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コルトレーンの踏み台となったアルバム

Sonny Clark『Sonny's Crib』( Blue Note/1958)

Sonny Clark - piano
Donald Byrd - trumpet
Curtis Fuller - trombone
John Coltrane - tenor saxophone
Paul Chambers - bass
Art Taylor - drums

同じブルーノートのアルバムでありながら、コルトレーン『ブルー・トレーン』とはアルバムの傑作度が違う。三管でメンバーもほぼ同じなのに、この違いはリーダーの違いなのかと思ってしまいます。

『ブルー・トレーン』は、コルトレーンが唯一ブルーノートに残したリーダーアルバム。次にあの『ジャイアント・ステップ』に繋がるような変貌していくコルトレーンの姿を捉えています。そして、フロントはメッセンジャーズでリズムセクションはケニー・ドリューはちょっと違うけどマイルス・バンドのメンバーで、コルトレーンの野心が伺われます。

その二週間前に録音されたのがソニー・クラークのこのアルバム。ブルーノートは革新路線よりは保守的なアルバムが多いのでコルトレーンとかマイルスのような改革派のアルバムよりは当時のジャズらしさのアーティストを好みます。ソニー・クラークもそんなピアニストだったのか?パウエル・ライクのピアノでハードバップ的セッションを録音している。

そんなジャムセッション的なアルバムでオリジナル曲よりスタンダードが多いです。でも当時の売れっ子ばかりのミュージシャンなので悪いはずもなく、その中でコルトレーンも黙々と吹いている。ここで注目すべきは、やっぱトロンボーンのカティス・フラーでしょう。ベニー・ゴルソンとのゴルソン・ハーモニーの一翼を担ったトロンボーンは、ここでもコルトレーンとハーモニーを決めています。実にこれがスタンダードによく似合う。

「スピーク・ロウ」なんかはコルトレーンのアルバムにしたいぐらいにコルトレーンが気持ちよく吹いている。この時の演奏があの『ブルー・トレーン』の最初の一曲に繋がっていくのです。ここでのカティス・フラーの好サポートがなかったら、『ブルー・トレイン』は生まれなかった。まあ、別のコルトレーンの姿はあったでしょうけど。

でも一番の好きなのは「ニュース・フォー・ルル」ですね。このアルバムを聴いてジョン・ゾーンの傑作「News for Lulu」が生まれたのですね。ジョン・ゾーンはハードバップの核心を取り出すように、テナーとトロンボーン、伴奏はビル・フリーゼルのギターだけ。でも、それが気持ちいいのです。この気持ちよさはソニー・クラークのジャズそのもの。




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