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シン・短歌レッス74

小野小町の和歌


かぎりなき思ひのまゝに夜も来む夢路をさへに人はとがめじ                       小野小町

この歌も『古今集』の「恋三」なのだが、「夜も来む」というのを「昼だけではなく夜も来よう」という意味で、この歌は昼間のうたた寝という。小野小町なら可愛いが、普通のおっさんやおばさんではけしからん歌だな。まあ、そういう暇な人こそいい恋が出来るのだということにして、まあ昼間からうたた寝していたら、そりゃ人も咎めるかもしれない。

ただこの歌は夢の中でも人目が咎めるという歌なんだ。どんだけ妬まれていたんだ。小野小町だから、そういうことはありそうだ。「万葉集」にもそれ以降の歌にも、夢の中でも警戒するという歌は小野小町以外にないのだという。

「夢路」は小野小町が最初に用いたとされる。続く歌も「夢路」が初句に用いられている。

夢路には足もやすめず通えどもうつゝにひとめ見しごとはあらず  小野小町

『古今集・恋三』

「夢路」では待つ女ではなく自ら恋人のもとへ通うという。現実には出来ないことを夢で見るのはありそうなことだという。それでも現実に一度だけ遭った夜と比べ物にならない、という下句の意味のなんとも男心を引き付ける歌かと思う。

「夢路」は漢詩の「夢魂」から連想された語句だという。小野小町の歌は『遊仙窟』や漢詩からの影響が感じられという。夢の連作和歌は、唐代の小説『鶯鶯伝』に倣ったものとされ、物語仕立てだったのだ。さらに「夢路」を最初に使ったのが小野小町とされ893年の『新撰万葉集』の藤原敏行は小野小町の夢の歌に倣ったとされるのだから、どんだけ凄いかが伺われる。

平成歌合

今日の「平成歌合」は在原業平だった。これはやった人だから4勝ぐらいしたい。

(歌合四十一番)
世の中に絶えて桜のなかりせば春の心はのどけからまし
のどけくも咲かまほしけれ桜花すさぶる風も人もなき世に

これはあまりにも有名な業平の桜の歌が左、右は正比古だけど桜ののどかな様を歌ったのか?逆だね。業平は当たった。正比古の意味は少し違って風も人もない世界ならのどかに咲いただろうと桜の気持ちを詠んだうた。上手いよな。

(歌合四十二番)
濡れつつぞしひて折りつる年の内に春はいくかもあらじと思へば
濡れつつぞ折りつる藤の花君がこころの深き色かな

これはわからない。「春下」で藤の花を折って歌を贈ったとある。つるは鶴との掛詞で目出度い長寿の祝だとすれば、左は女性ではなく年上の人に贈った歌だ。右はいかにも色好みの歌だが引っ掛けのようなきがする。左が業平。当たり。これはやった覚えがあったが忘れていた。右はその返歌だという。そうか業平が色好みと示していたのか?やっぱ正比古は出来るな。

(歌合四十三番)
唐衣きつつなれしにしつましあれぼはるばるきぬる旅をしぞ思ふ
雁が音をきけば旅居の夫恋(つまこ)ひしはつかばかりの玉草もなく

「旅の歌」対決。これも覚えがないかな。左はなんとなく覚えがあるような。でも唐衣だから『万葉集』だと思う。右が業平。これはカキツバタの「折り句」だった。やったはずだ。ボーナス問題を外した。

(歌合四十四番)
名にしおはばいざ言問はむ都鳥わが思ふ人はありやなしやと
名にしおばいざ帰り来よ都鳥わが思ふ人を羽交(はがひ)に乗せて

これは超有名な都鳥の歌は、左が業平。右の正比古の歌はその都にいる女の歌か。当たり。これもボーナス問題だな。

(歌合四十五番)
変わらざるものなき世とは知りながらなどか変わらぬ君と思ひし
月あらぬ春や昔の春ならぬわが身ひとつはもとの身にして

左も右も聞いたことがあるような。ただ右は確実に業平だった。当たり。4勝1敗で、まずまずか。

続いて藤原敏行。この歌人は知らなかった。始めてではないんだけど。絵が得意な人だったか?

(歌合四十六番)
秋来ぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞおどろかれぬる
昨日(こぞ)の日は涼しと聞きし風鈴を時じとおもふ今朝の風かな

「秋立つ日によめる」とある。右は風鈴がポイントだよな。この時代にあったのか?魔除けだからあったのかもしれない。右は『古今集』にいしよう。左は当たり前すぎる感じだし。外れだった。やっぱ風鈴は場違いだよな。江戸時代とか。でも平安時代にもあったんだな。

(歌合四十七番)
なに人かきてぬぎかけしふぢばかまくる秋ごとのにのべを匂わはす
秋の野にふぢばかまの花匂ふれば別れし人の香とぞしのぶる

左はふじばかまは着物で右が植物の花だよな。左は正比古だと下品なような気がするので左が藤原敏行。当たり。

(歌合四十八番)
わが置ける涙の露の深ければ屋戸(やど)の紅葉は色まさりけり
白露の色はひとつをいかにして秋の木(こ)の葉をちぢにそむらむ

左は女性の歌かな。浪漫的なのが正比古っぽいな。右は敏行。当たり

(歌合四十九番)
後朝の別れのあとはこころうくひすがら待ちぬ君がつかひを
心から花のしづくにそほちつつうくひずとのみ鳥のなくらむ

「うぐいす」対決。右は「うくひず」と表記しているのが今までに見たこともなかったから特別な気がする。藤原敏行。当たり。右の「うくひず」は「憂く」と「干ず」の掛詞だった。そこまでは読めないけど。

(歌合五十番)
切るるほど研ぎ澄む宵の三日月に鳥よな寄りそ離(さか)りてぞ飛べ
くべきほど時すぎぬれやや待ちわびて鳴くなる声の人をとよむる

「ほととぎす」対決なのだが、難しい。左は「(ほど研ぎ澄)む」の掛詞だが、全体的に夜の時鳥の声を想像できるが、右は「ほど時すぎ」に隠れている以外に意味がよくわからない。右が藤原敏行で左は正比古だが、凄いテクニックだと思う。当たり。右の意味は時鳥を待っていた人がやっと時鳥の鳴く声にどよめいたという。「物名」は「隠し題」といわれる高等な遊びだそうである。この回も4勝1敗。

うたの日

お題は「夏」

『百人一首』は「忍ぶ恋」の「ものや思ふ」というセリフを入れているので評価されたという。

空蝉の宿木酔ひも夢一夜ものや思へば朝は虹色

どこが「百人一首」なんだ。夏がない。七夕にすればいいのか?

七夕や夜雨(よさめ)ひとりの夢一夜ものや思へば朝は虹色

もうこれでいいや。先に進まねば。♪ひとつでした。通算100首詠んでもこんなもんなんだ。

映画短歌

映画短歌は『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』。

『百人一首』

蜘蛛男風のうわさに立ちにけり糸を操り悪人退治

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