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歌をおやつに喩えるならお萩

Milli Vernon"Introducing"

向田邦子の愛聴盤として話題になったジャズ・ヴォーカルの隠れ名盤が待望の復刻!!
ビリー・ホリデイを彷彿とさせるグルーミーな唄声が魅力の謎の美人シンガー、ミリー・ヴァーノン。彼女の数少ない吹き込みの中でも最もレアな幻の逸品が最新リマスタリングで鮮やかに蘇る。
ミリー・ヴァーノン(vo),ルビー・ブラフ(tp)、ジミー・レイニー(g)、デイヴ・マッケンナ(p)、ワイアット・ルーサー(b)、ジョー・ジョーンズ(ds)
録音:1956年2月/N.Y.C.



秋のヴォーカル・ジャズ。再録です。一曲目の「ウィープ・フォー・ア・ボーイ」から名盤の予感。というか名盤です。

いきなり無伴奏で歌いだす。実力派ならではの証明である。さらにその感情のコントロールと小編成でのバンドをバックに見事の歌唱力を示す。

名曲ばかりなんですが、一番はサッチモも歌い、浅川マキにも歌っていた「セントジェームス病院」。これはほんと素晴らしい。

その昔、「幻のボーカル・シリーズ」とかで出たので買った記憶があります(レコード時代)。ベツヘレムかと思っていたらストリーヴィルでした。ベツヘレムには、マリリン・ムーア『Moody』が白人ボーカルでビリー・ホリデイの再来と言われた人でちょっと似ているのでそれと間違えたのでした。このアルバムも良いので興味ある人は聴いてみて下さい。

ミリー・ヴァーノンのこのアルバムは向田邦子のエッセイで有名になったのでした。「水羊羹を食べるのにぴったりなジャズ・ボーカル」だとか。このへんの表現が上手いのか?アルバムのどの曲を聴くかによって変わるのだとおもいますけど、私のイメージは水羊羹のような洒落た感じではなく、ぼた餅というか「おはぎ」のイメージが強いのは、向田邦子が「スプリング・イズ・ヒア」を上げているのに、その次の曲「セント・ジェームス病院」のイメージが強いからでしょうか。サッチモの"Satchmo Plays King Oliver"(1959)の最初の曲ですね。サッチモもいいけど、このミリー・ヴァーノンも素晴らしい出来です。サビの部分で転調してそれまでの力強い訴える感じから女性ならではの優しさが出てくるのです。

その他にも一曲目の「ウィープ・フォー・ア・ボーイ」の優しく包み込むヴォーカルから「ムーン・レイ」の月が照らす温かさのような曲まで魅力的な曲が揃っています。小編成のコンボも彼女の繊細なヴォーカルを引きてています。ミュート・トランペットのルビー・ブラフやギターのジミー・レイニーの好演も光ます。

(ジャズ再入門vol.53)

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