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PdMのためのChatGPT活用事例。流れで

こんばんは。ChatGPTつかっていますか?
ミラティブ執行役員プロダクトマネージャーの坂本です。

ミラティブでは、ChatGPT Plus を社員全員に福利厚生として配布するという試みを行っており、私自身も結構使ってみました。PdMが業務として使うとしたらこういう使い方ができるよという例を紹介します。

多少PdMの仕事からはみ出して資金調達や事業計画の論点も入っていますが、無からアプリのコンセプトを生み出し、画面設計、テーブル設計、リリース戦略まで立ててみました。下記のやりとりはすべてGPT-4モデルで行っています。

顧客のPainを発見する

プロダクトマネージャーたるもの、何を作るべきかを定義するところが最初の第一歩です。ではさっそく、顧客Painとそれの解消アイディアを見つけていきましょう。
コツは、「顧客像を定義して詳細を記述する」ということです。情報量が多ければ多いほど、ChatGPTはいい感じの答えを返してくれます。

Painの提案

ここでは、Aさんの属性と一日を文章にしていれてみました。記事を書くために多少誘導していますが、基本的に事実を入れていけばなにかしらのアイディアを返してくれます。すごいですね。

人間の仕事はユーザーを観察して事実を集積していれるだけの仕事になりそうです。逆に言うと、誰のPainを解消したいか・その人の属性や行動を集めてAIにインプットできるか?が人間の強みになりそうです。

ソリューションのアイディアを絞り込む

よりソリューションの内容を限定していく

ChatGPTの返してきたアイディアをよりソリッドにしていく部分です。今回は、思いもよらなかった「マンガ飯」というキーワードがでてきました。

正直、AIのヘルプがなければ「独身男性向けのマンガ飯レシピサイト」は思いつかなかっただろうなと思います。

本当に市場があるかどうかはおいておき(ここで本来ならMVPの試験、つまり、Aさんに似た人を10人集めて、手書きのレシピを渡して料理を作ってくれるかなどの検証をします。これはまだ人間の作業として残りそうですね。)、今回の記事はこれですすめます。

アプリ名を決める

アプリ名の提案

アプリ名を選定してもらいました。今回は10個出してもらいましたが、20でも30でも出してくれると思います。

今回は、「マンガを見る」とゴロがにている「MangaMeals」を採用しました。これだけのアイディアを20秒くらいで返してくれるので、人間がブレストするよりも確実に早いです。すばらしいですね。

ちなみに、自分自身の力では、マンガミールズにたどり着ける自信がないです。外注すると数十万する仕事が20秒ででてくるのがすごいですね(もちろんAIよりクオリティの高いコピーライターさんはたくさんいらっしゃいます)

アプリのピッチを作る

ピッチの内容

会社員だとあまりピッチをすることは少ないですが、一から起業する場合は、投資してもらわなければアプリが作れないことも多いです。ChatGPTにピッチを作ってもらいました。依頼文に多少のヒントや論点をいれています。

見てわかると思いますが、人間が読んでグッとくる結果は帰ってきませんでした。もしかしたら、A16Zむけにピッチ~などと指定すればもう少しソリッドな答えが返ってくるかもしれません。

このあと、「日本の男性・女性の外食費の比較を用いながら、参入する市場規模についても言及して」などやってみましたが、このテーマではうまく答えが返ってきませんでした。投資を引き出すといった、人間の心をつかみながら論理的なストーリーを展開するのは、いまのところうまくいきませんでした。私のプロンプトが未熟なせいだとは思いますが。

将来的には、このようなピッチの概要をパワーポイントに食わすと、いい感じのスライドが出来上がる未来がみえていますね。多分年末にはできてる。そんな勢いで進化してます。期待ですね。

事業計画書を作る

アプリの概要が決まってきたので、さっそく事業にしていきましょう。

事業のストーリー

事業計画

事業計画を作ってみました。企画時に「マンガ飯の権利関係って難しそうだから事業化はむずいだろうなー。ChatGPTも甘ちゃんだなぁ」と感じていたのですが、初年度にパートナーシップと契約するという項目がでてきました。すごい。

出してきたアウトプットに細かいことを言い始めたらきりがないのですが、事業計画書の大項目・中項目の下書きとして利用できるなあと感じました。この粒度で書かれており、それぞれにしっかりとした計画が書かれていたらまともな計画書として読んでもらえそうです。

損益計算書

損益計算書

PLも出してくれました。リモートワーク前提なのか、オフィスの家賃などが含まれていませんし、開業費用(PCなど)の減価償却費はないんか… みたいなツメが甘いところはありますが、なんとなくビジネスモデルはわかるものを出してくれました。※3年目で黒字化&ほぼリクープするという楽観シナリオへの突っ込みはあえてしません。

サーバーのランニングコストなども含まれているところが「わかっている感」を出してくるのが憎いですね。提携企業からの収益ってなんだろうという気もしましたが、アニメ好きが集まるメディアとしてPVを稼ぎ「新しい映画や漫画をだすので、マンガミールとコラボしたい」という事業だと勝手に理解しました(多分質問したら教えてくれます

ちなみに、コツは「表形式でください」とお願いすることです。
※今回はPLのみ出してもらいましたが、BSやCFも出してくれそうです。

ユーザーグロース

ユーザー数の推移

アプリビジネスでは大切なユーザーグロースについても相談に乗ってくれます。3年目で6万MAUというのはいい感じのバーだなと思いつつ、プレミアムの着用率が30%とはかなり楽観いれてくるなー。と突っ込みは入れつつも、DL数、アクティブ数、プレミアム数と必要な項目を出してくれているのはGoodポイントです。

ちなみに、本来計画に落とすときは、Organicチャネル、Paidチャネル(&CPI)などもう少し突っ込んで計画立てる必要がありますが、概要としてつかうのであれば問題なさそうだなと思いました。

2年目で海外進出を視野に入れている野心的な計画になっています。2年目の開発費+人件費が2100万円で足りる気がしません笑。そういう突っ込みを入れながら計画を調整できるのも、ChatGPTによるたたきの恩恵かと思います。

仕様作成:ホーム画面

では無事(?)に資金調達も採用も終わったとして、さっそくデザイナー、エンジニアとアプリを作っていきましょう。

要素分解

ホーム画面の設計

まずは、プロトタイピングです。普段ならばテキストエディタで要素を書き出していくのですが、ChatGPTに丸投げしてみました。

まぁ必要だろうなというメニューが返ってきました。いろいろな競合アプリを触りながら自分で書きだしていくよりははるかに速いアウトプットです。

ちなみに、MVPで本当に必要かどうかわからない機能もありますが、それは私が「MVPでください」と言ってないからな気もしてきました。

情報設計

情報設計とレイアウト概要

次は情報設計です。レイアウトの概要を文章で作ってもらいました。うーんちょっとわかりづらいのでアスキーアートで表現してもらうことにします。

プロトタイピング(かろうじて)

アスキーアートで示されたプロトタイプ

これでなんとなく画面がイメージできました。この画面だと基本検索主体のUXが想定されているようで、私が思ったのと違うのですが(もう少しおすすめ軸、すきな漫画軸で見せたかった)、PdMがデザイナーに渡すプロトタイプとして最低限にできている気もします。(このあたりは開発チームの文化によるとは思いますが)

デザイナーとの協同をすすめつつ、仕様を切っていきましょう。

仕様書作成

仕様書前半

いきなり仕様書の全部を書かせようとすると(生成される文章が長いからなのかな)ネットワークエラーになったので、仕様書の前半の部分を書いてもらうことにしました。なぜつくるのかというところがそれっぽく書かれています。

KPIに関してはふわっと書かれすぎてセンスないなあと思いつつも、何かしらのヒントにはなることが書かれているかなーという感触です。(何回か生成してみたらセンスのいいNorth Star Metricsがでてくることもありました。出力が安定しないモデルの弱点ですね)

ユーザーストーリーに関してはかなり正確に仕様を分解してもらえているなという驚きです。それぞれのストーリーに対してエンジニアが見積ったり、バックログにしたりするのにちょうどいいサイズだなと思いました。

仕様については、クラスメソッドの枌谷さんが書かれているブログが詳しいので紹介しておきます。それぞれのユーザーストーリーに関して深ぼっていけば、相当いいところまで仕様書を自動作成できると思います。(ただし2023年3月22日現在3時間で25質問しかできないので、一つ一つを深ぼるには相当時間かかるのがつらい)

実装

最終的に動くコードまで実装できるかはわかりませんが、テーブル設計くらいはやってもらいましょう。きっと実装の分野は、これからどんどんエンジニアの知見があふれてくるだろうなと思っています。社内のエンジニアの感触をみるに、「わかっている人がつかうとめっちゃ便利」という感触を私はえました。

本当に何もわかっていない人がコピペで動くものを作れるには、もうちょっと進化を待つ必要がありそうです。※コピペでエラーが出たときに詰んでしまわないくらいの技術力が必要かな。。

テーブル設計(テキスト

テーブル設計

テーブル設計(ER図

UMLを自動生成することはできなかったですが、アスキーアートでくれという文言を付け加えると下記のような図ができあがりました。

関連が微妙なところも多いですが、言わんとしていることがわかる図が出てきましたね。実際のエンジニアであれば、「UMLツールに突っ込める形式でください」と質問するのがよさそうです。

私の専門がエンジニアリングではないため、実装の話はこれくらいでやめておきますが、きっと仕様書をいれるとそこそこ動くコードがでてくる未来もそう遠からずやってくると思います。

リリース

実装もQAもおわり、やっとリリースです!ここでも少しお手伝いしてもらいましょう。

アプリストアの説明文

アプリストアの説明文

まずはアプリストアに提出する際の説明文を書いてもらいました。

うーん、まぁ本当はASOとか考えつつキーワードをまぶしつついい感じの文章にするのが定石なのですが何も指示しないとこんなもんかなというアウトプットです。きっと、このキーワードたちを入れてね!みたいな指示をするといれてくれます。

ダッシュボードを作るためのSQL

生成されたSQL

リリースされたあとは、計測計測です。初期の場合はデータアナリストがいないことも多いでしょう。そういうときにChatGPTはすごく頼りになります。上記のようにKPI(というかモニタリングすべき指標)を取得するSQLを書いてくれます。

Redashなどの可視化ツールが導入されていればよいのですが、初期の場合はないことが多いので、スプレッドシートに吐き出してもらいましょう。

生成されたコード(GAS)

コードは試してないですが、一瞥する感じ正しく動くように見えます。一応全文貼っておきます(ご利用は自己責任でお願いします。

const SPREADSHEET_ID = 'YOUR_SPREADSHEET_ID';
const SHEET_NAME = 'KPIs';

const DB_URL = 'jdbc:mysql://YOUR_DB_IP:3306/YOUR_DB_NAME';
const DB_USER = 'YOUR_DB_USER';
const DB_PASSWORD = 'YOUR_DB_PASSWORD';

function fetchDailyKPIs() {
  const conn = Jdbc.getConnection(DB_URL, DB_USER, DB_PASSWORD);

  const kpiQueries = [
    "SELECT COUNT(*) as daily_recipe_views FROM recipe_views WHERE DATE(viewed_at) = DATE(NOW())",
    "SELECT COUNT(*) as daily_new_users FROM users WHERE DATE(created_at) = DATE(NOW())",
    "SELECT COUNT(*) as daily_favorites FROM favorites WHERE DATE(created_at) = DATE(NOW())",
    "SELECT COUNT(*) as daily_recipe_attempts FROM recipe_attempts WHERE DATE(attempted_at) = DATE(NOW())",
    "SELECT COUNT(*) as daily_community_posts FROM community_posts WHERE DATE(created_at) = DATE(NOW())",
    "SELECT COUNT(*) as daily_community_comments FROM community_comments WHERE DATE(created_at) = DATE(NOW())"
  ];

  const kpiValues = kpiQueries.map(query => {
    const stmt = conn.createStatement();
    const resultSet = stmt.executeQuery(query);
    resultSet.next();
    return resultSet.getInt(1);
  });

  conn.close();

  writeToSpreadsheet(kpiValues);
}

function writeToSpreadsheet(kpiValues) {
  const sheet = SpreadsheetApp.openById(SPREADSHEET_ID).getSheetByName(SHEET_NAME);
  const newRow = [new Date().toLocaleDateString()].concat(kpiValues);
  sheet.appendRow(newRow);
}

Twitterを始めましょう

では、サービスが開始されたととして、Twitter運営もChatGPTにおまかせしちゃいましょ!

生成されたツイート

うーん、悪くないぞ。ただちょっと事務的な感じがするので、「中の人」っぽくしたほうがいいとか、コミュニティマネジメント関連でもうちょっと工夫できることはあると思うのですが、公式ツイッターってこんな感じよな、というポイントは抑えているなと。

勝手にハッシュタグで #MangaMeals とかつけてくれているのはポイント高いですね。ツイートに関しては、「語尾にですわ~をつけてください」とかの指示もできるのでいろいろと試してみるのおすすめです。

閑話休題

ミッション・ビジョン

ミッション・ビジョン

ミッションとビジョンも作ってもらいました。それっぽいです。ほんとにそれっぽいです。ミッションがより抽象化されていて、マンガファン向けのアプリ開発会社という枠ではなく、健康と楽しさを同時にとどけるというニュアンスが入っているのがいい感じです。今回は1つしか生成していませんが、多分、10案くださいと言えば10案作ってくれますね。

イーロンマスク評

イーロンマスクからの評価

最後に、イーロンマスクがMangaMealsをどう批評するか書いてもらいました。まぁそっすよねぇ~ということが書かれています。というか、こんなにイーロンマスクって優しかったっけ?イーロンマスクの何を学習したらこんなに優しいイーロンマスクができあがるんだろうか?もしかして….忖度…

という形で締めくくってみます。
Painの発見からリリースまで(実装とQAは飛ばししたが)の活用方法を紹介してみました。やっているうちにMangaMealsにちょっと愛着がわきましたが、実際には事業に向かないアイディアだと思うんで誰か検証してみてください笑。

まとめ

イーロンマスク先生による落ちも付きつつ、PdMの業務においてChatGPTが活用できるイメージがわいたかなと思います。PdMの業務は薄く広くが多いため、込み入ったプロンプトエンジニアリングを行わずとも、割と単純な質問だけでChatGPTの恩恵を受けられる職だと思います。

このブログも2時間くらいで書き上げましたので、2時間でPainの発見から事業計画のガラ、ホーム画面のプロトタイピング、仕様書概要までできました。これを自分一人で作れって言われると3日くれって言うと思います笑。さらにそれぞれの精度は一人で作ったものよりも格段にいいものができる印象をもちました。

単発の質問というよりは流れで質問していくのがPdMとしては使いやすいなと感じており、「ウィンドウを消さない」が一番のコツになるなと思いました。

締めのご挨拶

ChatGPT Plusが社員全員に配られているミラティブの採用はこちら

私個人のTwitterもやっております。PdMのことやら、AIのことなど幅広く意見交換したいのでもしよければフォローください!


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