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【心臓リハ 心理ケア】生きて帰ってきた後、気持ちに触れるようになった歌

2019年8月18日

入院してから、何か気持ちの持ちようが変わってしまった。
多分それは、命の危機を通じて死を感じてしまったことと、入院という非現実的な生活を送ったことによるもの。


病室の窓から、明るくなってくる朝焼けの空の輝きや、夕方、遠く海際の飛行場の空に見える飛行機の光や、そんなものだけを見て過ごしていた。

それは、あまりにも普段の生活から切り離されていた。その場所で見つめ続けているのは、自分の命と体のことだけ。
あの時間は、もう一つのどこかにある世界での暮らしのような気がする。パラレル・ワールドのような、ほんとうはあったかもしれない、もう一つの私の人生。

そして、その時聴いていた音楽は、空気の匂いや、緊張や、切なさを、リアルに思い出させるもの。いろいろなものを淘汰してしまった自分の気持ちに触れる音楽は、今までとは少し違うものになっていることに気づく。


私が生きたかもしれないもう一つの世界を感じるのは、きのこ帝国の「東京」の歌詞。「クロノスタシス」の画像。

最近のミュージック・ビデオに映る東京の夜の光や風景は、今まで知っている映像とは違う高精細なもの。
同じ頃にネットで見た映画『その時は彼によろしく』の映像にも同じように、ガラスのような夜の光の煌めきを感じた。それは私の中のもう一つの東京のよう。クリスタルの東京タワー、夜、ライトの光に揺られる熱帯魚の水槽の光。

きのこ帝国を最初に聴いたのは、入院中だったか、退院直後だったか。FMで流れた「桜が咲く前に」で、これも、もう一つの生活。ボーカルの声が繊細でやさしく聴こえた。

●きのこ帝国 東京
https://www.youtube.com/watch?v=yBRqRAh9vJM


●きのこ帝国 クロノスタシス
https://www.youtube.com/watch?v=cCx4I4Fk5FE


●きのこ帝国 桜が咲く前に
https://www.youtube.com/watch?v=wf1MfO4V7cA


そして、気持ちの琴線に触れる歌が、少し変わっていることに気づく。たとえば入院中、ベッドの上で夜中に聴たFMラジオから流れていた、岡崎体育の「龍」。気持ちに沁みた。

●岡崎体育 龍
https://www.youtube.com/watch?v=FwHkz1ZEcm0


退院後にYouTubeでたまたま見た、半崎美子の「明日へ向かう人」。これはMVのアニメを見てちょっと泣いた。水の中の風景なんだ。主人公の無表情が切なかった。クライマックスで、息を飲んで目をそらしてしまった。その後の、ほんとうににあたたかな光景。

●半崎美子 明日へ向かう人
https://www.youtube.com/watch?v=7UBkNYAPcpk


不安で辛かったはずなのに、私の中にあるクリスタルのような光。それは、純粋に命だけを見つめて過ごした時間の輝きなのかもしれない。


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文:Ⓒ青海 陽 2019


読んでいただき、ありがとうございます!☺ かつての私のように途方に暮れている難病や心筋梗塞の人の道しるべになればと、書き始めました。 始めたら、闘病記のほかにも書きたいことがたくさん生まれてきました。 「マガジン」から入ると、テーマ別に読めます(ぜんぶ無料です)🍀