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案内板


山陰のどかな温泉街へ日帰り旅行
ひと風呂浴びる前に辺りを散策する。
夏の日差しが痛い程左頬をさす

坂道を上がった所にある駐車場がある。

通り過ぎた後
ん?
引き返して案内板の前に立つ


「違反駐車は出られなくなります」

…○✖️万円頂きます
というのは見かけた事あるけれど

…出られなくなります


違反駐車したら
出られなくなるって書いてあるということは
物理的に出られなくなるのか
雰囲気的に出られなくなるのか
精神的に出られなくなるのか


どこかから誰かが見ていて
違反すると出られなくするのか

出られなくなった人は
何度も何度も脱出を試みるけれど
どうやってもここから出られない。

助けを求めるが蝉の声にかき消される…





看板の先の坂を地元の女性が登ってくる。

「暑いですねぇ。」
と声掛けると

「ホントにねぇ、暑いねぇ。」
汗拭いながら笑顔を返してくれたけれど

もしかしたら

駐車違反により出られなくなった方かもしれない。ウチへ帰ること叶わずあれから50年…
その間村の男と所帯を持ち子供5人を育て上げそれなりに幸せな人生だったけど時にふと思う。もっと別の人生があったはずなのに

彼女の後ろ姿が一軒のうちへ入っていく。

「た  だ  い  ま〜っ」

「お帰りー!」

元気な声が外にもれてくる

狂ったような蝉時雨はのどかな温泉街に
降り注いでいる。

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