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夏休み推薦図書、『何が私をこうさせたか――獄中手記 』金子文子

『何が私をこうさせたか――獄中手記 』金子文子(岩波文庫)

関東大震災後,朝鮮人朴烈と共に検束,大逆罪で死刑宣告された金子文子(1903―26).その獄中手記には,無籍者としての生い立ち,身勝手な両親や,植民地朝鮮で祖母らに受けた虐待が率直に綴られる一方,どんなに虐げられても,「私自身を生きる」ことをあきらめなかった一人の女性の姿がある.天皇の名による恩赦を受けず,獄中で縊死.23歳.(解説=山田昭次)

「高橋源一郎の飛ぶ教室」でブレイディみかこ『両手にトカレフ』が紹介された。今から100年後のイギリスの中学生(14歳)と100年前に朴烈事件で獄中死を遂げた金子文子の物語がパラレルワールドで進むらしい。金子文子が朝鮮に渡ったのは14歳。その極貧の環境の中で14歳の社会意識の目覚め。夏休み推薦図書。


「朴烈事件」(もう一つの「大逆事件」のような)で死刑判決を受けるが判事にそれまでの生い立ちを書くように言われて文庫本で400ページにも及ぶ手記を残した(漱石の先生の遺書より長い!)。これがすこぶる面白い。文章も明快で暗い生い立ちなのだけどそれに立ち向かうヒロイン。少女漫画のよう。貧困女子の惨めさ、その上昇志向というか、不良少女が新聞配達や露天商をやりながら学問に目覚め、それが当時の社会主義思想を身をもって体現していく女性だった。恩赦を天皇の世を認めてしまうから拒否して23歳で獄中自殺。凄すぎる。

母の弱さと父のいい加減さ、その生い立ちから無(国)籍者になってしまう。子供がいない叔母のもとへ朝鮮に渡る。日本支配化の朝鮮で無籍者として意地悪婆さんの祖母に女中のようにこき使われる。悪人もキャラ立ちしていて物語として面白い。隠れて講談本を読んでいたとあるからその影響か。17歳で東京に出てからも職業転々として、不良少女と言われながらも恋に学問に女が自立して自由に生きる道を模索していく。夏休みの課題図書にしたいぐらいだ(今の学校では評価されないと思うが)。(2018/07/31)


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