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横顔が哀しい女の映画

『あなたの顔の前に』(2021/韓国)監督:ホン・サンス 出演:イ・ヘヨン/チョ・ユニ/クォン・ヘヒョ/シン・ソクホ/キム・セビョク/ハ・ソングク

解説/あらすじ
長いアメリカ暮らしから突然、妹ジョンオクの元を訪ねて韓国へ帰国した元女優のサンオク。母親が亡くなって以来、久しぶりに家族と再会を果たすが、帰国の理由を妹には明らかにしない。彼女に出演オファーを申し出る映画監督との約束を控えていたが、その内面には深い葛藤が渦巻いていた。サンオクはなぜ自分が捨てたはずの母国に戻り、思い出の地を訪ね歩くのか?捨て去った過去や後悔と向き合いながら、かけがえのない心のよりどころを見出していく、たった一日の出来事が描かれていく。

ホン・サンスの映画は結構観ているのだ。ホン・サンスが好きなわけでもないのだが、キム・ミニが出ているからだった。でもなんていうか自然な感じがいいのか悪いのか?もっと劇的な役をやってもらいたいといつも思うんだよな。

まあ韓国映画のエンタメを望むなら他の映画を勧める。良く言えば韓国のロメール。私小説的で劇的展開もあまりないのだが日常風景をさり気なく切り取りながら、癒やしがあるような。小津にも近いのかもしれない。ただそこまでのドラマはないが。

今回は少しはドラマ性があるのかな。アメリカ帰りの元俳優が帰ってきて韓国の発展に驚く。オープニングがソファーで寝ている時に窓に映し出す高層ビル群(マンション)。モダンで抽象画のような映像は、ゆったりしたリズムが心地良い。

妹と韓国のブルジョア的な朝食。アメリカでは酒屋をやっていたようで、あまり儲からなかったようだった。韓国の生活なら元女優ならば稼ぎがいいと思ったのだろう。妹はマンションを買うように勧める。

昼食は映画監督との約束があり、その前に昔住んでいた狭い庭の家が出てくる。幼少の時はもっと広いと思ったが大人になった現在では猫の庭といわれるようなぐらい広さしかない。監督と思春期に自殺しようと思ったことを話す。

そのときにすれ違う人の顔がみんな輝いて見えたので違う世界を認識したという。宗教的に近い幸福な世界で、すれ違うみんなの顔が輝いている。それが題名にもなっている。

監督としこたま飲んで、酔っ払った監督が明日短編映画を撮りに行こうと言い出す。それをセックスする為なのかと問いただすと監督はそうだという。そういう大人の関係なのか?監督は既婚者で息子はもう成人しているのだと言う。彼女は独身なのだが、妹も家族と出会うシーンがあったので、対称的な独身女としての映画を語っているようだ。多少訳ありの危ない女。

それを察知したのか、翌朝には監督から撮影の断りの電話が入る。留守電で二回聞きながら笑ってしまうのだが、二回目は悲しさも入っているような。

ホン・サンス監督との撮影は「信じられないほど自由」主演イ・ヘヨンが明かす『あなたの顔の前に』 https://www.cinemacafe.net/article/2022/06/03/79117.html @cinema_cafeより

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