シン・俳句レッスン87
やっぱ今日は夕焼けだ。夕焼けは名句が多そうだが、夏の季語なんだな。
ゆやけ見る見えざるものと肩を組み 市川勇人
夕焼けは死と結びついていると思えるのは彼岸性なのかな。だから晩夏なのか？「八月の濡れた砂」のイメージがかなり強い。
夕焼けやお前の中の夕焼けや 宿仮
今朝の一句。なんかどっかにありそうだな。検索したら
松鶴家千とせが出てきた。共通点があるのだろうか？「夕やけ小やけ」のパロディだが本歌取りと言えるかもしれない。
『俳人風狂列伝』（田尻得次郎）
『俳人風狂列伝』石川桂郎より、田尻得次郎。検索しても情報が少ない俳人だった。岡本癖三酔（おかもとへきさんすい）とは逆で極貧の中の投稿俳人だったようだけど、まとまった作品集が残っているわけではなく、こうした人によって語られる俳人だった。しかし、この俳人の俳句は好きだった。
拾い来し薯洗ふ背に花火の音
「音」が余計だったかな。ただこの人の俳句は境涯俳句と言ってもいいその姿を五七五で表現しているのだった。支持しない人は衒学的なところが気に入らないとする。衒学的なものなんてなく、それが田尻得次郎の生活だったのだ。お偉い俳人はそういう生活がわかっていないから衒学的なんて思ってしまうのだろう。
夜濯（よす）ぎの一夜妻待つ古雑誌
屑拾い業をやっていて庶民を見たままを詠んでいるのだ。
小澤實「なぜ俳句を作るのか」
小澤實『実力俳人への道 俳句のはじまる場所』から「なぜ俳句をつくるのか」。このへんは小澤實の師匠でも藤田湘子も言っているのだが、俳句を作るのに媚びるなということである。それは投稿などでその選者に合わせて入選するようなことで、そのへんは過去に入選したこともないので、自信を持って媚びてないと言いたいた。それは小澤實に対しても言えることで、小澤實にも媚びるなということである。
ただそうなると俳句の詠み友達も減らすしどうなんだろうなというのはある。そういう友が出来て切磋琢磨していくのがいいんだと思うのだが。一人目標とする師匠がいて、虚子と碧梧桐のように競い合うのは理想なのかなと思う。まあ、目標とするのが渡辺白泉であるから、現在の俳人で目標にする人が見えないというのはあるな。あえて言えば俳人を目標にしなければいけないということもあるだろう。私の目標は大江健三郎なのだ。俳句界の大江健三郎のような存在になること、ノーベル賞級であるのだから、そこらの俳人を相手にしてもという気持ちがあるのだった。芭蕉ぐらいかな。
その芭蕉が
俳諧の益は俗語を正す也 土芳
と言っているというのだった。弟子の土芳が言うのだから間違いがないんだろうけど、俗語は芭蕉が取り入れた言葉である。だから短詩として和歌に対抗できたのだ。それを正すというのはおかしくないか？正しい俗語ってなんなんだよ、という話である。俳句の型と伝統があってという話なのだが、それが俳諧時代から決められてきた伝統であるとするのだ。それは俳句じゃなく俳諧だろう。俳諧でも作っていろということなのである。
俗語を大いに取り入れるべし。それで表現の幅が広がる。正す必要なんてないのだ。俗語に何が正しいとかもない。正すことでそれは俗語としての力を失うのだ。そういうことだと思う。そういう伝統のようなものに縛られて正すという姿勢が嫌なんだと思う。何を偉そうなことをほざいているのかと。たかが俳句ごときに。小澤實が言うのは短歌は俗語に染まり切っているということのようだが、俳句界に俵万智が出てこなかっただけである。そういう存在は多くいるんだと思う。口語俳句の池田澄子とか、最近では神野紗希とか。それらを否定することは出来ない。ただ趣味的なものはあるが。
今日の十句が全然出来てなかった。
盗賊は俗語を盗んで一家なし 宿仮
俳句の標語みたいになってしまった。言葉は本来誰のものでもなく、盗賊といえども自然から言葉を学ぶのである。それが俗語と言われても一家をなすためには必要なのかもしれない。いつまでも権威的なものに従っていたのでは世界は変わらない。
俳句いまむかし
坪内稔典『俳句いまむかし ふたたび』から。
春
永き日のペンギン一羽背泳ぎす 中根美保
これはペンギンと背泳ぎが俗語なのかな？これを正すことはペンギンにクロールしろということか？そんなことは出来まい。ペンギン泳ぎか。ペンギン泳ぎはなんというんだろうか？実際に背泳ぎするペンギンもいたということだから、これは写生句になるのかな。そのぐらい永き日をペンギン観察についやしたということだろうか？
ペンギンも泳ぎ疲れて夕陽に染まる 宿仮
いまいち短詩になってないな。
ペンギンや夕陽に伸びる影一つ 宿仮
鶏の座敷を歩く日永かな 小林一茶
鶏は和歌でも詠まれなかったから俗語なんだろうな。そう言えば短歌でも斎藤茂吉は鶏を詠んでいる。座敷を歩く鶏だからかなり無礼な奴だった。これは鍋にするしかないということが茂吉の歌なんだろうか？一茶は放任しているよな。それでいいのだ。
鶏も夕陽に鳴くや天邪鬼 宿仮
雉鳴くと車下ろしてもひけり 田邊富子
雉は雅な鳥だよな。その雉の声を聞いて車を下ろしてもらったという俳人なのかな。雅すぎないか？何様なんだろう？
雉の眸（め）のかうかうとして売られけり 加藤楸邨
これも雅な俳句だが、そうした雅な雉も売られてしまうという俗社会を描いているのか？雉なんてめったに見ないから。野毛山動物園にいたかな。放し飼いにされていたと思ったが孔雀だったか？
この句の解釈として「食べられる雉」は冬というのだが、雉の繁殖期は春なので季語は春なんだという。冬のような気がする。雉鍋は上手いんだろうか？
雉鍋もクロネコ運ぶ夕ごはん 宿仮
動物は俳句に成りやすいのかもしれない。迷ったら動物を詠むことだな。
陽炎にしづまりかへる都心かな 中岡穀雄
俗は都心なのか？全体的に優雅過ぎるかな。俗っぽさが足りないような。三橋敏雄「いつせいの柱に燃ゆる都かな」は戦時の情景かな。
夕焼けや燃ゆる都の黙示録 宿仮
これもあまり俗がないな。社会詠ということで、どこかで戦争状態。
かげろふと字にかくやうにかげろへる 冨安風生
どういうことだ？ひらがな表記がかげろふのように見えるということだった。そうかな？意味がかげろへるだ。意味よりも音韻的にか音の連続がいいのかも。
春愁もヤクルト一本分くらい 中居由美
「春愁」が雅語で、「ヤクルト」が俗語。雅さが俗っぽさに負けているな。ヤクルトおばさんだったらいい句かもしれない。そうだ、ヤクルトおばさんを詠んだ句なんだ。春愁の人にヤクルト一本！
いつかまたポケットに手を春うれひ 久保田万太郎
『俳人風狂列伝』で田尻得次郎が久保田万太郎を褒め称えていたのだが。
簡単な言葉で詩心がある感じか？
夕焼けやポケットの石握りしめ 宿仮
投げない。石もにぎってないかもしれない。心の石。
四月馬鹿あっちこっちに気のあう木 中原幸子
よくわからん。気と木を掛けただけなんだろうか？「四月馬鹿」を俳句に詠むと上達するという稔典さんのよくわからない迷信。
四月馬鹿夕焼けニャンニャン始まるよ 宿仮
なにが面白くて「夕焼けニャンニャン」なんて観ているのだろう。変換で気がついたこと。「にゃんにゃん」って「娘娘」なんだ。
四月馬鹿夕焼けニャンニャン始まるよ 宿仮
夕焼けやポケットの石握りしめ 宿仮
夕焼けや燃ゆる都の黙示録 宿仮
雉鍋もクロネコ運ぶ夕ごはん 宿仮
鶏も夕陽に鳴くや天邪鬼 宿仮
ペンギンや夕陽に伸びる影一つ 宿仮
ペンギンも泳ぎ疲れて夕陽に染まる 宿仮
盗賊は俗語を盗んで一家なし 宿仮
夕焼けやお前の中の夕焼けや 宿仮
一句足りない。
夕焼けや一句足りないうらめしや 宿仮
適当だった。なかなか十句は難しいな。毎日作れるわけでもないし。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか？