異世界的な自己紹介

 noteを始めてみた。何故noteなのかというと、ツイッターのアルファどもがやたらとnoteを使っているので、「よく分からないがnoteはきっと凄いのだろう」という大衆根性で選んだわけだが、今のところnoteのココが凄いみたいなのは全く見当たらない。しかし流行りに乗るのもたまには良かろうと思う。
 ブログ的なことは昔、fc2ブログに書いていたが、パスワードを忘れてしまったし、リセット症候群的な感じで心機一転してこちらに書いていきたい。

 というわけで #自己紹介 だが、自己紹介といっても、どう自己紹介すればいいのか分からない。リアルな自己紹介であれば「私はどこどこの会社でなになにをしているアレです」という感じで、当たり障りのない自己紹介をすれば良いわけであるが、匿名インターネットで自己紹介となると途端に難しくなる。リアルな情報は開示できないし、仮に開示したところで有象無象すぎて意味がない。

 何かしら「これが俺なんじゃあ!」というアイデンティティを主張していかないと、きっと読んでもらう意味もないであろう。
 そういうわけで、俺は今アイデンティティを探しているわけだが、まったく見つからない。
 この地に生まれ、37年間生きてきて、これが俺だと主張できるものが何もない。空っぽである。後悔ばかりしてきた。
 その後悔も人間失格のような大層なものでもなく、「屁を出そうとしたらウンコが出た」程度の小さな後悔ばかりで、アイデンティティになり得るほどのもでもない。それにそういう小さな後悔というものは、きっとこれからの記事になっていくと思う。

 とにかくこれからnoteを始めるにあたり、自己紹介書かねばならない。どう収束させればよいのか、早速分からなくなって来たので、こうなったら、なろう小説の導入風に自己紹介してみようと思う。ちなみに俺はなろう小説を読んだことがない。


 僕の名前は≪いしかく≫。東京のIT企業に通う37歳だ。普段は5chちゃんねるの嫌儲でコテハンをしている。スレに何度も書き込みするけど、誰にも相手にされない嫌儲界のおちこぼれだ。ツイッターでは@ishikaku_530k というアカウントで思ったことなどを好き勝手に呟いているが、語るに落ちるしょうもないフォロワーどもしかいないので、こちら真面目に現代の搾取について語っていても「ちんぽ」みたいなリプしかこないし、英語が苦手で「carry out」を「curry out」と書いてしまったりしては凡愚どもに嘲笑され、枯れ果てた井戸のように暗い日々を送っている。
 それでも、僕には一つだけ希望があった。それは通学中、いつも同じ時間に同じ交差点で見かけるあの娘のことだ。すらりと伸びた黒髪ロングの彼女はどこか憂いを秘めた瞳をしており、神秘的で、まるで別の世界から来たような不思議な雰囲気を醸し出していた。
 僕は彼女の名前すら知らないし、なんの取り柄もない僕なんかに不釣り合いなのはわかっている。それでも、もし彼女と知り合いになれたなら、どんなに素敵だろうか。彼女のことを考えると夜も眠れないのだ。名前も知らない娘にこんなに強く憧れを抱くなんてどうにかしてるのかもしれないが、遠くから彼女を眺めるだけでも僕の心の井戸には清らかな水が滾々と湧き出し、幸福に満たされた気分になる。
 僕の生きがいは彼女だけだ。今日もその生きがいに逢いにいくために、僕は学校の鞄を担いで勢いよく玄関を飛び出した。

 「とう!」

 「あ、あぶねえ!!」

 ≪ギャアァァァァァーーーー!!!≫

 トラックがまるで怪物の鳴き声のようなブレーキ音を発しながら迫ってくる。しまった、完全に浮かれていた。確認もせず道路へ飛び出してしまったのだ。
 思わぬ出来事に腰を抜かして転んでしまった。もうだめだ! 間に合わない! しかしこのトラックドライバーは凄腕の持ち主だった。ブレーキでは間に合わぬと踏んで、華麗なハンドルさばきで車体を斜めに傾けながら、進路を変えた。そしてそのまま壁にぶかってしまわないように反対へ切り返すと斜めになった車体がぴたりと真っ直ぐに戻り、トラックは僕の頰をかすめて通り過ぎていく。

「馬鹿野郎!死にてえのかぁ!!」

 ドライバーの罵声はドップラー効果により遠ざかるにつれ低くなって搔き消えた。
 まるで奇跡のような運転技術だった。九死に一生を得た。何か運命めいたものを感じた。あそこでもしトラックに轢かれたらどうなっていただろう。きっと僕は彼女に声すらかけずに死ぬことを後悔しただろう。そう考えると今日こそ彼女に声をかけるべき時のような気がした。命はいつまで続くか分からない。一寸先は闇なのだから、後悔のないように生きるんだ!

 そう決心していつもの交差点へ向かうと、彼女がいた。しかし、彼女の隣には男がいた。しかも彼女と男は手を繋いでいる。

「ブッ!チッ!パッ!」

 突然ウンコが漏れた。しかしそれは僕にとって、朝食の食パンについた焦げ目より些細なことだった。
 いったい誰だ、あの隣の男は、まさか……まさか……彼氏……!?
 しかも眉毛剃ってて額の両端に剃り込みを入れて「喧嘩上等夜露死苦」かいう刺繍をあつらえた、どこで売ってんだよそれって感じの学ラン着てるし! 今は令和だぜ!? 昭和からタイムスリップしてきたのかよ!

 「うわああああああああああああ!!」

 僕はショックのあまり彼女と逆方向へ走り出した。

 ウフフフ……うはははは!! ですよね! ですよね! あんなに綺麗な娘だもの、彼氏くらいいますよね!! そりゃそうだ!! 彼氏がいないと考える方がおかしいわな!! 僕が見ていた神秘は彼氏のものだったんだ!! あははははは! お幸せに! どうかお幸せに! あーっははははははは!!!
 泣けるぜ畜生!!夜露死苦!!!!

 目の前が見えない。涙で溺れそうだ。世界が傾いていく。足は目的地を知らぬのに止まりやしない。完全に暴走状態だ。
 知らぬ間に、僕は道路に飛び出していた。

 「あ、あぶねえ!!」

 誰かが叫ぶ。デジャヴかな? 涙を切るために瞬きをすると「ISUZU」の文字が目前に迫っていた。

 いまトラックとして最先端をいくデザイン。運行時のドライバーの動きを徹底的に分析。人間工学に基づき運転疲労軽減を最優先に設計した快適キャビン。先進機能の投入と積載性能を両立。車両トータルで軽量化を追求することにより、高積載を確保。すぐれた積載性・連結性。空力からエンジン、制御にいたるまでお客様の運行形態において、最大のパフォーマンスを発揮するようにチューニングした、実運行に強い燃費性能。五つ星トラック「GIGA」シリーズ。

 いすゞはトラックの常識を超えていく。

 一方、僕は歩行者の常識を超えていく。

 ≪ドーーーーーーーン!!!≫

 今度は無理だった。あんな神懸かり的ドライバーが何人もいるはずはなかった。当然、今まで受けたことのないような衝撃で吹っ飛ぶ。目の前が真っ白になった。僕は死んだのか?

「うっ……」

 気がつくと僕はふかふかのベッドに寝かされていた。どうやら死に損なったようだ。目を開けると中世の侍女のような格好をした女が心配そうにこちらの顔を覗き込んでいた。

「ああ……王子! 王子の意識が戻りましたわ!」

 女は感嘆の声を漏らして誰かに知らせに行った。
王子だって……? まさか僕を指して言っているのか? ここは一体どこだろう? 体を起こしてあたりに目をまわす。大理石で彩られた壁がキラキラと光っている。まるで王族の部屋のようだ。

 まさか……。

 僕の中で一つのシチュエーションが思い浮かぶ。

 いや、これは、そのまさかだ。
 どうやらここは僕の知らない世界。僕は異世界の王子に転生してしまったのだ!

 やれやれ、僕はこれからどうなるんだろう……。

……どうもならねえよ!!

ええ、こんな感じだが、とりあえず宜しく……。

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