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問題は隠すほうが悪いのか?かくさん(拡散)するのが悪いのか?

『アンラッキー・セックスまたはイカれたポルノ 監督<自己検閲>版』(ルーマニア/ルクセンブルク/クロアチア/チェコ/2021)監督ラドゥ・ジューデ 出演カティア・パスカリ/ウクラウディア・イエレミア/オリンピア・マーライ

解説/あらすじ
夫との性行為の映像がインターネット上に流出したことで保護者から非難を浴びる女性教師をルーマニア社会をとりまく諸問題を絡めて描く。

これは監督<自己検閲>版までタイトルだと思ったら、この部分は邦画だけかもしれない。もしかして、オリジナルの裏ビデオがあるんじゃないかと錯覚させるタイトルです。そこまで人間の欲望は深い!これ問題作ですよ。

夫婦のセックス動画をパソコンの修理に出したら上げられてしまった女教師の悲喜劇。弁明のPTAに出るのだが、そこで語られていることはわりと真面目な議論の映画だった。一応、女性教師に弁明するチャンスがあるというのが、ヨーロッパ(ルーマニアだけど)か?日本より人権的には進んだ国であるのだろうな。日本だったら問答無用に首だと思う。

女教師の弁明は、子供にスマホを与えすぎでネットの管理も出来ていない社会なのだという。セックスは夫婦の日常で悪いことではない。むしろそれを隠すほうが罪だ。それを学校で教えないのも駄目なんだ。そんなところか。映画では検閲画面で、そこにSNSのユーザーからのコメントが入るのだがよくある野次に混じって「フランク・ザッパか!」の書き込みに思わず笑ってしまった。最近見たばかりだし、ザッパは検閲反対派。

それでもPTAは保守的な人ばかりで、教育ママ的な人や家父長制的思考の男性、軍人やら、その弁明会がコントだった。ここの学校もエリート校なのだが、PTAはアホばっかだな。これは今のナショナリズム的傾向なのかもしれない。

三部に分かれていて、PTAの議論は第三部だった。第一部は、ルーマニアの観光的じゃない生の姿をこれでもかと観せていく。崩壊しそうなアパート。かつては彫刻の聖人が輝いていたんだろうな。落書きの壁。アメリカ資本のコカ・コーラやチェーン店のような街並み。交通ルールの乱れ。それらが社会主義国だった古い映像と共に女教師が学校へと辿っていく道行のロードムービー的に見せている。ベンヤミンの「パサージュ論」だよね。

それで第二部がアルファベットの順の言葉のカタログ。箴言みたいなパロディーみたいな羅列はシュールレアリスムだった。そこに過去の映像が流れてくるのかな。最近ブニュエルの映画を観たけど、ブニュエルはこのようなシュールレアリスム的悪夢の映像をみせる。それは過去の現実だけど。社会主義の権力の弾圧の中での世界カタログだったかも。

そういえばコロナ禍でマスクで口を隠しているのも検閲っぽい。そのマスクを外さんばかりの熱い?議論になるのだが。結末は三種類あって、最後がワンダーウーマンのコスプレ・プレイだった。これは予告編でも観られる。

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