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(詩集)きみの夢に届くまで

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詩の数が多いので、厳選しました。っても多い?
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#みんなでつくる春アルバム

(詩)きみの夢に届くまで

この夜の何処かで 今もきみが眠っているなら この夜の何処かに 今きみはひとりぼっち 寒そうに身を隠しているから 今宵も降り頻る銀河の雨の中を 宛てもなくさがしている 今もこの夜の都会の片隅 ネオンの雨にずぶ濡れに打たれながら 膝抱えさがしているのは きみの夢 幾数千万の人波に紛れながら 路上に落ちた夢の欠片掻き集め きみの笑い顔を作って 都会に零れ落ちた涙の欠片の中に きみの涙を見つけ出せば 今も夢の中で俺をさがし求める きみの姿が見えるから この夜の何処かに 今もきみが

(詩)木洩れ陽の中へ

わたしが鳥になったなら わたしの巣は 木洩れ陽のあたる場所に作ろう わたしが子犬になったなら わたしのしっぽを 木洩れ陽が揺れるのにあわせて振ろう わたしが野良猫になったなら 一日中木洩れ陽の中であくびしよう わたしというよごれたものさえ 存在することの許された この世界と歳月 わたしが風になったなら わたしが帰る場所は わたしが風になったなら わたしはいつも 木洩れ陽の中へかえろう

(詩)風の無人駅

朝の電車に遅れたら次は昼 昼のに遅れたら次は夕方 それにも間に合わなかったら また明日……。 ここはそんな田舎駅 暇だから駅員もいない 時より近所の年寄りたちが ホームのベンチで 錆びた線路を眺めながら 日向ぼっこしているだけ そして老人たちすら いなくなったら あとは草と風と 虫たちの駅になる 時より雨や雪や 潮の香りが訪れ 夜になれば 星も降り注ぐほどの しずけさの中 風だけが 彼らにしか見えない 夜行列車に乗って 銀河へと旅立ってゆく ここは無人駅 風の銀河鉄

(詩)四がつ十七にち

さくらのきせつにちるなんて あなたらしい おかあさん きょうがあなたの あたらしいたんじょうび ※命日2022.4.17 ※個人的な投稿となり、申し訳ない。 母については姉に面倒を見てもらっていた関係で、殆ど顔を合わせることもなく、いきなり死んだと言われても実感がわかなかったです。けれど時が経過し、母子家庭で育ててもらった恩もあるので「ちゃんと供養しなきゃ」との思いにやっと至りました。 仏教の人間ではありませんが輪廻転生は信じているので、こんな戯言となりました。ご批判はあ

(詩)散花

「さよなら」 風または 無風の空気中の ありがとうが含まれた さよならが好きさ 花が 風または 無風の空気中で 散っていく時 誰にも聴こえない わずかな空気の 振動の力を借りて ささやいたさよならが 聴こえた気がした それは 昔好きだった人に とうとう言えなかった さよならみたいで ありがとうが隠された さよならが、好きだった 花は散っても大地にちゃんと 種が 残っているみたいでさ

(詩)片隅の草の花のように

春なんて言葉も 知らない草木でも にこにこ 笑っている気がする 春は魔法のように 野に街に微笑みを 連れて来るから不思議 人見知りなきみは 高嶺の花であろうなど 望みもしなかったのに その容姿の美しさゆえ 男たちが放っておかなかった 他の女の子たちから妬まれた 何をしても 目立ってしまうきみは 段々と自分の感情を 押し殺していったね クリスマスもバレンタインも 嫌いになった 男たちは きみに真紅の薔薇や ゴージャスな蘭の花束を贈った きみに似合うと思ってね だけどき

(詩)潮干狩り

わたしたちを見たら 恋人同士だと 人は思うだろうか 互いに お目あての相手と 相手とがくっついて どこか夜のちまたに 消えてしまい、取り残されて 仕方なく帰りの山手線を 新宿駅のプラットホームで 待っている その男性とわたしと ふたり並んで そんなわたしたちを ここはまるで 週末の新宿の人込みは まるで遠い海のようね たえまなくつづく人の足音が なんだか しおざいのように響いてきて ふと、こんな五月前の ふるさとの海の 家族で行った潮干狩りのこと 思い出した 浮

(詩)散花微笑み

桜は直ぐに散ってしまうけど ピンクの花びらは風に乗って どこまでも飛んでゆく ピカピカキラキラのまま 飛んでゆく 娘よ だからきみ 絶望することなかれ きみの微笑みも 風に乗って飛んでゆく どこまでもどこまでも 飛んでゆく ピカピカキラキラの まんまでさ