはハンク・モブレーと並ぶ二大スターでハード・バップからファンキー・ジャズと呼ばれる傑作を次々残しました。まあジャズ喫茶の超人気盤というとハンク・モブレーの『ディッピン』ですね。二曲目のラテンナンバーの「リカード・ボサノヴァ」で甘ったるいボサノバ曲をファンキーに変えてみた。

ブルーノートに吹き込まれた彼らのアルバムは、そうしてジャズ喫茶の主流となっていく。ただもう一方にコルトレーンやフリー・ジャズという理屈ぽいジャズがあったのですね。そして彼らの心を逆なでにするジャズで最大のヒット曲『サイドワインダー』が世に出るのです。なんだこのコマーシャル・ソングは?

このノリノリのリズムがジャズ・ロックという流れを作っていくのですが、「ジャズトゥナイト」でも大友良英が言ってましたが、すでにこのリズムパターンはジャズ・メッセンジャーズの中にあったものだった。どこまでもジャズ・メッセンジャーズというスタイルが付きまとう。それがリー・モーガンの限界なのではないか?

ヒップなクールなジャズを展開することはなかったのですが、それも愛人による暗殺というショッキングな事件が起きたからです。タラレバで言えばリー・モーガンがもっと長生きしていれば、とファンなら想像するのでしょう。しかし、あのマイルスは超えられなかった。フレディー・ハーバードよりも評価が高いのは何故?と考えてしまう。あの事件の衝撃なのです。

この映画のベスト盤は良かったです。

でもやっぱリー・モーガンはしっとりやるバラードなんかはなかなかいいのです。ファンキー・ジャズとの落差なのかな。「ジャズトゥナイト」でも一番印象に残ったのは、ビリー・ホリデイの絶唱「I'm A Fool To Want You」をそんな感じで演奏されたらたまりません。


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