晩秋

もうすっかり古びた
そのあばら家の屋根にも
ほこりがたまって

曇った窓ガラスにも
太陽のひかりは射し込み
朝は訪れ
何の関係もない人たちが
通りをかけてゆく

時より近所の野良猫が
冷やかしにやって来たり
どこからか風に運ばれた
花びらや落葉が
休息を得るように
殺風景な庭に降り立つ

錆びた井戸はもう
役目を終えた、という顔で
しずかにたたずみ
あるじを失くした
犬小屋もそのまま

なにもかもそのまま
あの頃の
そのままのまんまで
ただ時だけが
すべてを失ってゆき

今はもうすっかり
子どもたちの
手のぬくもりすら忘れた
一本の柿の木だけが
その庭に立っている

古びた家を見守るように
そして今年も柿の木は
実を落とした

ぽたり、
ぽたり、ぽたりと
誰にも知られることなく

柿の実を、落としました

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