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(詩集)きみの夢に届くまで

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詩の数が多いので、厳選しました。っても多い?
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2022年2月の記事一覧

(詩)雪だるまの会話

ぼくたち 雪でできているから 冷たいはずだよね 子供たちが 白い息をはきはき つくっていたし こんなに風も 空気も冷たいし 冷たくなかったら ぼくたち とけてしまうはずだよね なのに なんだかぼくたち あったかいね ほっぺただって まっかにほてるくらい あったかくて やさしくて ぼくたち こうふくだよね ほら こんな真夜中なのに 子供部屋の窓から ねむたそうな つぶらな瞳が ぼくたちが とけていないか 心配そうに見ているよ

(詩)結晶

あ、ゆきだ ほら、ねえ、ゆきが 空からちらちら ひらひら舞い落ちて 舞い降りて こっちへやってくるね どうして雪は あんなに白いのかな 今もどこかで誰かが 夢をつかまえようとして もがいている 人知れずひとりぼっちで もがいているから 人がどうして人に 感動するか知っているかい みんな人なんて 生まれた時からずっと 見てきたはずなのに どうして人は どんなにみじめな姿になっても 生きることをやめないか 生きていることだけは やめてしまわないのか あ、ゆきだ ほら、ね

(詩)冬のカルーセル

止まったままのカルーセル 雨の日だけ カルーセルが回っているのを 見た子どもは カルーセルは雨の日だけ 回るものだと思う 風が吹く時だけ カルーセルが回っているのを 見た子どもは カルーセルは 風が回しているのだと思う 止まったままのカルーセル ひとりの子は 雨が降るのを待ち 別の子は風が吹くのを 待っている 止まったままのカルーセル 雪が降る時だけ カルーセルが回っているのを 見た子どもは もう一度 雪の中で回る カルーセルが見たくて 冬の遊園地のすみで じっ

(詩)雪のにおい、雪の音

背中にとけた雪の一片を 猫が気付かないでいる ふっと冷たく思ったろうか 雪とも知らずに 野良猫の夢の中にも 降るといい ダンボールの家にも 積もればいい 夢から醒めた小猫が 雪のにおいを嗅いでいる くんくんくんくん この物体は一体何だ 夜明け前に 夢から醒めた野良猫が 耳を澄まして 聴いている雪の音 いとしかった人の足音 思い出すように、聴いている

(詩)サンタクロース

自分より 不幸せな人を見ると 自分が幸せなことが なんだか 恥ずかしくなる 人込みの中で 泣いている人を見ると 笑っている自分の顔が ロボットのように思う 飢えた子どもたちの映像を TVでながめながら おなかいっぱいの ごはんを食べている わたしがいる 電車を下りて 住む家のない人たちが ふるえている冬の通りを 足早に通り抜け 暖房の効いた 家のドアをあける時 やっぱりどうしても 振り向いてしまう わたしはばかです、ただの なあんにもいいこと なかったんですよ わた