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「シャマニズム・シャマンを人間本性の信仰として見直す」 鈴木克彦(2019年8月10日奏海月例会配布資料)

 今日の講話は、先史古代人が、神をどのように考えていたか、神とは何か、誰が初めて神の存在を体感したか、という宗教根源と人間本性のシャマニズムについて、縄文文化の土偶と関連付けて(永遠の謎を)考えるものである。

シャマニズム・シャマンの定義
 シャマンによる宗教行為 天の神意を人々に伝える信仰、宗教とその体系
 根源は狩猟文化のアニミズム(精霊、霊魂に対する信仰)  人間本性の信仰
 シャマンは専業的呪術者 先天的な霊感(動物である人間の第六感)の強い人、頭が良すぎる人。後に、天空の神に通じる人、災い(病気等)を除去する人になる。
語源
  中央アジアのSaman  シャマン 訳は宗教人、僧 天空の精霊(神)と交信する人
  狩猟文化のアニミズムに原始的仏教が融合して発達した。
起源(諸説あり)  
 先史時代(外国では旧石器時代、日本では縄文時代)では、動物の骨(霊魂)を尊崇する物送り(アイヌ文化のイオマンテ、縄文時代の貝塚)が起源とされている。
現状実例
  シャマンによる宗教行為は世界共通  文明宗教の元もシャマニズム
  日本では、卑弥呼の鬼道 古代王権のサニワ 沖縄のユタ アイヌのイム 青森県のイタコ、カミサマ  シャマンを精神異常者、シャマニズムを訳の分からない信仰として蔑視するのは、文明の誤解である。

鈴木克彦説
 シャマンは、人間性の第六感、感受性の強い人、先天的な霊的能感を持つ人、天才的な頭脳、能力を持つ人が多い。そういう人は、原始社会において狩猟や社会の中枢の役割を果たし、集団、共同体から尊敬されリーダーになる。
 科学が未発達な原始社会では、呪術が科学であり、天空の自然の力(法則)を読み取る霊的能力が尊ばれる。世界の民族誌によると、人々が経験則として築いてきた技術、文化をシャマンが継承、改良して社会が発展した事例がある(鉄の発明)。
 人間は自然界では小さな存在で自然の力(法則)に打ち勝つことができないが、中央アジアでは、天の力を合理的に人間生活に取り入れようとしてシャマニズムが発達した。天の力とは、当時の科学、社会で解決できない超自然的存在、つまり神である。神の力を得るためには神の下に行ってお願いするほかないが、人間は行けないので神から信頼される人間(シャマン)に託して要望を依頼するほかない。その役割を担う人間が超能力のシャマンである。
 後に、その形態が祈願成就のご利益信仰になるが、それはシャマニズムの本質でない。
 本質は、人間の本性(科学で説明できない、社会的道徳、理性によって隠されている第六感、霊感)に基づく、永遠に解けない信仰、宗教である。
 精神医学では、精神病としてそれを解明しようとしている。
 私はそれを、文化の問題として、シャマニズムを社会暗示、群集心理として歴史的、社会学的、考古学的に考察したいと考えている。
 歴史的に、古代において、非科学的な呪い、占い、祈りが、社会、国家の行く末などの方針を規定し、古代ではそれを王権サニワが担った。民衆も同じ。それは、経験則による祈ると「叶う」=ご利益という群集心理、暗示の信仰である。
 縄文時代でも、祈る心、行為はあったと思う。しかし、祈って成就する確率は1割以下だということも経験則で知っていたはず。だから、御利益信仰はシャマニズムの本質でない。シャマニズムは、シャマンによる信仰、宗教である。
 重要なことは、不可知、不可解な神の存在を、大衆がシャマンの力を借りて経験則として知得し、それを考古学遺物として立証することである。それを、縄文時代で最も古い信仰遺物である土偶に求めている。理由は、土偶が人間の形だからである。
 人類のあらゆる宗教の普遍的な神の形が、人間(の形)である。不可知な神が何故人間の形なのか、この矛盾は、神は人間が作った形而上の存在であることを意味する。
 人間の形の土偶は、人類の普遍的な信仰、宗教の形態に一致し、土偶は縄文社会の形而上の神と考える。神が人間や動物の形をしていることは世界共通。その根底に生き物としての霊魂観(アニミズム)がある。よって、土偶は、神が依り憑く形代として作られたと考える。その発想の根源は、ご利益祈願というより、シャマンの哲学的、宗教的な世界観によると考える。理由は、縄文草創期の初期土偶の数が非常に少ないからである。

 結論:土偶は、我が国の民族(縄文人)の精神的な神観念の萌芽を意味する、不可知な神の存在を形而上に形態化し、最初に作った神である。それを作ったのが、縄文シャマンだと考える。

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