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ざっくり学ぶ、危険物輸送のきほん

今回は危険物の輸送について、ざっくり説明します。

輸出入と同様、危険物も苦手な方も多いのでは?と思います。

しかしながら危険物の輸送は、もし事故が発生すると環境破壊人命が失われる等の公共の安全を脅かすおそれがあります。

荷主も輸送業者もどちらも社会的責任が重いので、その概要をしっかり頭に入れておきましょう。


危険物とは?


危険物とは

健康、安全、財物又は環境を危険に曝す恐れのある物件又は物質」

ICAO第18附属書で規定されています。

要は扱いを間違えると爆発や火災が発生したり、毒性があるなどの”危ないモノ”です。

法規制


危険物輸送が難しいのは、輸送モード危険物の種類によって法規制が複雑に分かれ規定が細かい点です。

大きくは以下の法令で規制されています。()内はこの記事での略称

航空輸送:航空法・航空法施行規則
             (航空法等)

海上輸送:危険物船舶運送及び貯蔵規則
              (危規則)
陸上輸送:消防法・火薬類取締法(火取法)
               ・毒物及び劇物取締法(毒劇法)
     ・高圧ガス保安法(高圧ガス法)

               ・放射性同位元素等規制法
                  同車両運搬規則(RI規制法等)

危険物輸送の規制概要

航空・海上輸送は海外と関わるため国連勧告からフローダウンされ、それぞれの輸送として日本の法律がまとめられているのに対し、陸上輸送はその危険物毎の国内での取扱が定められ、その一部として輸送ルールが規定されているので注意が必要です。

さらにアイテムによっては重複して適用されますし、国内の単純な移動でない限り、複数の輸送モードが使われるので基本的に複数の法令を確認する必要があります。

各局のHPもチェックしてみて下さい。
国交省 海事局 危険物とは
国交省 航空局 危険物関係法令

危険物ラベル


危険物の輸送にはラベル表示が義務付けられています。ラベルが一番イメージとして分かりやすいので抜粋したラベルを見ていきましょう。
非常に種類が多いので、下表はごく一部をサンプルとして表示しています。

危険物ラベルのサンプル

港の近くに行くとこの表示を見かけるかも知れません。

多数のラベルがありますので詳細はこちらも参考にしてください。

SDS


危険物輸送となれば、まずはSDS(安全データシート: Safety Data Sheet)の準備です。これは製品の危険有害性情報が記載された世界標準の書類です。

危険物に該当する製品を製造しているメーカーであれば大半は作成していますので、メーカーのHP等で調べてください。

各種記載がありますが輸送に関しては14項に記載するルールですので、まずは14項を確認です。

稀に別項目に一緒に記載されたり、記載が無い場合がありますので、これはメーカーに問い合わせましょう。

14項では危険物クラス国連番号等が確認できます。詳細はこちらも参考にしてください。

UN No.(国連番号)


国連で決められたその危険物の危険性を表す番号です。このUNナンバーで積載方法や梱包方法の詳細が決まりますので、この番号が確認できれば輸送業者での準備が円滑に進みます。

番号はUNに続いて4桁の数字で表されています。例:UN3480

番号の詳細はこちらで確認してみて下さい。


危険物クラス


危険物クラスは船舶や航空機への積載のためにクラス分けし、積載方法、積載場所、隔離方法、混載方法などを指定するものです。1から9まであり船舶・航空機の積載プランニングする際に使います。

船の場合は船倉内ではなく、甲板上への積込が基本になり、居住区、エンジンルームからできるだけ遠ざけての積載されます。

航空機の場合は旅客機には積めず、貨物機にしか積めないものがあります。積載量の制限が船に比べ厳しいので注意が必要です。

船の方が危険物は運びやすいですが、稀に船では積載できず、飛行機なら運べるモノもあります。

少量特例・指定数量


この少量特例が適用されない危険物も多数ありますが、特定の危険物で少量の場合、危険物輸送の規制から除外、緩和されるものがあります。サンプル程度ならコレに該当しないかチェックしましょう。

指定数量は国内規制でその数量の倍数により規制が強化されたり、緩和されたりするものです。輸送する危険物が指定数量を超えるか確認しましょう。

危険物申告書


航空貨物、海上貨物の場合に航空会社、船社に提出が必要になります。

危険物申告書フォーム

作成は細かな規定があり不備があると積載が出来ないので、資格を持った輸送業者に依頼し、内容を確認してサインします。

この申告書は公共の安全を担保するものです。必ず責任者の署名を取得しましょう。

混載禁止


複数の分類の危険物をまとめて運ぶと危険度が増す場合があります。化学反応などで爆破や有毒ガスなどを発生させる可能性があるためです。

複数の危険物を一度に運ぶ場合は混載可否を確認しましょう。同一車、コンテナで積載可能な場合もありますが、基本はクラス分だけ車両やコンテナを用意するつもりでいた方が無難です。

受託可否


法律・ルールを満たしたとしても実際に輸送できるとは限りません。輸送業者によっては受託拒否をする場合があります。これはリスクと利益のバランスが著しく悪いためです。

例えば、危険物の輸送中の火災により船舶や航空機、最悪は人命が失われる可能性も十分あります(実際の事故が船舶、航空機どちらでも発生しています)。

損害額は数十億円から数百億円以上になる事が想定され、一方で危険物の輸送で得られる利益は10万円にも満たない程度です。輸送量もそれほど多くない事もあり、無理しない輸送業者がいても不思議ではありません。

またコンテナターミナルによっては危険物貯蔵の許可を持っていない場所もあり、荷降ろしが出来ない事を理由に断られるケースもあります。同一の危険物でも違う仕向地やルートだと運べるとは限らないので都度の確認が必要です。

更に他の荷主の危険物とのスペースの取り合いの問題もあります。

危険物の輸送の計画が出た時点で、早めに輸送業者へ受託可否の確認をした方がいいでしょう。

最後に


危険物については荷主、輸送業者ともに十分な知識と注意が必要です。

もし重大な事故が発生すれば、例え輸送業者に任せていたとしても、輸送を依頼した荷主の責任は免れることはありません。

私自身、自分の担当していたコンテナ船の荷役中に複数のコンテナから火災が発生するという事故に遭遇しました。

荷卸ししたヤードでコンテナが燃えていると連絡があり、ガントリークレーンで吊り上げたコンテナからも火が上がり、船内には同一品がまだ積まれているという悪夢のような状況でした。適切な管理、積み付けがされてなかったのでしょう。

その時の損害はその製品とコンテナのみで、大事には至りませんでしたが海上で発生していたと考えると、本当に青ざめます。

また、一般的ではありませんが、あえて海外向けと国内向けの危険物輸送をまとめて記載しました。

物流を管理する人であればどちらも意識しないといけないからです。最悪の事態に備え迅速に対応できるだけの準備はして欲しいと思います。

ただ短時間で危険物の概要を掴むことを目的にしていますので、かなりの部分を省略して記載をしています。実際に危険物を輸送する時は専門業者さんと調整の上、細心の注意をはらい慎重に実施して下さい。

ルールを守っている時は事故は起きないものです。気を抜いて確認を怠った時に限って事故は発生します。最低限の知識は身につけて業務をして下さい。

ご安全に!

以上、今回はここまで。
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