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夢で見る風景

鎌倉芸術館での矢野顕子のピアノリサイタルの帰り道、夜遅かったけれど少し寄り道をして、おばあちゃんの家を見に行きました。

おばあちゃんの家は、アサノセメントで有名な浅野山という石灰岩の山の際に建っています。最近、山は切り崩されてずいぶんと低くなってしまい、台地状の土地には何棟ものマンションが建てられています。大地の端の高台から見下ろすと、闇の中におばあちゃんの家の赤い屋根が見えました。

そのあと、街灯の少ない曲がりくねった道を、駅の方に向かって運転していきました。
すると、あり得ない場所で道が通行止めになっていたり、一方通行で戻れなくなったりを何度か繰り返しました。
山がちな細い道を、迷いながら流されるようにゆっくりと登って行くと、どうしてもおばあちゃんのお墓のある山の中腹に近づいていっているように感じました。
おばあちゃんのお墓の山道は、幼い時に狐火を見た記憶がある場所です。石灰岩の山にいる夢を何度も見ました。ここは何か特別な場所なのかもしれないと何となく考えながら、山道を緩やかに登って行きました。

すると、急に目の前に、夜の大船の街が見渡せる眺望が広がりました。
そうか、おばあちゃんはこれを見せたかったのか、と妙に納得した瞬間でした。
小さい頃、流星群が来ている夏の夜に、流れ星を見たくて従兄妹と山に登りました。あの時も、同じ夜景を見ていたのです。

今日見た夜景は、きっと夢でまた見られるのだと思います。無限の未来が広がっているような、とても好きな景色です。
そしてその一瞬には、夢と現実の境い目がなくなっていました。

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文:©2019 青海 陽

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