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歳の差カップル

私には18歳年の離れたパートナーがいる。私たちは10年の付き合いになるが、一緒に暮らしていない。歳の差があることや、それぞれの生活パターンやプライオリティーが異なるからだ。私はシングルマザーで三人の子持ち、英語が達者なわけでもないのに小さなビジネスを持って大変な毎日を送っていた。18歳年上のパートナーには目の回るような生活で、今更自分の子育て期に戻る気力は彼にはなかった。私も子育てやビジネスなど自分のことで精いっぱいで到底パートナーの事を一番には持ってこられない状況だった。

やっと商売に見切りをつけ子育てもほぼ終了となり、将来のことを考えられる状況になった。と思ったのもつかの間、私は更年期に差し掛かり体調も気分も思わしくない。そしてフィットなパートナーも最近になって色々身体にガタが来て弱音を吐くようになった。歳が行っているのだから、以前より動けないのは当たり前。どうしてそんなに無理してまで動こうとするのか理解できなかった。でも、もともとアスリートの彼は動けないのなら死んだほうがましだと言う。あと何年生きていられるか分からないのだから、身体が動くうちは動かしてその幸せを感じていたいと言う。

そんな風に言われても、私には老人の嘆きの一つとしかとらえていなかった。

そうしたら、昨日こんなタイトルのついた小説を見つけた。
「余命10年」(文芸社文庫NEO)小坂流加著

どきっとした。自分も大けがしたり大病したりしているので死は身近に感じている方だと思う。そして、余命一か月から一年ぐらいまでは想像したことが何度もあるのだが、余命10年とは何ぞや。読む前に色々と考えてしまった。10年とはどれだけの長さなのか、短いのか長いのか、自分が余命10年だったら.... 困惑した。短いとも長いとも言えないこの10年、どう生かしたらいいのだ。

そしてその後やっと今年69歳になるパートナーの言っていたことに心を寄せる事が出来た。後10年ほどで80歳になるパートナー。それまで亡くなる人だって大勢いる。後10年生きていられるかどうか.... そんな事を毎日感じて過ごしていたのだ。私はどうしたら良いのか分からなくなった。

小説は80%読み進めたが、怖くなって止めてしまった。感情移入が激しくて涙が止まらない。主人公たちは27歳ととても若いので、生きているのが普通の年代だ。私たちカップルは51歳と69歳。傍から見てきらめくようなカップルではないけれど、それぞれ独立して生きているので、お互いに愛しているという純粋な感情だけで結びついている関係だ。

もしかしたら10年後はもう彼に会えないかもしれないと思うと恐怖でいっぱいになった。何時も元気だし、出会った時からかなり年上だったので、死に刻々と近づいて行ってることに気が付いていなかった。今年末っ子が高校を卒業したらやっと二人の生活を考える事が出来る、そう思っていたのに、近寄りすぎて大事になり過ぎたら失った時のショックが大きすぎる。そんな悲しい思いをするのは嫌だ。私は自分の保身を考えてしまった。

命の長さは誰にも測れないのは分かっている。私が先に死ねれば何の問題もない。でも、年老いたパートナーに私の葬儀のさせるのは余りにも忍びない。彼の葬儀が終わった翌月ぐらいに死ねないかな....などとどうにもならないようなことも考えた。

10年間離れて暮らして共に育んできた絆。もしかしたらもう既に彼と過ごせる時間の後半に差し掛かっているのかもしれない。彼はそれを感じているのだと思う。今度こそ一緒に寝食を共にしてお互いを更に深め合いたいと思う自分と、失うことを恐れてこれ以上前に出ることを躊躇する自分がいる。

とりあえず小説を読み終えよう。


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