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巻き込む力_博論日記(2024/04/20)

朝4時。木屋町のマクドナルドでスマホを充電しながら夜明けを待っている。

さっきまで「岸政彦の20分休み」をぼんやり聞きながら手帳をつけていた。おじさんにとって「キムタクみたいなおじさん」という形容は塩梅ようなくて「舘ひろしみたいなおじさん」という形容はよい塩梅なんかー。親戚のおっちゃんで、お盆の集まりとかにいてくれたら安心するのは、と想像したら荒俣宏さんの顔が浮かんだ。「荒俣宏みたいなおじさん」いいなあ (めっちゃぼんやり聞いていたので意味取り違えていたらすみません)。

眠くはないのだがこの時間帯はやはり寒く、それがちょっと堪える。

それにしてもマクドナルドで朝を待つなんて、20代以来だ。あの頃は家族や生活習慣によってではなく親密な友人関係の網の目のなかで自分を安定させようとしていた。研究室に夜遅くまで残って作業し、夕食を友人たちと食べ、時には銭湯に行って大学に泊まることもあった。バイトも友人たちの行きつけの居酒屋だった。
マクドで夜明けを待っていると、そんな日常があったことを思い出す。

今日はこれから朝バイトに出て、10時頃に帰宅して一眠りする予定だ。なんでこんなことになっているかというと、もう明白に「そうそうないこと」が起こったからで、それはある先生の「巻き込む力」によるものだったと言える。

詳しく説明すると、今日私は仕事終わりにある研究会に参加してきた。そして午前2時にお開きになるまで、懇親会(三次会)にも出てきたというわけだ。
その研究会には1回しか顔を出したことがなかったのだが、昨年から参加している読書会を主宰している先生に「今回の研究会はA先生の退職記念講演だから、おもしろい話が聞けるかもよ」と誘われて、行くことにした。
A先生は私も名前を知っている著名な方で、研究会には遠方からも人が駆けつけた。
そのなかになんと、私の修士課程の指導教員のB先生もいた。

私の博士後期課程の難航ぶりは今まで書いてきたが、実は修士課程はもっとひどくて、本当に大変だった。B先生は私のことを何度もひっぱりあげようとしてくださったし、たくさんのチャンスをくださったのに、私は恩をあだでかえすようなことをたくさんしてしまった。
その申し訳なさと情けなさと、それから精神状態の不安定さから私はB先生に破門にされると勝手に恐れて、その前に自分で自分を破門に処してしまった。

逃げるように修士課程を負えて、少しおちついて博士後期課程に入学したとき、B先生にその旨報告するメールを書いた。でも返事が返ってこなかったので、やっぱり破門か……と完全に心が折れてしまった。
修士の時に通っていた大学、住んでいた街、親しくしていた人たち、そのときに考えていたことなどにもアクセスしづらくなっていった。

その先生と、今日ばったりと会ったわけである。
研究会の休憩時間、後ろ姿ですぐわかった。
私の方が先に見つけて一瞬「あっ」と息を呑んだけれど、間髪入れずに「先生、ご無沙汰してます」と話しかけることができた。先生がどんなことを思っておられたかはまったくわからないが、普通に雑談してくださった。
その一連の流れに対して「ああ、私いろいろ大丈夫になったんやなあ」としみじみ思った。

さらに懇親会でお酒が入ったあと、賑やかな会場の熱気のなかで、先生が他の先生に「前の大学の教え子」と私を紹介してくれて、なんだかすごくほっとした。自分が教えた子やと思ってもらってるんやと。

不肖の弟子すぎて自分に大きくばってんをつけずにはおれなかったのが、ようやく弛んだ気がする。

特に感謝すべきは、今日の主役のA先生である。A先生が退職なさるのでB先生はわざわざ東京から駆けつけたわけで、A先生のご研究の射程が広いからこそ読書会を主宰する先生が「こんなイベントがありますよ」と異なるバックグラウンドの私に声をかけてくれたわけである。

A先生の発表にコメントを寄せたある先生は、A先生は調査地の人・研究者・行政担当者・その他ありとあらゆる人を「巻き込む力」が強いと評していた。
きっとその力で、10年ぶりに私をB先生と出会わせて下さったのだと思う。A先生はフィールドのみならず退職記念の講演の場でも、まったく意図せず一人の人間の10年の拘泥を払拭するミラクルを起こしておられたということだ。

その先生の講演のなかで励まされた言葉。

遠いところにある一見ばらばらな二つ以上のことがらを結びつけて新しい名をつけ、新しいものの見方・価値を提示することが重要だという話のなかで、それを可能にするために必要なものは
①経験
②自分自身について誰よりも考えていること
だとおっしゃっていた。

もしかしたら、もしかしたら②は日々の習慣になりつつあるかもしれない。

本当はもっといろんなおもろい話を聞いたのだが、今日はここまでにしておく。
朝バイトに行く準備を整えよう。

■メモ

今週の朝ルーティン、お味噌汁とコーヒーは、毎日は無理だったけどそこそこクリア。
火曜日の研究ミーティングでは解析アドバイスをもらう。Rコードまわす。
仕事は無遅刻無欠席。よし。
来週月曜からに向けて整える週末にしよう。

<To Do>
・投稿論文2:修正(4月31日〆切)
 ・Fig 全体修正 (来週火曜ミーティングで見せる)
 ・査読者2_コメント番号22に対する回答文書作成(来週zoomミーティング依)

・投稿論文1:再査読修正(6月30日〆切)

・システマティック・レビュー:二次チェック中
・博論本文:
 5月(予備審査委員会立ち上げ願い)
  7月予備審査?
  9月口頭試問?

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