イリノイ遠景近景

シカゴの南のイリノイ州シャンペン
トウモロコシ畑近く。
市井の人々の会話に聞き耳を立てる
近所のドーナッツ屋には毎日午後1時から4時半まで必ずやってくる65〜80歳の男達がいて彼らの他愛もない話を知らん顔して聞き続ける。

鹿狩りに行くのに茶色の帽子を被っていくような人間がいる国が経済の国際競争に勝てるもんか…

警察は市民からの募金に手をつける…そんな国が…

吸ってる煙草に文句を言われ、

この店に毎日通ってきてドーナッツ二個ずつ食べてりゃたいがいの病気は追い払えるぜ!…

こんな軽いエッセイ集かと思いきや…

地域にある
ホームレス女性の為の緊急シェルター。
そこへボランティアの運営スタッフとして
週3回働き始めた彼女。

屈辱的な扱いを受けてきた中国
人間の尊厳は?


歴史のうねりに翻弄され続けてきた
ユダヤ人の話。

傲慢な人種差別


訪ねたのは
搾取され続けできたアメリカンインディアンの彫刻家

そして陶芸家ドラ ツェぺ ペニャン
彼女も当初は搾取されてたが本人の思い知らぬ所で賞をとったのを皮切りに世界は彼女を見つけた。黒字に黒の模様。

物質的な豊かさで
人間の生を支える事は出来ない

粘土は買わず砂の多い不毛な大地から必要な分だけとってきて手でこねて息づかせる。
形をつける 轆轤は使わない 馬糞で燻す
砂漠の土は命をかくしていた
ドラの手がそれをあかるみに出したのだ



翻訳家の軽いエッセイだと思って読み始めたがなにが何が作者の力量に圧倒された。
いったい何者なのかと
Wikipediaでみると
経歴がまた多岐に渡ってる

大学時代は演劇研究会の女優
ノースウエスト航空勤務
六月劇場の前身である独立劇場の設立人の1人。渡米して日本領事館勤務。イェール大学でドラマスクールに通っている時にディヴィット グッドマンと知り合い結婚。帰国後
英文演劇雑誌の編集に携わる。のち夫婦で渡米。自らのユダヤ性に目覚めた夫とともに
イスラエルに滞在しヘブライ語を学習
アフリカ系やアジア系女性文学を多数翻訳

あの村上春樹は自身に影響を与えた翻訳のひとつに彼女の翻訳したリチャードフローディガンをあげている



あとがきによるとこの本は
小説新潮に「三界に住処あり」という題で
連載したエッセイを構成しなおした模様。

 古今亭志ん生が風呂敷の中で女性を戒める言葉として発した「おんな三界に家なし」とこんなところで出会うとは。

ここでない他のところに住んでる人たちに会いにいきその来し方そして行く末について忌憚なく肩肘張らずに尋ねてお喋りする。
それもかなり立ち入ってのお喋り。


住処とはつねにある具体的な場所をさしてるものであり、また場所に限定されないものでもある。
 住処は思想であり時間であり記憶であり人々を結ぶ関係であり出会いである
 彼女の行動力と聞く力 理解力に驚く。

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