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外道祭りなンだわ - 今日釣れねえンだわ

 盆休みに北九州の実家に帰ったとき、響灘の釣り桟橋に行った。 去年の冬にも行ったのだが、その時は寒風に吹かれながらの釣行で、海のどこを見ても魚などおらず、アタリの一つも出ないという散々な有り様であったが、今回は桟橋から海を覗くとサヨリっぽいのがワラワラと泳いでいて、かなり魚っ気がある。

 これは期待するしかないと思いながらチヌ狙いで竿を出したものの、釣れねえンだわ。
 水深が10m強ほどあるにも関わらず、軽いウキしか持ってなかったし、潮がやたらとうねっていたので、なかなか針が沈まず仕掛けが馴染むまで非常に時間がかかった。 そんでもって釣れるのはアジとチャリコ(真鯛の子供)のみ。

 このままだとタモが必要になるような大物がかかることはなさそうだったので、釣ったチャリコを使って泳がせ釣りをしてみたもののこれもまた釣れない。

 しかし、しばらくすると水面に何やら変な魚影が……。

 ハンマーヘッドシャークが水面のサヨリを追いかけて泳いでいる。 こんなもの釣ったところで食うものでもないのだが、狙いのチヌも全然釣れないし、実はまだ泳がせ釣りで魚が釣ったことなかったし、チャリコをコイツに見せたらどう反応するかというところにも興味があったので、泳がせていたチャリコを水面まで上げる。

 すると、ハンマーヘッドシャークはチャリコの存在を認めるやいなや、チャリコをめがけて一直線に泳いできた。 身体をくねくねさせながら泳ぐのがちょっとかわいい。
 40cmくらいだったので稚魚だろうか。鮫にしてはかわいいサイズである。 しかし、小さくともそこはやはり鮫である。 チャリコに食いつくと頭を横に激しく振って、あっという間にチャリコが真っ二つになってしまった。
 そして二つに裂かれたチャリコの針のかかってない方にかぶりつく。

 (あらあら、まだ小さいのにこんなに元気なのね❤)

 チャリコを貪るハンマーヘッドシャークをママショタのママになったような気持ちでうっとりと眺める。 ハンマーヘッドシャークはあっという間にチャリコの半身をたいらげると、俺が食え食えとほくそ笑んでいることなどいざ知らずに針のかかったもう半身にも貪欲に喰らいつく。
 自分が張った仕掛けにターゲットが思惑通りかかる様を見るのは実に気持ちのいいものである。 ハンマーヘッドシャークは見事に針にかかり、竿が曲がる。  しかし仕掛けの軽いフカセならいざ知らず、エレベーター仕掛けなので針が太く、竿も重くて硬いので40cm程度の魚に負けることはない。 一気に抜きあげてゲット。

身体の割に意外に軽い

 割と珍しい魚なので「写真撮らせて下さい」とか周りの親子等から声をかけられたりしたので、数分ほど撮影タイムをこなしてもらったあと、このハンマーヘッドシャークには海にお帰り頂いた。

 そのあとも釣りを続けたが、アジくらいしか釣れない。 仕方ないので今度はこのアジを使ってエレベーター仕掛けを行う。しかし全然反応がない。

「エサもなくなってきたし、そろそろ帰るか……」

と帰り支度の準備を始めた瞬間、泳がせ釣りの竿がガツンと曲がり、リールのドラグがギリギリと音を立てて道糸が放出された。

 (大物だ!間違いない!)

 ファイトを開始すると、かつて味わったことのない重量感が腕に伝わる。

「とんでもねぇ魚だなぁ!? これぇ!?」

 なんとしてもこの魚は釣り上げねばならない。 しかし、ものすごい引きである。 リールを巻けども引っ張られて足元まで引き上げることができない。 5分ほど駆け引きを続ける。 魚の方も次第に疲れてきたのか竿を大きくしならせながらも、なんとか引き上げると、ぬらりと黄色く巨大な魚影が一瞬見えた。

「シイラかこれ?」

 隣でタモを構えてくれている人がつぶやく。周りの人がざわつき始める。シイラといえば金色の美しい魚体で大きければ1メートルを超える魚であり、釣り人によってはそれを専門に狙う人もいるほどの魚である。
 どうやら凄い大物がかかったらしいぞということで、気づけば俺の周りにはギャラリーが出来ていた。

 更に引き上げると魚影がはっきりと浮き出る。

 ううん、これは……。

「エイか……」

 周りも「カワサキか……」って感じのノリで、競馬場のレースが終わって去って行くおっさんのように白けながらギャラリーが散り散りになっていく。

 エイは多くの釣り人にとって厄介な魚である。 そんなに珍しくもないし、調理するのも大変だし、何より毒針があってキープするにしてもリリースするにしても面倒なのである。

 タモを構えてくれている人も多分、「こんなでかいエイを釣り上げたところでどうすんだ……」と心の中で思ったに違いない。

 しかも、このエイがさっさと釣り上げられたらよいものを、この期に及んで抵抗を始めて強烈な引きで海に潜っていく。ギリギリとドラグが鳴って竿が弧を描く。ああこれが青物や座布団ヒラメだったらどんなにいいことか……。

 更に数分格闘してようやく取り込むことができた。

 サイズと重量だけなら今まで釣り上げた魚でダントツである。まあ、捌いたら美味しいらしいのだが、毒針が怖いし、そもそもこんなのが入るクーラーボックスなんて持ってない。

 結局海にお帰りいただいた。

 しかし、エイとはいえ、このように大きな魚が釣れるのが玄界灘のポテンシャルである。

 後日リベンジしてその際は無事青物ゲット。

一番下のブリかヒラマサの子供がめっちゃ美味だった。

 また北九州に帰った日には行きたいと思うンだわ……。

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