aoneko_y

地方に住む自己顕示欲の強いしがないOLが紡ぐしがない文章

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最近の記事

私たちは誰なのか 1

「俺がすきなら、俺だけを見てろ。他の男に気を逸らすな!」 そう大声で叫んだ彼の切れ長な目が一瞬私を捉えた気がした。そうだったら良いなという願望がそう思わせたのかもしれない。 私は、他のキャストに揉みくちゃにされながら笑う彼を見て、心を決めていた。その舞台の帰り道、恋人と呼んでいた男性に別れを告げた。 最初は友達の付き合いで観に行った舞台のキャストの1人にすぎなかった。名前も知らない彼が演じた役が私の推しだったから、という理由もあるかもしれない。私はいつの間にか、彼を目で追

    • 雷とへそ

      突然ですが、私にはおへそが無いのです。 人間なら誰しもが持っているそれを持っていないとは何ゆえか。 それは私の出生の時に話は遡りますので、割愛させていただき、私にはへそが無いという事実だけをお伝えしておきます。 子どものころ祖母に、「雷さんにおへそ取られてしまうよ」と言われたら、「私おへそないもん」と返す可愛くない子ども。 それが私でしたが、子どもの頃もそしていい大人になった今も私は雷が大嫌いです。 ゴロゴロというあの独特な音も、そして落ちた時の地響きもすべてが嫌い。しかし

      • 小さな小さな蕾のおはなし

        小説にするには浅く、思い出として残すには濃いそんな話。 好きと伝えるには淡すぎる気持ちを持った19歳の夏。 推しに似たその人に会える夜のバイトがとても楽しかった。 同じバイト先の先輩。まだ未成年の私には、4つ年上の彼がとても大人に思えた。 基本塩対応なその人は、私の話なんて聞いてない様に見えて、ちゃんと考えてくれるそんな不器用な優しさを持っていた。 バイトが終わる深夜0時から3時まで話してたり、朝まで飲んで酔って朝の散歩をしたり、深夜ドライブしてそのまま早朝から公園

        • Nem'oubliez pas

          街灯が灯る夜半過ぎ、職場の飲み会の帰り道。 職場の新年会だった飲み会の席で、お酒が得意ではない私は、黙々と食べた。そして一緒に帰ってる相模くんも下戸なため、私の隣に座って、いつもの様に、読んだ本、観た映画の話を一方的に私に聞かせてくれた。時々、唐揚げや厚揚げ豆腐を無理矢理口に押し込んで黙らせる。そんなやりとりに慣れた職場のみんなは、見事に私たちをスルーしていた。 沢山美味しいものが食べれたし明日は休みだから、本を読むか映画を見るかとルンルン気分で予定を考えながら帰っている

        私たちは誰なのか 1

          夢ゆめユメ

          大学で心理学を専攻していた頃読んだ本に、夢を見て覚えていたらメモを取りなさいと書いてあった。それが何の本でどんな内容だったかの記憶は一切ない。けれどその一文が強烈に印象に残っており、それから私は携帯のメモに夢の内容を覚えていればすぐ書き出すようになった。私のスマホのメモには夢というフォルダがあり、313個のメモが収められている。 話はかなり遡るのだけれど、小学校低学年の頃は祖母と一緒の部屋で眠っていた。祖父の仏壇がある祖母の部屋は、畳張りの和風な造りでそこに布団を隣同士敷い

          夢ゆめユメ

          青い春とはよく言ったものだ

          不思議なことに、良い記憶というのは時が経てば経つほどに美しく彩られていくものである。 かく言う私にも、平凡ではあるが良い記憶というものが存在している。 あれは、女子高生という総称が当てハマるうら若い時分。青春に相応しいはずの登下校時、青春には程遠く1人で過ごしていた。 語弊が無いように補足しておくと、数人の仲の良い友人はいる。 学校から駅の道中15分、父親に買ってもらった赤いMP3ウォークマンを制服のポケットに入れ、ダウンロードした100曲以上の曲をシャッフルして聴きなが

          青い春とはよく言ったものだ

          しがない

          しがないとは 取るに足らない、つまらないという意味を持つのである。 私は私を常々、「しがない人間」だと思っている。 さて、ここで少し自己紹介をしていこうと思う。 地方と分類される、3大都市からはみ出た場所に生まれ落ち、そこから一度も出ずに30歳という節目を超えてしまった。 車を所有していなければ不便な土地のため、免許を大学生の時に取得した。 運転歴10年以上になるが、教習所で必死にステアリングを操作したS字クランクには、まだ1度も出会えていない。 小中高大と実家から通い、

          しがない